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コロナ下のバカンス、イタリア人が愛してやまないエルバ島を訪れて

イタリアでは6月3日から全土での移動が可能になりましたが、まだ住んでいる州内のみ移動可能だった5月31日から6月2日にかけて、エルバ島を訪れました。エルバ島は私が住むフィレンツェと同じ州のトスカーナ州に属する島でティレニア海にあります。

エルバ島は美しいビーチが有名のイタリア人が愛してやまないリゾート地ですが、コロナ以前に訪れたことのある人たちは口を揃えて「バカンスシーズンは人が多くてどこもかしこも人だらけだよ」と言っていました。そんなことを耳にしていたので、つい敬遠がちになりこれまで訪れたことがありませんでした。今回初めて訪れようと思い立ったのは、まだ州外からの訪問者がおらず観光客が少ない絶好のチャンスだと思ったからです。

過去にはナポレオンが住んでいたエルバ島、ポルトフェッライオには邸宅も現存

エルバ島へは飛行機で行く方法もありますが、私はピオンビーノからフェリーに乗りました。乗船場に着くと、船員も乗客も皆しっかりマスク姿でソーシャルディスタンスを守りながら乗船待ちをしており、いたって落ち着いていました。船内の椅子には座れる場所と座れない場所がマークされており、ソーシャルディスタンスを守るように工夫されていました。このおかげでゆったり余裕をもって座ることができ、コロナ以前よりも快適な船旅に。エルバ島の中心都市ポルトフェッライオまで約1時間です。

エルバ島は島民3万人ほどで、イタリアではシチリア島、サルデーニャ島に続いて3番目に大きな島です。しかし、エルバ島はシチリア島やサルデーニャ島のように国際的に有名ではありません。イタリア以外の国民には知名度が低く、日本人も知っている人がほとんどいない島ですが、イタリア人なら誰もが知っているリゾートアイランド。私のフィレンツェの友人の中にはエルバ島に別荘を持っている人が何人もいるほどです。バカンスシーズン時にはイタリア人観光客でいっぱいになるため、他の国民に観光PRをして誘致する必要がないそうです。

エルバ島の景色

ポルトフェッライオの街中を散策しても、他のリゾート地とはちょっと異なる雰囲気でした。コロナの影響で観光客がほとんどいなかったということもありますが、街にはリゾート地らしからぬ「普通っぽさ」が漂っており、生活感溢れる雰囲気だったのです。これまでイタリア内外の多くのリゾート地を訪れてきましたが、地元住民の生活感を感じられるリゾート地というのはなかなか無いもので、なるほどイタリア人が愛してやまない島であるわけだと納得しました。

普通の日常風景も楽しめるエルバ島。右端の黄色い建物がナポレオンが滞在した邸宅普通の日常風景も楽しめるエルバ島。右端の黄色い建物がナポレオンが滞在した邸宅

エルバ島は長い歴史を持つ島ではありますが、中でもナポレオンゆかりの島として有名です。フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトが1814年に追放されて299日間を過ごした島で、ポルトフェッライオにはナポレオンが住んでいた邸宅や別荘が現存し、現在は博物館となり見学も可能です。博物館の前も通りましたが、残念ながらコロナの影響でまだ閉鎖中でした。

コロナの影響でビーチに人がほとんどいない中、ゆったり海水浴を満喫

お昼前に到着し、真っ先に思ったことは「まだロックダウン中?」。そう思うほど人も営業中の店も少なく、閑散とした様子。トスカーナ州民しか訪れることができなかった時期であり、州内自由移動になってからもさほど日数が経過していなかったこともあって、観光客はほとんどいませんでした。イタリアは6月2日(火)が祝日で例年は5月30日〜6月2日は連休になる企業が多く、コロナ下でなければ多くの人で賑わうこの期間。昨年の同じ時期はどうだったかバールの店員に尋ねたところ「昨年の同時期はものすごく観光客が多かった。」という返事でした。

エルバ島の街並み

事前にネットでホテルを探した際は、ほとんどの宿泊施設が予約不可能だったので「既に満室なのか、それともまだ閉鎖中なのか」と疑問に思いましたが、現地を訪れて後者であったことが判明しました。ホテルにチェックインした時はマスク姿のスタッフから入り口で手の消毒をするよう指示され、レセプションにあったパンフレット類を眺めていると「もし欲しかったら好きなだけ持っていってください。コロナ以前からあるこういったチラシやパンフレットは全て捨てるように政府から指示されていて、どのみち全て捨てなければいけないから。それから、部屋は政府の指示に従って全て消毒してあります」と話しており、ホテル運営において国から細かい指示が出されいることが感じ取れました。

ホテルに荷物を置くと、さっそく水着を持ってポルトフェッライオからほど近いカポビアンコというビーチへ。エルバ島の海岸はイタリアでも有数の美しい海岸で有名なのですが、実際に訪れてその美しさに息を飲みました。

エルバ島のビーチ

海水が透き通って浮遊物も無く、これまで沢山のイタリアの海岸を訪れてきましたが上位に入る美しさ。しかも、この美しい海岸にほとんど人がいないという幸運。5月最後の日でしたが、既に海水は入水に耐えらる暖かさがあり、ゆったり海水浴も楽しめました。ビーチではそれぞれが他人と距離を十分すぎるほど空けることもできたため、マスクを着用している人はいませんでした。

エルバ島のビーチ

コロナ下ではレストランがどの程度営業しているか不安だったため、初日のディナーは前日に予約しておきました。エルバ島出身の友人に教えてもらったレストランTeatro Bistro & Wine Barはトリップアドバイザーでもポルトフェッラーイオ人気の上位店でしたが、前日でも予約が取れました。連休中の日曜の人気店でのディナーはコロナ下でなければ前日では既に埋まっているケースが多いので、これまたラッキー。マスク姿の店員が「昨日から営業再開したばかりなんです」と話していましたが、各テーブルは1メートル以上の間隔を開けてセッティングされていました。

シーフードディナー

エルバ島はワイン生産も盛んで、ディナーには地元産の白ワインを選択。食事はもちろん地元の海で穫れる新鮮なタコや魚介類などシーフード三昧。

デザートの写真

デザートにはエルバ島の甘口の赤ワインAleatico(アレアティコ)を使ったティラミスを選びましたが、これが絶品でした。どの料理も繊細な味付けで日本人の口にも合うおすすめのレストランです。

Teatro Bistro & Wine Bar
住所 Via del Carmine, 65 57037 Portoferraio (LI) Isola d’Elba, Italia
電話 +39 335 8393722
URL https://www.teatrobistro.com/

フリーダイバーのジャック・マイヨールが住んでいた、可愛らしい街カポリーヴェリ

翌日にはポルトフェッライオを離れて高台にある街カポリーヴェリへ。このカポリーヴェリは、映画「グランブルー」の主人公のモデルになったフリーダイバーのジャック・マイヨールが生前住んでいた街です。

エルバ島でマスクを着けて休む女性たち

地元住民たちがマスク姿で楽しそうに談笑していましたが、ここもまた観光客が戻っておらず、営業している店も少なく閑散とした雰囲気。

エルバ島の景色

カポリーヴェリからのパノラマはどこも海が眺められて美しいのですが、街自体もとても可愛らしくポルトフェッライオとはまた違った雰囲気を楽しめます。

カポリヴェーリの街並み

何気ない街角が絵になる美しさで、残念ながら多くのショップは閉まっていましたが素敵なお店やカフェが並んでいました。

カフェの様子

最終日、フェリーの時間は夕方だったのでサンソーネ海岸へ海水浴に。ここもまた、初日のカポビアンコと同様、海水が透き通っていて美しく、人がほとんどいませんでした。

サンソーネ海岸

旅の最後には、Schiaccia Briaca(スキアッチャ・ブリアカ)というお菓子をお土産に購入。エルバ島産の甘口赤ワイン・アレアティコやナッツ、ドライフルーツがふんだんに使われたこのお菓子はエルバ島の伝統菓子で、見た目もピンク色が可愛らしくお土産にお勧めです。

エルバ島をかたどったパッケージ表示もユニークエルバ島をかたどったパッケージ表示もユニーク

もう一つエルバ島でのお勧めのお土産はAcqua dell’Elba(アクア・デッレルバ)というエルバ島発の香りのブランド。エルバ島の海を思わせるエメラルドグリーンのショップが目を引くこのブランドは香水からルームフレグランス、日焼け止めクリームまで男女問わず楽しめる爽やかなラインナップで、見た目にもオシャレなのでお土産にぴったりです。

アクア・デッレルバのショップ

アクアデッレルバの商品

Acqua dell’Elba(アクア・デッレルバ)のHP
https://www.acquadellelba.com/

今回のバカンスでは訪れませんでしたが、島内には標高1,019メートルのカパンネ山もあり、トレッキングを楽しむこともできます。素晴らしいビーチに、美味しい地元産ワインと新鮮なシーフード、ハイキングやマリンアクティビティなど様々な魅力に溢れるエルバ島。ここ数年はイタリアのオーバーツーリズムにうんざりしていましたが、コロナの影響によって思いがけずゆったりしたバカンスを満喫できました。

港のカフェからの景色

6月3日からイタリア全土移動が解禁、さらに欧州で最初に国境封鎖を解除して欧州からの入国者に対しては14日間の隔離制限も撤廃しているイタリア。コロナの影響で経済の大きな柱の観光業に大打撃を受けており、7〜8月の欧州のバカンスシーズンに間に合わせて少しでも多くの観光客を取り戻したいという切実な思いが背景にあります。ただ、コロナの被害が最も大きかった国のひとつであるため、国境を開放しても以前のように海外からの観光客が戻ってくるかどうかはまだわかりません。