ART & DESIGN

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アートディレクターLuca PilutzaとGilda Scaglioniに訊く、イタリアンデザインの秘密

イタリアのデザインはなぜ美しいのでしょうか?

Luca PilutzaとGilda Scaglioniの二人は、いまイタリアで人気のアートディレクター。
これまで彼地の自動車メーカーやファッションブランドの広告やイベントを手掛けてきました。そんな二人は日本が大好き。その思いが高じ、「10totokyo.it」というWEBサイトを立ち上げました。来日した二人に話を聞きました。

右がLuca Pilutzaさん、左がGilda Scaglioniさん
SHOP ITALIA まずはLucaさんの経歴を教えてください。

Luca 私はグラフィックデザインと写真をやっていました。それと同時にスケートボードにも熱を入れていました。その経験がイタリアで初めてのスケートボード・ライフスタイル・マガジン「Baco Magazine」の創刊へとつながりました。その雑誌では編集、執筆、撮影を行い、それと同時に「515」というチームを結成しました。
そのチームで手掛けたのが、あるイタリア車の発売までのアドバイス、ブランディングでした。それが成功し、同じ自動車メーカーの異なるブランドのアート、戦略、WEBサイト、動画などを管理しました。

彼らが手掛けたイタリアの自動車ブランド「アバルト」の動画のワンシーン。10totokyo.itより
SHOP ITALIA 自動車以外のプロジェクトも手掛けてきましたか?

Luca 日本のファッションデザイナー、山本耀司氏ともプロジェクトを行いました。それは未来的な教会で行われたファッションショウで、そのコレクションのコミュニケーションを担いました。私たちの経験は自動車の世界の中だけにあるわけではないのです。アート、音楽からインスピレーションを得て、それをどこで披露するか。その違いです。

ヨウジヤマモトとコラボレーションしたファッションショウの動画のワンシーン。10totokyo.itより
SHOP ITALIA Gildaさんは?

Gilda 私はフィレンツェの ISIA (Istituto superiore per le industrie artistiche)大学で工業デザインとグラフィックを学びました。芸術家でありバウハウスの教員でもあったオスカー・シュレンマーにインスパイアされた私は、アートとファッションの融合についての研究を始め、論文を発表しました。この論文を多くのギャラリーが求めてくれました。

SHOP ITALIA そのまま研究者とはならなかったのですね?

Gilda 論文を発表すると同時に、Camera Nazionale della Moda Italiaでミラノのファッションマーケティングとコミュニケーションの修士号を取得しました。さまざまな種類のプロジェクトを行い、ミラノ・ファッションウィークでそれを発表したりしていました。その頃、Lucaと出会ったのです。

Luca 彼女の展示会に行って、その作品に驚きました。そこで意気投合し、すぐに共同作業を始めました。

Gilda 最初はファッションブランドにコンセプトのアイディアを出したりして。

Luca 共同作業が初めて実を結んだのが、最初に話したイタリア車の発売にむけたアイディア出しです。メーカーは我々にクレイジーなアイディアを期待していたようで。

Gilda その準備は万端だったわね(笑)。

イタリアと日本は似ている

SHOP ITALIA いま二人がやっている「10totokyo.it」について聞かせてください。

イタリアのファッションブランドMAX MARAのイメージ動画も手掛けた。10totokyo.itより
Luca これはどこかのメーカーやブランドのものではなく、純粋に我々二人を紹介するプロジェクトです。我々が何をやってきて、どこを目指しているのかを知ってもらう機会です。このサイト名の意味は、東京の緯度は35°、我々が住んでいるトリノは45°。距離は遠いけれど、緯度で見れば10°しか違わない。イタリアと日本は違うけれど、とても似ているという思いを込めました。

SHOP ITALIA どの辺りが似ていると思いますか?

Luca 量ではなく質へのプライオリティ。物作りへの情熱です。このサイトでは、イタリアの文化と日本の文化を融合させることにも挑戦しています。

「一期一会」という概念に惹かれます

二人の名刺の裏には「一期一会」の文字が!
SHOP ITALIA 名刺には「一期一会」の文字が入っています。この意図は?

Gilda 「一期一会」というのは非常に複雑な概念です。ヨーロッパ人と日本人では時間の認識が大きく異なると思います。

SHOP ITALIA どう異なるのですか?

Gilda ヨーロッパ人は未来や過去についてとても深く考えます。

Luca イタリア語では「一期一会」の概念を端的に表現する言葉がありません。だから彼らには説明しなければならないのです。

クールな印象とは異なり、情熱的に語るLuca
Gilda 「今」という瞬間を大事にする。素晴らしいコンセプトです。

SHOP ITALIA どこでこの言葉を知ったのですか?

Gilda 5、6年前に能登半島でです。

Luca 新潟県の越後妻有アートトリエンナーレを見に行きました。その後、クルマで山を越え、能登半島に着き、あまりに美しい景色に感動をしました。

Gilda そこの人たちはとても親切でした。もしかしたら彼らはイタリア人に初めて会ったのかもしれません。そこで教えてもらったのです。

イタリアのデザインの秘密に迫る

SHOP ITALIA 我々日本人はイタリアのデザインに惹かれます。その魅力はどこにあると考えますか?

Gilda 機能性と情熱の間の非常に微妙なバランスだと思います。

SHOP ITALIA バランスというのは中々定義が難しいですね。

Luca イタリア人はとても独創的です。我々は常に道に留まるのではなく、ほかの場所に移動しようと考えます。イタリアはひとつの国になってまだそれほど時間が経っていません。つまりそれは異なる文化がまだ残り、それが混ざっている過程といえるのです。異なる文化を持つ人同士が理解し合う必要があります。そこで便利なのが「美しい」とは何かを語ることなのです。

SHOP ITALIA なぜ「美しい」なのですか?

Luca 美しさ、アートはイタリア人のDNAの一部だからだと思います。 昔は国は違ったけれど、美しさに対する気持ちは同じだということです。

Gilda アートのパイオニアは他者へ道を開く、「美しい敗者」と評価されます。

Luca曰く「彼女は非常に才能があり、決してあきらめず、勇気をもっていて、創造力や研究心に長けている」と
SHOP ITALIA 日本のデザインについては?

Luca イタリアのデザインと類似点がたくさんあります。とくに小型車。

Gilda 建築、住居、庭園にある「わびさび」に感動しました。

SHOP ITALIA 日本で好きな場所はどこですか?

Luca もちろん東京は大好きです。それと同時に田舎を愛しています。

Gilda 直島と瀬戸内海の島々。

Luca そこでお気に入りの場所が、豊島(テシマ)美術館です。ここの見どころは、芸術と建築そして自然の融合です。その三者の間には境界がないことが理解できます。これは非常に革新的で、世界でも非常にユニークな存在です。このようなものをこれまで見たことはありませんでした。

Gilda あとは屋久島。純粋な自然と精神性、神道のようなものを感じました。

過去と未来、そして今。イタリアと日本。都会と田舎。
二人に共存するのは、異なるものを融合させ、それが見る者の胸を打ち、コミュニケーションの役目となれば、という願いではないでしょうか。もちろん、その原点には「美しさ」が必ずあります。二人が作り出す次なるプロジェクトにも注目したい。

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