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イタリアの魂を繊細な描写で映画化「美しい夏」8月1日公開! ①

Keiko Shimada

2025.07.17

20世紀のイタリアを代表する文豪パヴェーゼの名作を、期待の若手俳優を主演に迎えて映画化した『美しい夏』。ITALIANITYでは、ラウラ・ルケッティ監督への単独インタビューを実施しました。みずみずしい映像と普遍的な物語が心に迫る珠玉の作品の魅力を、情熱あふれる監督のコメントとともにお届けします。



出会いが生んだ、光り輝く美しい夏

第二次世界大戦前夜の1938年、田舎からトリノに出て、お針子として洋裁店で働く16歳の少女ジーニアは、3つ年上の美しく自由なアメーリアと出会う。画家のモデルとして生計を立てる彼女によって芸術家たちが集う新たな世界への扉を開かれ、ジーニアは大人の階段を上り始める。

©2023 Kino Produzioni,9.99Films


ラウラ・ルケッティ監督は、ドキュメンタリーやアニメ作品の監督も務め、独創的なキャリアをお持ちです。多くのファンを持つ文芸作品の映像化にあたり、プレッシャーを感じたかお聞きしました。


「もちろんありました!プレッシャーというより恐怖ですね」。実は、過去に映像化されたパヴェーゼ作品は『女ともだち』(原作は『孤独な女たち』)1作のみで、監督を務めたのは名匠ミケランジェロ・アントニオーニ。「もともとパヴェーゼ作品というだけでプレッシャーを感じていたのに、それを聞いて恐怖のレベルがグッと上がりました」。

ラウラ・ルケッティ監督
『美しい夏』のプロモーションのため来日したラウラ・ルケッティ監督

「パヴェーゼ作品はもちろん読んでいますが、『美しい夏』に関しては、偶然にも数カ月前に読んだばかりだったんです。読んだらとても素晴らしくて、これを映画にできたらなって思っていたところ、3カ月後にプロデューサーから『美しい夏』を映画化してほしい」と言われ、もう運命だと思いました」。

自転車に乗るふたりの女性
ふたりが自転車で走るシーンは夢のような美しさ

美しい化学反応で魅せたキャスティング

この作品の映像化で最も大切なのは、主人公ふたりのキャスティング。プロデューサーと監督は何百人もの若者と会ってオーディションを行いましたが、なかなか思い通りのキャストには巡り会えませんでした。


「パヴェーゼの小説には『自然が私たちを救う』という哲学が色濃く反映されています。そういった点から考えると、ふたりの女性の一人は自然を投影し、もう一人は都会を体現する人物がふさわしいと思いました」。

実際に主人公ジーニアを演じたのは、『墓泥棒と失われた女神』も記憶に新しいイーレ・ヴィアネッロですが、彼女は自然の中で自給自足を基本に暮らすコミュニティで育った俳優。演技力はもちろん、その生い立ちからして、自然を象徴するジーニアにふさわしいと言えるでしょう。

洋裁店で働く制服姿の女性
大人へと成長していくジーニアを
繊細に演じたイーレ・ヴィアネッロ

もう一人の女性アメーリアを演じたのは、モニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルの娘であり、生まれながらのスターとも言えるディーヴァ・カッセル。14歳でドルチェ&ガッバーナのキャンペーンモデルに起用されたのを皮切りに、ディオールやカルティエといったトップブランドの顔として、その美貌と存在感で早くから注目を集めてきました。

さらに、ラウラ・ルケッティが共同監督を務め、現在配信中のNetflixリミテッドシリーズ『山猫』では、ルキノ・ヴィスコンティの名作映画でクラウディア・カルディナーレが演じた役を再演し、俳優としても注目を集めている存在です。

レンガの壁際に立つ女性
芸術家たちのミューズ、アメーリアを
圧倒的な存在感で演じたディーヴァ・カッセル

「ディーヴァがはじめにキャスティング候補になった頃、彼女はまだ15歳でした。若すぎるということで白紙になったのですが、映画製作に時間がかかる間に彼女が成長し、実際にクランクインを迎えたのは2022年9月12日。その日はディーヴァの18歳のバースデーだったんです。それも運命だと感じましたね」。


「キャスティングに関しては、とてもラッキーだった。自然界を象徴するイーレと、一見華やかなモデルの世界で厳しさを知っているディーヴァ。あのふたりなら化学反応が起こると思いました」。監督の言葉通り、ふたりでしか醸し出せなかったパッションが映像に映し出され、観客を1930年代のトリノへと誘います。

若い男性の顔のアップ
ジーニアの兄セヴェリーノを演じた
ニコラ・マウパは、いま注目の人気俳優

自分らしく生きようとしたふたりの女性の物語

第二次世界大戦前夜のトリノが舞台で、ジーニアが兄と二人で暮らすアパートでも、ラジオからムッソリーニの演説が聞こえてくるシーンがあり、彼らのこれからを想うと、胸が締め付けられるような気持ちになる時代背景。


そんな時代にあっても、夢を追い求め、自分らしく生きようとしたふたりの女性の物語。イタリア映画界が誇る新進俳優たちの共演によって、文豪パヴェーゼのストレーガ賞受賞作が、85年の時を超えてスクリーンへ。この夏、みずみずしい映像の文芸作品を通じて、イタリア映画の真髄を体感してください。


監督インタビューは明日につづきます。


ガウンを羽織ってソファに横たわる女性

「美しい夏」

8月1日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督・脚本:ラウラ・ルケッティ

出演:イーレ・ヴィアネッロ、ディーヴァ・カッセル

原作:『美しい夏』チェーザレ・パヴェーゼ作 河島英昭訳(岩波書店)


「美しい夏」公式サイト

https://mimosafilms.com/labellaestate


ミモザフィルムズ Instagram

https://www.instagram.com/mimosafilms


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