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A.I.R.O.主催オリーブオイルづくしのイベント「Taste the Difference」

2022年2月27日、A.I.R.O.(Associazione Internazionale Ristoranti dell’Olio(国際オイルレストラン協会))が主催するオリーブオイルづくしのイベント「Taste the Difference」が、エミリア=ロマーニャ州のPalazzo di Varignana(パラッツォ・ディ・ヴァリニャーナ)で開催されました。


朝から晩まで1日を通したこのイベントは、

・オリーブオイルテイスターコンテスト

・オリーブオイル業界の権威による講演

・オリーブオイル生産者コンテスト

・オリーブオイルを美味しくいただけるレストラン&オリーブオイル大使の発表

など、オリーブオイル満載のプログラムとなっていました。


A.I.R.O.(Associazione Internazionale Ristoranti dell’Olio(国際オイルレストラン協会))が主催するオリーブオイルづくしのイベント「Taste the Difference」プログラム

特に、今回は、オリーブオイル業界の中でも、他に類を見ない取り組みであるオリーブオイルのテイスターコンテストに注目。コンテスト当日のレポートと、主催者であるA.I.R.O.代表Filippo Falugiani(フィリッポ・ファルジャーニ)さんへのインタビューという2本の記事でご紹介します!

それでは、前編としてコンテスト当日の様子をご覧ください。


オリーブオイルテイスターコンテストとは?

オリーブオイル自体の出来を評価するコンクールは多々ありますが、オリーブオイルのテイスター(ワインで言うとソムリエ)の能力を競い合うコンクールは、オリーブオイルの本場イタリアといえど、このA.I.R.O.が主催するテイスティングコンテストただ一つ。


コロナ感染拡大直前の2020年2月に第1回目が開催され、今回が第2回目の開催です。


A.I.R.O. 「Taste the Difference」イベント企画主メンバー。左からエリーザさん、フィリッポさん、マルタさん
(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.)
A.I.R.O. 「Taste the Difference」イベント企画主メンバー。左からエリーザさん、フィリッポさん、マルタさん
(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.

コンテストのカテゴリーは2つ。

1つ目は、オリーブオイル鑑定士としてイタリアの国家リストに登録*1されているテイスターを対象としたプロ部門(*1: オリーブオイル鑑定士の国家リストに名を連ねるためには、政府認定の「オリーブオイル鑑定適正能力試験」を通過した後、政府認定の鑑定エキスパート(capo panel: カポパネル)立ち会いのもと、テイスティングを40回行う必要があります。去年までは20回でしたが、法律が改訂され、今年から40回となっています)。そして、もう一つは、上記以外のテイスターを対象とした一般部門です。


オリーブオイルテイスターコンテストの目的

私がこのコンテストのことを知ったのは今年1月半ば。

「テイスターコンテストって、一体、どんな風に行われるんだろう?」「沢山のオリーブオイルをテイスティングできるんだろうな!素敵!」と、興味がどんどん湧いてきます。


しかし、コンテスト規定に目を通すと……「オリーブオイルのブレンドを当てる」「品種を当てる」などと書かれています。去年、鑑定適正能力試験に合格した駆け出しテイスターの私にはハードルが高すぎると思える内容です。


「コンテストに参加するのは場違いでは…」と何度も躊躇しましたが、「試験としてではなく、楽しむことが目的だから!」と主催者に仰っていただき、「テイスティングは経験を積むことが重要!参加してみよう!」とコンテストへの参加を決めました。


いざ、オリーブオイルテイスターコンテストへ!

今回、テイスターコンテストへ参加したのは、プロ部門16名、一般部門21名の計37名。
去年「オリーブオイル鑑定適正能力試験」に合格した新米テイスターの私は一般部門での挑戦です。


コンテスト開始前の会場の様子(写真:須飼真理)
コンテスト開始前の会場の様子(写真:須飼真理)

会場に入ると、参加者1人ずつに大きな机があてがわれ、オリーブオイルの入った沢山のコップが置いてありました。もう十分コップがあるのに、着席しても、まだ、次から次へとコップが運ばれてきます。


着席し、周りの人の話を聞くと、オリーブオイルの生産者が多数!やっぱり場違いだったか、という思いが再び脳裏をよぎります。とはいっても、時間が来たらコンテストはスタート!


テイスティングの課題とは?

将来的に日本からもコンテストに参加したい方がいるかもしれないので、国家リストに登録されていなくても参加できる一般部門の課題(5部構成)をご紹介します(ちなみに、プロ部門は、テイスティングのコップ数が増えます)。

テスト1: オリーブオイルのにおいの強さの順序づけ

ランダムに置かれたコップが10個ある。

そのうち5個ずつ、同じ属性を持っている。
(今回は、オイルの酸化したにおいと、油に沈殿したものから発せられるにおいの2属性)

属性別にコップをカテゴライズし、それぞれにおいの強いものから弱いものへと並べる。


テイスティングに臨む参加者(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.)
テイスティングに臨む参加者(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.

テスト2: オリーブオイルに関する知識チェック

「オイルがエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルであるためには、酸度は最大何%?」

「エクストラ・ヴァージン・オリーブオイルに含まれるオレイン酸の%は次のうちどれ?」
といった設問15個に対し、それぞれ4つの選択肢から解答を選ぶ。

テスト3: マッチング

奥にはコップが10個1列に並んでいる。

手前には上記10個とは別のコップが3個ある。

この3個が、1列に並んでいる10個のどれと、それぞれ同じか見つける。


 テイスティングに臨む参加者(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.)
テイスティングに臨む参加者(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.

テスト4: ブレンドの理解

奥にはコップが8個1列に並んでいる。

手前には上記8個とは別のコップが4つある。

この手前のコップ4個は、奥の8個のコップのうち、それぞれ2つずつからできたブレンド。

どのペアから作られたものか、4個それぞれに関して当てる。

テスト5: オリーブオイルの品種の理解

コップが5個並んでいる。

目の前には20種類のオリーブの品種が書かれた紙が置かれている。

それぞれが、どの品種か当てる。


 テイスティングに臨む参加者(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.)
テイスティングに臨む参加者(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.

皆さんは、テストの内容を読まれてみて、どう思われましたか?

「1」や「3」は鼻が良ければ何とかなるかもしれないですが、私にとっては「4」はこれまで一度もやったことのない試験方法だったので、どんな風ににおいを嗅ぎ分けられるのか未知数でしたし、「5」もリストにある20種類のオリーブ(普段、口にすることのない品種が多々!)から5種類を言い当てるなんて神業としか思えませんでした。


しかし、色々と考えても仕方ないので、最後はコンテストの目的に立ち戻り「沢山のオリーブオイルを匂いつづけられる幸せな時間を楽しもう!」とテストに挑みました。


コンテストの結果はいかに?

全て5つのテストを終えた私の感情は、コンテストがひとまず終了したという安堵感40%、40種類ものオイルをテイスティングできた幸福感40%、そして「結果は聞きたくない」という恐怖感が20%といったところでしょうか。そんな様々な思いを抱えながらランチタイムとなりました。


「ライトランチ」と題されていたので、「テイスティングしたオイルとパンくらいかな?」と想像していたのですが、運ばれてきたのは決して「ライト」ではない、しっかりしたお料理。


「Taste the Difference」テイスティングコンテスト参加者に振る舞われたランチ(写真:須飼真理)
「Taste the Difference」テイスティングコンテスト参加者に振る舞われたランチ(写真:須飼真理)

オリーブオイルのイベントだけあり、今回のコンテスト会場であるPalazzo d Varignanaで作られたエクストラ・ヴァージン・オリーブオイル3種類が、プリモ、セコンド、そして、最後のドルチェに至るまで、各料理の味を引き立てるように使用されていました。美味しいオリーブオイルは、オイルと言えど油っぽくなく、食べた後は口の中がさっぱりします。

お料理に合わせてワインを変えるように「お料理に合わせてオリーブオイルを変える」そんな時が近い将来やってくると素敵だな、と思います。


さて、料理に舌鼓を打ちながら、「どうしてこのコンテストに参加されようと思われたのですか?」「品種当ては難しかったですよね」など、参加者の皆さんとオリーブオイル談義にふけっていると、「コンテストの優勝者を発表します!」との声が。


左からエリーザさん、マルタさんと、コンテスト実行委員長で鑑定エキスパートのフランコさん(写真:須飼真理)
左からエリーザさん、マルタさんと、コンテスト実行委員長で鑑定エキスパートのフランコさん(写真:須飼真理)

「まずは、一般部門の優勝者の発表です」

そして……、なんと呼ばれたのは、私の名前でした!

一般部門とはいえ、毎日オリーブオイルに向き合っていらっしゃる生産者さんが何名もいらしたので、優勝できるなんて全く予想しておらず、自分の名前が呼ばれた時は、何が起こったのかわからなくなっておどおど。賞状を受け取る時も、なぜだかアメリカ映画に出てくる東洋人のように、両手を合わせてフランコさんを拝んでしまいました(人って、本当にびっくりすると、おもしろい行動をとるものですね)。


思いもよらない嬉しい賞をいただいた筆者と、優勝の印であるオリーブオイルテイスティングカップ(写真:須飼真理)
思いもよらない嬉しい賞をいただいた筆者と、優勝の印であるオリーブオイルテイスティングカップ(写真:須飼真理)

そして、引き続き、プロ部門の勝者が発表されました。


左から、フランコさんとプロ部門優勝のトゥーリア・コスタさん。(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.)
左から、フランコさんとプロ部門優勝のトゥーリア・コスタさん。(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.

コンテストを終えて

コンテスト前は「テイスターコンテスト」という「未知」のものにおののき、イベントへの参加を迷っていた私ですが、コンテストを終えた今、心から参加して良かったと思っています。


普段、一度に味わうことが難しい40種類ものオイルを1日でテイスティングできる貴重な機会であったのはもちろんのこと、ランチではオリーブオイルを愛する皆さんと交流ができたり、コンテストの後の講演では、オリーブオイル業界の動向を知ることができました。また、生産者コンテストでは、大量生産とは違って精魂込めてオリーブオイル作りをしている生産者さんたちの思いを肌で感じることができ、会場を後にする時には、心が温かくなっている素晴らしいイベントでした。


州ごとに選ばれたオイルの生産者さんたち(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.)
州ごとに選ばれたオイルの生産者さんたち(写真:撮影 Luca Managlia, 提供:A.I.R.O.

他国の文化を理解するには、その土地の食べ物を通してが一番だと常日頃から思っているのですが、エクストラ・ヴァージン・オリーブオイルには、オリーブの木という歴史あるものを大切にしたいという慈しみの気持ちや、より良いオイルを作りたいという探究心、最高のものをお客様に届けて喜んでもらいたいという情熱など、イタリアの人々の素晴らしい側面がいっぱい詰まっていると思います。


イタリアのことをもっと知りたい、近くに感じたい、という方がいらっしゃいましたら、是非イタリア産のエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルを手にとって、味わってみていただければと思います。目を閉じて味わえば、そこにはきっとイタリアのオリーブ畑が広がることと思います。


さて、次回の記事では、イベント「Taste the Difference」を企画されたA.I.R.O.代表のフィリッポさんへのインタビューをお届けします。オリーブオイルに携わっていこうと思われた理由や、テイスターコンテスト開催にあたって苦労した点など、独占インタビューです。お楽しみに!


イベント主催者

A.I.R.O.(アイロ)

https://associazioneairo.com