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コロナ禍での開催、2022春夏ピッティ・ウオモ第100回【前編/リポート】

6月30日から7月2日にかけて、フィレンツェで世界最大級のメンズファッション見本市ピッティ・ウオモが開催されました。フィレンツェで毎年1月と6月に開催されていましたが、昨年から続いているコロナ禍の影響で昨年の6月は開催中止、今年1月はオンラインでの開催となり、バッソ要塞会場で開かれるのは1年半ぶりになります。

ピッティウオモ会場の写真

今回記念すべき第100回目の開催となりましたが、依然として世界中がコロナ禍にあるため規模は縮小して行われ、第93回ピッティ・ビンボ(キッズファッション見本市)と同時開催になりました。

ピッティウオモ会場の様子

ピッティ・ウオモやビンボの運営協会ピッティ・イマジネの発表によりますと、期間中の訪問者は6000人でそのうち4000人がバイヤーでした。バイヤーの3割弱は外国からのバイヤーで、ヨーロッパ諸国(ドイツ、フランス、スイス、スペインなど)からのバイヤーに加えて、アメリカなどからもバイヤーが訪問。ジャーナリストは700人以上が参加し、そのうち約300人は海外からの参加でした。

ピッティウオモ会場の様子

ピッティ・ウオモに出展したブランド数は395ブランドで、そのうち見本市の開催が中止されている間にできたオンライン取引のプラットフォーム「ピッティ・コネクト」のみの参加は57ブランドでした。また、出展ブランドのうち約3割を占める113ブランドは外国ブランドでした。

ピッティウオモ会場の様子

一方、ピッティ・ビンボに出展したのは会場出展71ブランドと「ピッティ・コネクト」のみの参加の42ブランドをあわせた113ブランドで、そのうち約6割が海外ブランドでした。

コロナ感染防止対策が徹底されていた今回の開催

イタリアでは既に屋外におけるマスク着用の義務が撤廃され、外出禁止時間帯も無くなり、ほぼ正常化した日常に戻っていますが、ピッティ・ウオモ/ビンボの開催はコロナ対策も徹底されていました。

入場口で証明書のチェック入場口で証明書のチェック

これまでは直接会場の受け付けでチェックインができましたが、今回は事前にオンラインでの登録が義務付けられました。また、入場に際しては入場48時間前までに行われたPCR検査陰性証明、ワクチン接種済みを証明するグリーンパス(一度目の接種後の15日目以降にもらえる)、感染完治証明書のいずれかの提示が義務付けられました。入場前にいずれかの証明書を提示すると、その内容にあわせたリストバンドを着用させられ、入場の際には必ずリストバンドの提示が必要。入場前には体温チェックもあり、屋内ではマスクの着用は義務付けられ、みんなマスクを着用していました。

会場内にある無料PCR検査コーナー会場内にある無料PCR検査コーナー

会場の中には、PCR検査を無料で受けられるコーナーも設置されていました。ほぼ利用客がいないためか、近づくとスタッフのお兄さんたちから「どう、検査やっていかない?すぐに検査結果も出るんだよ。ちょっとした体験になるよ!」と声をかけられました。

屋外ではマスクをしている人もまばらで、コロナ禍であることを忘れるような雰囲気。久しぶりの再会を喜び、談笑しあう人たちをあちこちで見かけ、中にはロックダウン中はNGとされていたハグをしあっているイタリア人たちの姿もありました。

久しぶりの再会を喜ぶ人々

人気シューズブランド「スペルガ」初のキッズコレクション

キッズ会場では、日本でも人気のイタリア老舗シューズブランド「SUPERGA(スペルガ)」の初のキッズコレクションがデビューしました。スペルガにとって、このキッズコレクションは110年の歴史の中で初となります。手がけるのは今年2月にスペルガとライセンス契約を結んだイタリアの大手キッズファッションメーカーMiniconf(ミニコンフ)で、Minibanda(ミニバンダ)など4つのキッズブランドを展開しているメーカーです。

キッズコレクションの様子

スペルガのキッズ・コレクションは、「アイコン」「ジェンダーレス」「スポーツ」の3つのラインで展開され、3〜14歳の子供を対象としています。日本でも人気のイタリアシューズブランドなだけに、キッズ・ラインは日本でも注目を集めそうです。

MSCクルーズとメンズファッションのコラボ

メンズ会場では、異業種のイタリア大手クルーズ会社MSCクルーズのブースがあり目を引きましたが、ここではイタリアメンズファッションブランドARMATA DI MARE(アルマータ・ディ・マーレ)との初のコラボレーションが展示されていました。

イタリアメンズファッションブランドARMATA DI MARE(アルマータ・ディ・マーレ)との初のコラボレーションを行うMSCクルーズ

ピッティ・ウオモ100回記念のこの機会に、海の保護を目的とし環境に配慮したリサイクルプラスチックビーチで使えるバッグパックVip Fidelity Bagを発表。訪れた場所のステッカーを記念としてスーツケースやリュックに貼るアイデアが生かされたデザインとなっています。

ピッティウオモの記念品

この異業種コラボレーションは立ち上げられたばかりですが、「このコラボが新しい船出となって発展していくことを願っています。今回のピッティ・ウオモに出展したことに際し「確かにいつもより訪問者は少ないですが、参加することに意義があると思いました。」とARMATA DI MAREの関係者は話していました。

若手デザイナー「テベ・マググ」のメンズコレクション発表とサステナブル15ブランドのファッションショー

期間中は特別イベントがふたつ開かれました。ひとつは今回の特別ゲストであるテベ・マググ(Thebe Magugu)のファション・パフォーマンス。2019年に「LVMH プライズ」を受賞した南アフリカ出身の若手デザイナーで、初のメンズコレクションがお披露目されました。

テベ・マググのショー

テンガロンハットやウェスタンブーツを身にまとったメンズモデルたちが、一人ずつ別室へ移動して戻るといった構成のパフォーマンス。

テンガロンハットやウェスタンブーツを身にまとったメンズモデルたちテベ・マググのインスタレーション

ピッティ・イマジネのスペシャルイベントディレクターのラポ・チアンキ氏はテベ・マググについて「新たな始まりへの招待にふさわしい若くてエネルギッシュな才能」とコメントしています。

もうひとつは、世界中のトレンドとなっている「サステナブルスタイル」を提唱する15ブランドによるファッションショー。このショーのハイライトはイギリス人デザイナーのキャサリン・ハムネットとパトリック・マクドウェルによる「HELP」。ブレグジット反対を唱えるコラボレーションで、コラボ名「HELP」にデザイナーたちのストレートな思いが込められています。その他、フランスブランドの「ARBO」、パンデミック中に生まれたNY発のブランド「CONNOR MCKNIGHT」などが参加しました。

「サステナブルスタイル」を提唱する15ブランドによるファッションショー

大規模な国際展示会開催の先駆者となったピッティ、他業者にとってもお手本となる存在に

今回の開催について、ピッティ・ウオモやビンボの運営協会ピッティ・イマジネのCEO、ラファエロ・ナポレオーネ氏は「ピッティの見本市は、主な国際ファッションイベントの再開においては最初に開催されました。私たちは見本市再開の先駆者かつお手本となる存在となりました。見本市の期間中、約1万人が安全に働けたことが素晴らしい結果であると強調したいです。」と振り返りました。

ピッティウオモの会場の様子

確かに通常に比べて規模も参加者も少ないピッティ見本市ではありましたが、まだ海外移動の制限がかかっている中で海外からの訪問者も見込めない状況において、そして世界中でコロナ禍における経済問題が深刻化している中で、ここまで大規模の国際展示会がトラブルもなく安全に行われたことは、ファッション業界者だけでなくイベント開催関係者など他の業界にとってもコロナ後の希望の光となったことだと思います。そういった意味でも世界の先陣を切って開催された今回のピッティは有意義なものだったのではないでしょうか。新たな再スタートを切ったピッティ・ウオモの次回開催は来年1月に同会場にて開催される予定です。

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