クリスマスマーケットは、中世後期にドイツ(ドイツ語でWeihnachstmarkt)で誕生した伝統行事と言われています。もともとは職人たちがキリストの降誕をイメージした手作りの品を見せる行事でしたが、今日では光や色、香りに包まれた特別な雰囲気の中で、さまざまな屋台が伝統的な品を展示するイベントとして知られています。
イタリアならではのクリスマスマーケット
ヨーロッパのクリスマスマーケットといえば、北欧諸国のスタイルが思い浮かびますが、イタリアのクリスマスのマーケット (Mercatini di Natale)は独特のスタイルで存在しています。誕生したのは最近ですが、ものすごい速さで、北から南までイタリア中に広がりました。
さて今回は、一年でもっとも幻想的で魅力的な時期にイタリアを訪れたいすべての人にとって見逃せない、イタリアの美しいクリスマスマーケットをいくつかご紹介したいと思います。
トレントのクリスマスマーケット(トレンティーノ・アルト・アディジェ州)|手工芸品のショーケース
ひとつは、トレンティーノ・アルト・アディジェ州にあるトレントのクリスマスマーケット(11月19日~1月8日に開催)です。
毎年、フィエラ広場には70以上の小さな木の家が並び、地元の手工芸品のショーケースとなります。先端技術を駆使した新しいフォトマッピングの取り組みにより、ドゥオーモ広場の歴史的な建造物はプロジェクターで強調され、光のライン、星の光、フェイクスノーが連動して映し出されます。そして、クリスマスツリーはLEDライトで照らされ、美しく縁取られます。
ダンテ広場には、サンタクロースの村があり、クリスマス列車やエルフの家が設置され、その中では子供向けのワークショップや活動が企画されています。
ボルツァーノ・クリスマスマーケット(南チロル州トレンティーノ)|アドベントと伝統行事「クランプスパレード」
2つ目は、チロル州トレンティーノのボルツァーノ・クリスマスマーケット(11月25日~1月6日に開催)です。
『アドベント』と呼ばれる、キリスト教西方教会におけるクリスマスまでの期間、ボルツァーノ中心部のヴァルター広場は、光と香り、魔法に包まれます。広場には70もの屋台が並び、手工芸品や地元のジンジャーブレッドなどのお菓子がたくさん売られています。子供向けのアトラクションもあり、人形劇、メリーゴーランド、ポニー乗馬を楽しむこともできます。
ボルツァーノ市やアルト・アディジェ地方のいくつかの町(ブルニコ市やブレッサノーネ市など)ではこの時期、キリスト教以前から続く、アドベントともうひとつ、異教徒の伝承を絡めた伝統行事「クランプスパレード」が行われます。ヤギの毛皮と手彫りのグロテスクな仮面をつけ変装した悪魔「クランプス」が、長い白髭を蓄えたサン・ニコロと共に、カウベルと鎖を持って街の中をパレードするのです。
この伝統行事は11月末から12月中旬にかけて行われ、善の象徴であるサン・ニコロと、悪を体現する聖人のしもべであるクランプスが、良い子には報酬を、悪い子には罰を与えるために街を練り歩き、楽しく騒いで若者や大人たちを怖がらせるのです。
ヴェローナのクリスマスマーケット(ヴェネト州)|おとぎ話の雰囲気を楽しむ
3つ目は、ヴェネト州ヴェローナのクリスマスマーケット(11月18日〜12月26日に開催)です。La Città dell’Amore(愛の都)はクリスマスでもその魅力を失わず、街の入り口から旧市街のすべての通りを数百もの光のインスタレーションで彩り、おとぎ話の雰囲気に包まれます。ヴェネト州で最も美しいマーケットのひとつであるヴェローナのクリスマスマーケットは、街の中心にあるシニョーリ広場で開催されます。100以上の出展者がガラス、木、陶器で作られた伝統的な製品、たくさんのギフトアイデア、美味しそうな料理などを展示します。ヴェロネーゼを象徴するこのクリスマスマーケットは、ドイツのニュルンベルク市の「クリストキンドルマルクト」の協力のもと、開催されています。
アレッツォのクリスマスマーケット(トスカーナ州アレッツォ)|食と光の演出が楽しめる最大級のクリスマス市
4つ目は、トスカーナ州アレッツォのクリスマスマーケット(11月19日〜12月26日に開催)です。
インターナショナルな家族連れや子供向けのクリスマスマーケットで、魔法のような雰囲気に包まれます。イタリアとオーストリアにまたがるチロルやドイツ、オーストリアから出展者が集まり、トスカーナの最高の特産品が並びます。実は、イタリアで一番大きなチロル風のマーケットなのです。
ブレッツェル、ラクレット、ポレンタ、そして有名なローストシンといった名物が味わえ、チロルの典型的なバイタ(木造小屋)を思わせる屋台が主役です。忘れてはならないのは、もみの木やさまざまな植物が植えられた「クリスマスガーデンアー」と呼ばれる空間と、「ビッグライトショー」です。グランデ広場の古い建物に映し出される光と素晴らしい演出で、毎晩17時から21時まで観客を楽しませます。
フィレンツェのクリスマスマーケット(トスカーナ州)|美味しいチーズや肉、ワインも
5つ目は、トスカーナ州フィレンツェのクリスマスマーケット(11月19日~12月18日に開催)です。
世界的に有名なダンテの『神曲』ゆかりの街フィレンツェでは、美しいサンタ・クローチェ広場で、トスカーナらしさに溢れる最大のクリスマスマーケットが開催されます。広場では陶器やキャンドル、洋服、手作りのクリスマス・デコレーション、そしてたくさんの食べ物が売られ、小さなクリスマス村の様相を呈しているのです。トスカーナのマーケットは、美味しいチーズや肉、ワインなしには語れません。国際色豊かな出展者のおかげで、オーストリアのペストリーやオランダのワッフルなどの美味しいデリも味わうことができます。
ほかにも、ドゥオモ広場のクリスマスツリーとキリスト降誕のシーン、そして街で最も有名なヴェッキオ橋の見事なライトアップなど、マーケット以外でも街全体がクリスマスの光と魔法に包まれるのです。
マテーラのクリスマスマーケット(バジリカータ州)|世界遺産の地で景観とともに楽しむ
6つ目は、バジリカータ州マテーラのクリスマスマーケット(12月3日~1月6日に開催)です。
まるで絵画のような景観でCittà Dei Sassi (石の町)と言われるマテーラは、世界遺産と『欧州文化首都2019』にも選ばれています。ヴィットリオ・ベネット広場で開催されるクリスマスマーケットでは、手工芸品やギフトを買ったり、料理を楽しめるほか、大道芸人によるパフォーマンスや人形劇、キャロルやバグパイプによるクリスマスコンサートも予定されています。
この頃の街の光や色、クリスマスの雰囲気は、まるで狭い路地や低い家屋、小さな教会や歴史的建造物が重なり合うプレゼーぺ (イエス・キリストの誕生の様子を表した模型)のシーンを再現したようです。
イタリアのクリスマスマーケットを楽しもう
このような幻想的な雰囲気を味わいたいなら、先紹介されたイタリアのクリスマスマーケットを覗いてみてください。音と色と味が織りなす360度のエンターテイメントが、あなたのイタリアでのクリスマスを忘れられない思い出にしてくれることでしょう!