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古代ローマの海底遺跡でスキューバダイビングはいかが? 

ナポリ中央駅から車を走らせること30分の場所に、バイアという港町があります。ヴェスヴィオ火山とナポリ湾を見渡す風光明媚なこの地に、他に類を見ないダイビングスポットがあるのをご存じですか?


火山活動があるこの一帯は、かつて古代ローマの皇族や富裕層の温泉保養地として栄えていました。今では、その浴場跡や上流階級の離宮跡が遺跡として公開されており、半日あればゆっくり散策することができます。

しかし、歩いて見ることができるものが、全てではないのがバイア遺跡群の魅力。なんとその一部は海の中にまで広がっているのです。これは、紀元前5世紀以降に進んだ地殻変動で、低地部分が沈んでしまったためです。

イタリアに住んでいながら、そんな珍しい遺跡が南イタリアにあるとは知りもしませんでしたが、先日ご縁あってこの海底遺跡で初めてのスキューバダイビングに挑んできました。正直とてもスリリングな体験でしたが、思い切って挑戦して大満足!ナポリからの半日観光アクティビティーにもおすすめなので、今日はその体験談をお届けします。

海底遺跡を間近で見られるのはダイバーだけ


1980年代以降に調査が進んだバイアの海底遺跡が、一般に公開されるようになったのは2002年のこと。船の水中窓からガラス越しに見学するツアーもありますが、運よく遺跡にお目にかかれるかは海水の透明度次第。しかしスキューバダイビングなら、よほどの悪天候でない限り、遺跡のすぐ上を泳いで手で触ることも可能です。 

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海底に差し込む青い光に包まれた遺跡は何ともロマンチック 


初心者でも安心の体験コース 


今回私が体験したのは、海底3~5メートル地点の遺跡を巡る1時間のお試しコース。経験豊富なインストラクターが一人ずつ付いてくれるので、初心者でも安心です。 最初に、海中でのインストラクターとの意思疎通のとりかた、装備品の使い方、見学行程などの説明を一通り受けます。

背負った酸素ボンベは17kg、地上では支えてもらって立つのがやっと 


そしてダイビングスーツに着替えたら、早速船で沖の方へ。 当日は、地上も海中もとても穏やかな絶好のお天気。きらめく海と少しずつ遠ざかる美しいバイアの町を眺めながら、この後待ち受ける初めての海底体験に心が高揚していました。

船上から見たバイアの町とシュノーケリングをする観光客

 
しかしそんな気分もつかの間、10分もしないうちにダイビングスポットに着くとさすがに緊張感が。心の準備もほどほどに、指示されるまま海に飛び込むや否や、慣れないシュノーケルマスクでの水中呼吸に悪戦苦闘しました。

 梯子を下ろしていよいよダイビング開始


やっと呼吸法をマスターしたところで、今度は途中でマスクが外れたらどうしようという不安に襲われます。これは、一緒にダイビングに初挑戦した友人も同じ。二人してややパニック状態になり、なかなか海底へ進むことができませんでした。 

筆者友人(左)、ダイビング開始直前に余裕のポーズ


ついに海底へ、最初にモザイク画の床と対面 


しかし、それを克服したときにやっと目の前に現れた海底のモザイク画は、これまで地上で見てきた同類のそれの何よりも感動的でした。それがこちらの二人の男が戦う場面を描いたもの。この邸宅の主はどんな人だったのでしょう。 

戦士のモザイク画 

さてようやく最初の遺跡スポットまでたどり着いたものの、ここでまたトラブル発生。必死で手足を動かさないと、すぐに身体が上へ上へと浮いて海面に戻ってしまうのです。 これは、重石を付けたウエイトベルトが外れてしまったためでした。新しいベルトを付けに船上へ戻ったところで、残り時間は半分を切っていました。海底遺跡の保護のため、ダイビングの時間延長は少しも許されません。

先ほど海中でたくさんもがいたせいで、疲労感も相当なものに達していましたが、何とか他の遺跡も見たい一心ですぐまた海中へ。 装備新たに今度はすいすいと潜ることができ、戦士のモザイク画まで戻った後は瓶の破片や筒状の遺跡を見ました。

筒状の遺跡はかつての水道管か 


その先にある魚のモザイク画まで何とかたどり着きたかったのですが、あえなく時間切れ。残念でしたが、私の身体も燃料切れでした。無事船上に戻ったときの達成感と安堵感は、今でも忘れられません。

スリルを克服した後に目の前に迫る古の海底遺跡は、私たちの特別な夏の思い出になりました。一緒に潜って支えてくれたダイバーのもう一人の友人と、優しいインストラクターにも感謝です。

ほか当日のプログラムでは浴場跡なども見学可能だったようです。潜ることに慣れた経験者であれば、時間内にすべての遺跡をゆったりと見学できるのではないでしょうか。 ダイビング経験の有無に限らず、ちょっと変わった遺跡観光がしたいという方はぜひ一度バイアの海底遺跡を訪れてみてください。

 

地上の浴場遺跡も合わせての見学がお勧め 


ちなみに午後からは、近くの丘陵地にある浴場遺跡公園を見学しました。海底遺跡と合わせて見ると、陸海に分かれてしまった古代ローマ遺跡群の全容がよりよくつかめるのではないでしょうか。 入場料は€5です。

地上の浴場遺跡公園も見どころがたくさん


ダイビングセンターと料金について 

 

最後に、今回お世話になったSea Pointというダイビングセンターについてご紹介します。フレンドリーなインストラクターのもと、バイアのほかにイスキア島、プロチダ島、ニシダ島でスキューバダイビングとシュノーケリングが可能。 船着き場の真正面にあり、男女別の更衣室とシャワールームも完備されています。 

センター内の様子


様々なダイビングスポットのプログラムが用意されていますが、バイア海底遺跡のスキューバダイビング体験については、健康で中級程度の水泳能力がある8歳以上であれば誰でも参加可能とのこと。2023年8月現在の料金は下記のとおりです。  


ダイビング体験料€70
遺跡入場料€35
装備一式レンタル料€15
以上合計€120


ダイビングスーツと装備品を持参できる場合や、インストラクター不要のライセンス保持者は別の価格となります。詳しくは公式サイトをご覧ください。  


ダイビングセンター Sea Point  

www.seapointitaly.it/en/ 

※本記事の水中写真についてはSea Pointより提供いただきました。
 

Parco archeologico delle Terme di Baia(地上の浴場遺跡公園) 

www.pafleg.it/it/4388/localita/51/parco-archeologico-delle-terme-di-baia