イタリアを代表する映画監督パオロ・ソレンティーノが、南イタリアのナポリを象徴する名をもつ美しい女性の生涯を描いた「パルテノぺ ナポリの宝石」が、いよいよ日本公開!圧倒的な魅力を放つ新星セレステ・ダッラ・ポルタが演じるパルテノぺのドラマチックな物語を、ナポリ出身の巨匠がどう描いたのか、見どころたっぷりの傑作をご紹介します。
ナポリの街を意味する“パルテノペ”と名付けられた女性の数奇な運命
〈ストーリー〉
1950年、南イタリア・ナポリで生まれた赤ん坊は、ナポリの町の礎となったギリシャ神話に登場する人魚“パルテノペ”の名を授かった。美しく聡明で誰からも愛されるパルテノペは、兄・ライモンドと深い絆で結ばれていた。年齢と出会いを重ねるにつれ、美しく変貌を遂げてゆくパルテノペ。だが彼女の輝きが増すほど、対照的に兄の孤独は深まり、そしてあの夏、兄は自ら死を選んだ…。
彼女に幸せをもたらしていた「美」が、愛する人々に悲劇を招く刃と変わる。それでも人生を歩み続けるパルテノペが、果てなき愛と自由の探求の先に辿り着いたのは――。
監督のパオロ・ソレンティーノは、第86回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『グレート・ビューティー/追憶のローマ』(13)や『グランドフィナーレ』(15)など、圧倒的な映像美で“21世紀の映像の魔術師”と呼ばれるイタリアを代表する巨匠。ソレンティーノ監督が初めて女性を主人公に描いた本作は、第77回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、イタリア国内では監督作史上最大のヒットを記録した傑作です。
街の象徴である人魚の名を持つ主人公パルテノペを演じたのは、本作で鮮烈な銀幕デビューを飾り、イタリアのアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の新人賞を獲得した新星セレステ・ダッラ・ポルタ。伸びやかな肢体に少女のような無邪気な笑顔、誰もが惹きつけられる輝きで、時には悲劇や争いをも引き起こす宝石のような、神秘的な魅力を放つ女性を全身全霊で演じきっています。


サンローランのクリエイティブ・ディレクターが手がけた絢爛たる衣裳
製作は、世界屈指のラグジュアリーブランド、サンローランが、異なる分野の先鋭的なアーティストたちとコラボレーションするために設立されたサンローラン プロダクション。さらに北米配給権を、世界の映画ファンに支持されるA24が獲得!パオロ・ソレンティーノ監督×サンローラン プロダクション×A24という新たなコラボレーションが、贅沢な映画体験を叶えました。
見どころのひとつである衣裳は、サンローランのクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロ自らアートディレクションを担当。1950年代から80年代までの時代の変遷を映し出すモードを鮮やかに再現し、目の眩むような映像美に花を添えています。

個人的には、若き日のスリップドレスより、キャリアを重ねた年代で着用したパンツスーツがクールで魅力的。サンローランのスモーキングを思わせるマニッシュなスタイリングが、セレステの個性をより際立たせると感じました。


名優ゲイリー・オールドマンが念願のソレンティーノ作品に初出演!
米国のアカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめ、数々の受賞歴を誇り、英国ナイトの称号を授与されたゲイリー・オールドマン。セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスから「バットマン」のゴードン警部補、政治家チャーチルまで、同じ人物が演じているとは思えないカメレオン俳優として知られる彼は、アマルフィの映画祭で出演したい映画監督としてソレンティーノの名前をあげたと言います。その話を聞いた監督からオファーがあり、お互いに念願だった出演が「パルテノぺ ナポリの宝石」で実現しました。
ゲイリー・オールドマンが演じたのは、“アル中の文豪”ジョン・チーヴァー。実在の人物を演じるにあたって、ゲイリーは敢えて作家について調べることなく、「ソレンティーノ監督との会話や脚本に書かれていることを忠実に再現した」と語っています。若いパルテノぺの人生に影響を与える複雑な人物像を名優がどう演じたか、ぜひスクリーンでお確かめください。


ナポリのすべてを描き出した監督の故郷への愛
この映画のもう一つの主人公は「ナポリ」そのもの。碧く澄み渡る海や芸術品のような街並にとどまらず、貧しい人々が暮らす路地裏やカモッラと呼ばれるマフィア組織のおぞましい儀式など、ナポリの暗部も含めて描写されています。さらに、サン・ジェンナーロ祭りの「血の奇跡」、ラストシーンに登場するサッカーチームSSCナポリの33年ぶりの優勝など、ナポリを象徴するエピソードが盛り込まれた一大絵巻としても楽しめる作品です。

美しさを超えて知性を磨き、自分らしく生き抜いた一人の女性の物語であると同時に、ソレンティーノ監督のナポリへの愛にあふれた映像体験。この作品を見た人は、いますぐにでもナポリを旅したくなるはず!筆者はミラノからシチリアまで、かなりマイナーな街を含めてイタリアの各都市を訪れましたが、残念なことにナポリはまだ未到の地。「パルテノぺ ナポリの宝石」の聖地巡りを、いつか必ず叶えたいと願っています。

「パルテノぺ ナポリの宝石」
8月22日(金)より新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
出演: セレステ・ダッラ・ボルタ、ステファニア・サンドレッリ、ゲイリー・オールドマン
第77回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門正式出品作品
公式サイト https://gaga.ne.jp/parthenope/
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