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イタリアの一大音楽イベント・サンレモ音楽祭

Wakapedia

2025.03.11

サンレモ音楽祭は、イタリアの音楽シーンで最も歴史的で人気のあるイベントだ。毎年、北部のサンレモで開催され、選ばれたミュージシャンがパフォーマンスを行い、その中から優勝者が決まる。例え優勝を逃しても、出場自体が名誉であり、特別な意味を持つ。


かつてサンレモ音楽祭離れが囁かれていたが、ソーシャルメディアで多くの若者ファンを獲得する次世代ミュージシャンの出場により、若い世代からの人気を取り戻しつつある。それに伴い、若手ミュージシャンの優勝も増えている。2021年にはロックバンド、マネスキン(Måneskin)が優勝し、ヨーロッパで最も重要な音楽祭であるユーロビジョン(Eurovision)への出場権を得て優勝、瞬く間に国際的なスターとなった。2025年2月11日から15日まで開催された第75回目のサンレモ音楽祭では、どんなストーリーが生まれたのだろうか?

サンレモ音楽祭をきっかけに世界的なスターへと昇りつめたマネスキン

イタリア人流のサンレモ音楽祭の楽しみ方ベスト3
1. FantaSanremo

近年、サンレモ音楽祭が若者の間で大きなブームとなったきっかけは、オンラインゲーム「ファンタサンレモ(FantaSanremo)」である。このゲームでは、仮想通貨「100バウディ」を使って、サンレモ音楽祭の出場者の中から7人のミュージシャンを選び、リーダーを決めてチームを作成し、得点を競い合うのだ。


ファンタサンレモの魅力は、サンレモ音楽祭で実際に起こる出来事がゲーム内の点数に反映される点である。ミュージシャンが階段を踏み外す、ステージ上で口論、セットを破壊するなどは減点の対象だが、サングラスをかけて登場する、ファンと一緒に歌う、最愛のマンマに感謝の気持ちを伝えると得点が加算される仕組みである。点数のポイントにもイタリアらしさが溢れるこのゲームは、音楽祭参加者やファンと共に盛り上がるプラットフォームとなっている。さらに、ハプニングが起きるたびにソーシャルメディアでもその出来事が話題となり、大きな議論を呼ぶ。そして、最終的な得点でリーグの優勝が決定する。こうしてサンレモ音楽祭はファンタサンレモの登場と共に、次世代の楽しみ方へと変わっていった。


2. ファッションチェック

ファンタサンレモでもポイントの対象であるように、サンレモ音楽祭を楽しむにはファッションチェックも欠かせない。イタリアは多くの一流ファッションブランドを生み出してきた国であり、Valentino、Dolce&Gabbana、Fendi、Emporio Armani、Prada、Gucci、Atelier Versaceなどといった大手メゾンがセレブリティやミュージシャンの衣装を手がけている。シースルーが美しいドレス、全身真っ黒のかっちりとしたスーツ、病院から抜け出してきたかのような薄いブルーのパジャマスタイルに華を添えるコサージュ、平成のヤンキーにインスピレーションを受けたかのような親近感ある腰パンスタイルなど、毎年エレガントからエキセントリックまで多様性溢れるファッションで観客を大いに楽しませてくれる。もちろん、ファッションに敏感なイタリア人たちの間では、時には辛辣なコメントが飛び交うことも珍しくない。


3. ゴシップ

イタリア人が何よりも愛して止まないのはサッカーとゴシップ。このサンレモ音楽祭もイタリア人の大好きなセンセーショナルなゴシップがたくさん生まれる瞬間だ。今回、特に注目を集めていたのは、フェデッツ(Fedez)とキアラ・フェラーニ(Chiara Ferragni)の騒動だろう。彼らの華やかな日常を切り取ったコンテンツはソーシャルメディアで絶大な人気を誇っていた。しかし、2023年のクリスマスにキアラ・フェラーニが病院への寄付目的でデザインしたとされるパンドーロが高額で販売されたが、その寄付金を巡り、詐欺事件として大騒動に発展した(通称「パンドーロ・ゲート」)。これをきっかけに、二人の冷え切った関係や多くのゴシップが明るみに出た。2024年には離婚が成立したものの、サンレモ音楽祭の直前に、フェデッツの結婚前から続いていた愛人問題や、キアラ・フェラーニが親密な関係にあったとされるフェデッツの友人であり、サンレモ音楽祭出場者であるミュージシャンとの三角関係がリークされ、話題が再熱。ネットでは、音楽祭で披露されるフェデッツの新曲は「キアラ・フェラーニをディスった曲に違いない!!」と誰もが注目していたが、実際に発表されたのは彼自身の鬱との戦いをテーマにした曲だった。




優勝を手にしたのはZ世代のスター Olly

2025年のサンレモ音楽祭で栄冠を手にしたのは、Z世代のラッパー・オリィ(Olly)ことフェデリコ・オリヴェリエリだ。2001年にジェノバで生まれ、幼少期から音楽に情熱を注いできたオリィは、15歳で音楽の道を歩み始め、ネット上でその才能を広めていった。特に、イタリアの歌姫アリーザとのコラボレーションで注目を集め、サンレモ音楽祭の若手部門「サンレモ・ジョヴァーニ」にも出場経験を持つ。


今回、彼を優勝に導いた曲「Balorda Nostalgia」では、シンプルで直接的な表現と感情豊かなパフォーマンスが高く評価された。そして、優勝の数日後、彼がユーロビジョンへの出場権を辞退するというニュースが多くの人を驚かせた。多くのアーティストにとって夢の舞台であり、一生に一度のチャンスとも言えるユーロビジョンへの出場を断り、自身のペースで音楽活動を続けることを選んだのだ。彼は目の前のライブ活動に集中することを優先し、この決断からもシンプルで飾らない人柄が感じられる。



準優勝のルーチョ・コルシ、イタリア代表としてユーロビジョンへ

イタリア版デヴィッド・ボウイ?ユーロビジョンに出場するルーチョ・コルシ

優勝者であるオリィがユーロビジョンへの出場を棄権したことで、準優勝のルーチョ・コルシ(Lucio Corsi)にイタリア代表のバトンが託された。1993年生まれ、トスカーナ州ヴェトゥローニア村出身のコルシは、創造性溢れる両親のもとで育ち、幼少期から音楽に興味を持ち、2011年からライブ活動を続けてきた。彼の音楽は、グラム・ロックやシュールな歌詞、幻想的なテーマが特徴である。準優勝に導いた「Volevo essere un duro」では、アイデンティティの葛藤を描き、多くの人々の心を掴んだようだ。今後の音楽キャリアにも大きな期待が寄せられている彼の活躍から目が離せない!5月13日から17日に開催されるユーロビジョンにイタリア代表として出場するルーチョ・コルシを応援しよう!