大阪・関西万博のイタリアパビリオンでは、アートや工芸に関するワークショップが頻繁に開催されています。今回、イタリアが誇る豊かな文化の一端に触れるイベントを体験しました。
ナポリの手袋職人が技を披露
イタリアファッションを代表する素材といえばレザー。その中でもレザー手袋は、美しさとフィット感、デザイン性で世界をリードするアイテムとして知られています。筆者はイタリアに行くと手袋をいくつも買ってしまうのですが、使うほどに手になじんでいく感覚、仕草まで美しく見せる造形は「さすが!」の一言です。
5月14日、「手袋職人のワークショップ」は、1930年にナポリで創業した「GALA GLOVES」の3代目オーナー、アレッサンドロ・ペローネさんが、ハンドメイドの手袋について語りながら、実際に手袋のパーツを裁断する工程を披露するもの。参加者は、卓越した職人の技を間近で目にして、心躍るひとときを過ごしました。

ワークショップはいつも大盛況
伝統を守りながらも機能はアップデート
「私たちは、1930年代から現在に至るまで、ナポリの伝統的な製法を守っています。その上で、スマホが操作できる加工、水を弾くスエードなど、時代に合わせて機能はアップデートしています」とアレッサンドロさん。「GALA GLOVES」の手袋は、ナポリのハンドメイドの伝統に基づき、完成まで25の工程を要します。
同じ色に染め上げた仔羊革でも微妙に色が違うため、1組の手袋は同じ個体の革からとる必要があります。「革には穴や染みがあるため、どこからどのパーツをとるか、『革を見極めることが大切』です」と、アレッサンドロさんは語りました。

職人のアレッサンドロ・ペローネさん
一番驚いたのは、「えっ?そこまで?」と思うほど縦に革を伸ばすこと。手袋を着けているうちに指の長さが変わらないように、最後の最後まで縦に伸ばし切ることがポイント。逆に横は着けているうちに少し伸びて、手にぴったりなじむようになるそうです。

革を伸ばしきったら、いよいよ裁断。革用の大きな裁ちバサミを使いますが、実は前日、ちょっとしたトラブがあったそう。「万博会場の入り口の荷物検査でハサミを没収されてしまい、昨日のワークショップは紙を切るハサミで代用しました」と、笑い話を披露したアレッサンドロさん。この日は、無事に大切な道具で裁断を見せていただけました。

手で触れて味わうレザーの上質感
シンプルなもので小一時間、デザインが複雑なものなら3時間ほどかかるという革の裁断。革を伸ばしながら行うこの作業だけでも、時間をかけて技を尽くす丁寧な手仕事を実感しました。
ワークショップの途中、「実際に手で触れて欲しい」というアレッサンドロさんの言葉を受けて、参加者の手から手へ渡っていった革素材。柔らかくしっとりした仔羊革や張りのある型押し、しなやかに手になじむスエード・・・。実際に手で触れることによって、世界屈指の革なめしの技を誇るイタリアンレザーの魅力を、参加者一人ひとりが確かめました。

多彩に揃った手袋の素材
スタイリングの主役になるデザイン
100年近い歴史の中で、シンプルなものから機能的なドライビンググローブ、ドレスアップ用のエレガントなデザイン、斬新なデザインなど、多種多様なグローブを提案してきた「GALA GLOVES」。この日、展示されていた手袋は、向かって右から左へと、時代ごとに並んでいました。

一番左側に展示されていた2本、立体的な装飾をあしらったエレガントな黒のロンググローブと、ひも状のレザーを組み合わせてメッシュのように仕立てたモードなロンググローブは、いずれもアレッサンドロさんの娘さん、「GALA GLOVES」4代目がデザインしたもの。スタイリングの主役になる華やかな個性が光ります。

アレッサンドロさんの娘さんがデザイン
古き良き時代の伝統を守りながらも、時代に合わせてアップデートしていく柔軟な姿勢によって、技とデザインが調和したプロダクトの数々。「L’Arte Rigenera la Vita 芸術が生命を再生する」をテーマに掲げる大阪・関西万博 イタリアパビリオンのワークショップに参加して、もっと深く、イタリアを体感してみませんか?
GALA GLOVES 公式サイト https://galagloves.it/ja
イタリアパビリオン イベントカレンダー
https://www.italyexpo2025osaka.it/ja/Ibentokarend%C4%81
ワークショップへの参加は予約が必要です。
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