日本人にはまだあまり知られていないけれど魅力的なイタリアスポットを紹介するこのシリーズ。今回お伝えするのは北イタリアのマッジョーレ湖に浮かぶベッラ島です。
ベッラ島はイタリア語でIsola Bella(イゾラ・ベッラ)といいますが、その名前の意味は「美しい島」。これほど名前負けしない島はありません。
ちなみにイタリアには、シチリア島のタオルミーナにもうひとつベッラ島があります。こちらのベッラ島は素朴な雰囲気で、また違った魅力のある島です。
さて、私が北イタリアのベッラ島を知ったきっかけは、日替わりでPCの背景画像が変わるBing Wallpaper。毎日世界中の写真を楽しむことができるので愛用しているアプリですが、ある日の画像がベッラ島だったのです。
「この素敵な場所は一体なに!?島なのかな?」と目が釘付けに。これは絶対いつか行ってみたいと思ったのが昨年の夏でした。
昨年の夏といえば、今も引き続き世界中で猛威を奮っているコロナの影響を受けていた時期。海外へ出るには色々面倒でもあり、急遽ベッラ島とその周辺の北イタリアをバカンス先に決めました。
北イタリアの湖水地方にある湖のひとつ、マッジョーレ湖。イタリアで二番目に大きい湖
スイス国境近くにはイタリアの湖水地方と呼ばれる、いくつも湖がある地域があります。日本人に有名なコモ湖や、イタリア最大の湖のガルダ湖、それからルガーノ湖やオルタ湖などがあり、ベッラ島があるマッジョーレ湖もそのひとつです。
マッジョーレ湖はイタリアとスイスの国境をまたぐ細長い形をしており、面積は212.5 km²でガルダ湖に次いで二番目に大きな湖です。
ベッラ島へ行くには最寄りの街ストレーザまで行き、そこからフェリーに乗ります。フェリー乗り場まで行くと、チケット販売係の人たちが案内してくれました。
フェリーのチケットとベッラ島への入島料は一緒になっていて、フェリーに空きがあったのですぐ次のフェリーに乗ることができました。チケットは、他の島や動物公園などと組み合わせて買うことができ、コンビで買うと入場料が割安になるので、他にもどこかへ行くか事前に決めておくことをお勧めします。
400年にも渡って完成にこぎつけた一大プロジェクト、豪華絢爛なボッロメオ宮殿と庭園
ベッラ島はストレーザの湖岸から400メートルほどしか離れておらず、フェリー乗り場からも目視できます。出港して5〜10分もするとベッラ島に到着しました。
ベッラ島は、イタリアの有名な貴族ボッロメオ家の所有する島で、長さ 320m、幅 180mほどの大きさです。ボッロメオ家の豪華絢爛な宮殿と階段状になった見事な庭園で構成され、島の隅々にまで手入れが行き届いており、訪れる人たちを圧倒する美しさがあります。また、この島から見渡す景色も絵画のような美しさで、浮世離れした雰囲気が漂っています。
この島は1630年頃まで小さな2つの教会と菜園があるだけの小さな漁村でした。1500年頃から隣のマードレ島を所有していた貴族のボッロメオ家はベッラ島に関心を持ち、この島に宮殿と庭園をつくる壮大なプロジェクトを思いつきました。
具体的にプロジェクトが進行したのは1632年、この年にボッロメオ家のカルロ三世が妻のイザベラのために宮殿建設を開始しました。しかし17世紀半ば、ミラノで発生した深刻なペストの流行により、プロジェクトは一時中断されることに。
しかし、その後このプロジェクトはカルロ3世の三男のヴィタリアーノ6世が受け継いでから再び建設が進み、延べ数百人もの建築家やエンジニア、アーティストや大工たちが関わった、あしかけ400年にも渡る壮大なプロジェクトは完成しました。
ボッロメオ宮殿はバロック建築の傑作。見るものを海の魔法の世界に誘う洞窟
宮殿内は島であることを忘れるような、絵画や彫像、フレスコ画やタペストリーなどで華やかに飾られた豪華絢爛な部屋が続きます。1797年にはナポレオン・ボナパルトもこの島を訪れていますが、きっとその美しさに心奪われたことでしょう。
この宮殿で特に驚かされるのは地下です。貝殻や石が壁や天井一面にびっしり敷き詰めて装飾された、クロッタ(洞窟風)と呼ばれる装飾の部屋が続き、別世界に迷い込んだような気持ちになります。
ちなみに、「グロテスク」という言葉は、この「グロッタ」が語源となっていますが、見る人によっては少々グロテスクかもしれませんね。
この洞窟風の装飾は、イタリアではあちこちで見ることができますが、その中でもここが特に素晴らしいのは外から入って部屋に反射される光が湖面のゆれにともなってユラユラ揺れ、いっそう幻想的な雰囲気に仕上がっていることです。まるで海の魔法にかかったような不思議な空間に、ボッロメオ家のゲストたちは驚かされたそう。
イタリア式バロック庭園、テラスと植物が見事に調和したマッシモ劇場
グロッタ装飾の部屋から抜けると、これまた夢の世界のようなイタリア式バロック庭園が広がっています。1631年から1671年にかけて造園されたこの庭園には、ピラミッド型のマッシモ劇場があります。
マッシモ劇場は、庭園で最も重要な記念碑で、彫像やオベリスク、噴水、そして10の壮大なテラスが植物と見事に調和しており、その上にはボッロメオ家の紋章であるユニコーンの像が立てられています。
美しい庭園には、この庭園にぴったりの美しい白い孔雀が優雅に散歩して、庭園に華を添えています。
庭園からの眺めは、豪華客船の先端を思わせます。この景色を見ると「あ、ここは島だったんだ」と思い出すほど、島であることを忘れてしまうような壮大なスケールの宮殿と庭園でした。
島の上空からの写真を見て一目惚れをして訪れたベッラ島でしたが、訪れてみると宮殿の中や地上から見た庭園がこれまた驚くほど美しくて、感嘆の声を上げ続けたベッラ島観光になりました。これだけのプロジェクトを完成させたのがひとつの家族というのですから、ボッロメオ家の偉大さは計り知れません。今でもボッロメオ家は、観光客へ開放していない時期にはこの島で過ごすこともあるそうです。いやはや、別世界のお話ですね。
フェリーやベッラ島への入島チケットは現地でも買えますが、サイトでも予約購入はできるので、日本から予約しておくと安心です。また、通常は4〜10月に開園していますが、コロナ禍で今年は5月は土日のみ開園となっているため、訪れる前には必ずサイトで開園時間をチェックしてくださいね。
●ベッラ島のフィンフォメーションやフェリーの案内・予約等のサイト(英語)
https://www.isoleborromee.it/en/
<連載「二度目のイタリア、次に行くならこんな街」まだまだ知らないイタリアの魅力を紹介!>
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