日本とイタリアの外交関係樹立160周年という記念すべき2026年、1月にイタリアのメローニ首相が来日したのも記憶に新しいなか、高市首相がG7サミットを前にイタリアを訪れ、両国首脳による相互往来が実現しました。
首相となって初めてのイタリア訪問
6月14日、イタリア・ローマを訪問した高市早苗首相は、ジョルジャ・メローニ首相との首脳会談に臨み、経済安全保障、防衛協力、宇宙開発、エネルギー、先端技術など幅広い分野で両国関係のさらなる強化を確認しました。
ローマ中心部にあるヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂での献花から始まった今回の訪問は、単なる外交行事にとどまらず、日本とイタリアが「特別な戦略的パートナー」として新たな段階へ進んだことを象徴する機会となりました。

不確実な時代に求められる日伊協力
会談ではまず、国際情勢について率直な意見交換が行われました。
中東情勢では、米国とイランが戦闘終結に向けた覚書に合意したことを歓迎し、世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の安全確保が国際社会全体にとって重要であるとの認識を共有しました。
また、ウクライナ情勢や中国・北朝鮮をめぐる課題についても議論し、自由で開かれた国際秩序を維持するため、日伊両国が引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
地中海の中心に位置するイタリアと、インド太平洋地域の重要なプレーヤーである日本。地理的には離れていても、民主主義や法の支配といった価値観を共有する両国の連携は、これまで以上に重要性を増しています。

経済安全保障と先端技術で深まるパートナーシップ
今回の会談で特に注目されたのが、経済安全保障分野での協力強化です。
世界的なサプライチェーンの分断や地政学的リスクが高まる中、両国は半導体、重要鉱物、先端技術分野における協力を拡大することで一致しました。
今年5月には東京で第1回日伊経済安全保障協議が開催されており、その成果として、サプライチェーン強靱化に向けた政府間協力覚書や半導体分野に関する関係機関同士の協力文書が整備されました。
さらに、重要鉱物の採掘・精錬・リサイクル・備蓄に至るまで、G7諸国や同志国との連携を通じて供給源の多角化を進めていく方針も確認されています。
日本とイタリアはともに高度な製造業を有する国です。自動車、機械、素材、半導体などの分野において、両国の強みを結びつけることで、新たな産業競争力の創出が期待されています。

GCAPと宇宙開発が切り拓く未来
安全保障分野では、日本、イタリア、英国が共同で進める次世代戦闘機開発計画「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」について、開発をさらに加速させることで一致しました。
また、イタリア海軍艦艇の日本寄港も予定されており、インド太平洋地域におけるイタリアの存在感は着実に高まっています。
一方で、未来志向の協力として大きな注目を集めているのが宇宙分野です。
今回の首脳会談に合わせて「宇宙協力に関する日伊共同声明」が発表され、宇宙企業間の協力も進展しました。スペースデブリ対策や衛星データ活用など、宇宙産業は今後の日伊協力を象徴する分野の一つになりそうです。

メッシーナ海峡大橋に見る日伊協力の象徴
経済協力の象徴として両首脳が期待を示したのが、シチリア島とイタリア本土を結ぶ「メッシーナ海峡大橋建設計画」です。
完成すれば世界有数の規模となるこのプロジェクトには日本企業も参画しており、日本が長年培ってきた橋梁技術やインフラ建設のノウハウが活用される予定です。
この巨大プロジェクトは、単なる建設事業ではなく、日本とイタリアの技術力と信頼関係を世界に示す象徴的な取り組みとして期待されています。

「良い仕事」をともに
共同記者会見の声明を、高市首相はイタリア語の「Buon Lavoro ブォン・ラヴォーロ」(良い仕事を)という言葉で締めくくりました。
1月の訪日時にメローニ首相が日本語で「がんばる」と語ったことに応えるように、高市首相はイタリア社会に根付く仕事への誇りと真摯な姿勢に敬意を表しました。
自動車、ファッション、デザイン、食文化、そしてものづくり。
世界中の人々を魅了するイタリアの創造力は、「良い仕事をしよう」という価値観に支えられているのかもしれません。

外交関係樹立160周年を迎えた今、日本とイタリアは安全保障や経済だけでなく、文化や価値観においても深く結ばれています。
ローマで交わされた「ブォン・ラヴォーロ」という言葉は、両国が未来に向けて共に歩んでいく意思を象徴するメッセージとして、心に響きました。