ART & DESIGN

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イタリア・パルマで開催中の「フォルナセッティ・テアトルム・ムンディ」展覧会を訪れて

イタリアで新型コロナウイルスが落ち着き、夏の始まりを知らせるような、眩しい太陽が照りつけてきた頃。ワカペディアは、ロックダウン中にできなかったことをやろうと思い、アート関連の展覧会に行こうと思い立った。自粛中、オンライン美術館にアクセスしてみたものの、やっぱり画面を通して感じるアートと、五感いっぱいに感じるアートは全くの別物だ。そんな事を考えていた矢先、ミラノから電車で1時間ほど離れた町、パルマで『フォルナセッティ・テアトルム・ムンディ(Fornasetti. Theatrum Mundi)』という展覧会が2021年2月14日まで開催されると聞き、早速チケットを購入。「フォルナセッティ」といえば、以前ワカペディアがインタビューをしたアーティスト、バルナバ・フォルナセッティがアートディレクターを務めるデザインブランドだ。おまけにパルマといえば、イタリアチーズの王様、パルミジャーノ・レッジャーノと生ハムの名産地!美味しいものに目が無いワカペディアは、アートと食に惹かれながら、パルマ行きの電車に乗り込んだ。

「フォルナセッティ」とは

そもそも「フォルナセッティ」とは、イタリアが誇る 20世紀の芸術家、ピエロ・フォルナセッティ氏が立ち上げたブランドだ。ピエロ氏は絵画や彫刻、本の装丁、インテリア、家具の製作など多くの作品を手掛けた。1988年に他界した後は、息子のバルナバ・フォルナセッティ氏が、父親の意志と共にブランドを引き継いだ。ソプラノ歌手のリナ・カヴァリエリ(Lina Cavalieri)の顔をモチーフにしたデザインは、今やブランドの「顔」として商標登録されている。

フォルナセッティ

パルマ市民に愛されるピロッタ宮殿で開催

この展覧会は、イタリア政府が支援する地域開発プログラム、『パルマ2020+21 イタリアの文化の首都(Parma 2020+21, Capitale Italiana della Cultura)』の一部だ。そして会場に選ばれたのは、16 世紀後半にファルネーゼ家によって建てられたピロッタ宮殿。広大な敷地に佇むピロッタ宮殿には、国立考古学博物館やファルネーゼ劇場、パルマに所縁のある画家のコレクションが所蔵された、国立美術館などがある。そんな歴史のあるピロッタ宮殿は、パルマ市のシンボルとして、市民からとても親しまれている場所なのだ。

Photo by Cosimo Filippini

「フォルナセッティ・テアトルム・ムンディ」展覧会の見どころ

展覧会は、「フォルナセッティ」の主要なテーマに分かれている。例えば建築、音楽、テーマとバリエーション、絵画、グラフィック、コレクション、日常におけるオブジェ、などだ。館内では、フォルナセッティがデザインした灰皿が展示されている他、舞台制作に携わったモーツァルトのオペラ、「ドン・ジョバンニ」の映像が流れている。

圧巻だったのは、ファルネーゼ劇場内での展示だ。ソプラノ歌手、リナ・カバリエリの顔が描かれた大量のプレートが、劇場の丸みに合わせて木造の観客席に並べてあり、まるで本物の観客が座っているみたいだ。会場を包むほのかな木の香りと、スポットライトを彷彿させる光、そして大勢の観客に見立てたリナ・カバリエリの顔の数々が、観る人を16世紀当時の劇場にタイムスリップさせる。宮殿や劇場に元々飾られていた、豪華でクラシカルなインテリアと、上質感と遊び心がある「フォルナセッティ」の作品とが調和し合い、計算し尽くされたコンテンポラリーアートのようだ。一度足を踏み入れたら忘れることのできない、不思議な空間に魅了されることだろう。

Photo by Cosimo Filippini

会場を後にし、バールで休憩しながらあれこれと考えた。あの独創的でメッセージ性のあるグラフィックは、やっぱり素敵!オシャレなデザインとして知られている「フォルナセッティ」だけど、もはや機能を重視する「デザイン家具」という枠を超え、昇華した「アート作品」だ。作品そのものの上品さもあるけれど、歴史的にも意味のある美術館やギャラリーで展覧会を開催することで、作品に普遍的な価値を増し加えているとも言える。そんなエイジレスな魅力こそが、国境や流行を超えて愛される理由なのかも、とワカペディアは思った。ドリンクを片手に、塩気のあるパルマの生ハムを頬張りながら。

Photo by Cosimo Filippini


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