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イタリアワインソムリエ藤本のワインとペアリングの話〜JFKワインズ編Vol.3〜

イタリア白ワインの聖地、フリウリ・ヴェネチア・ジュリア州

北限はオーストリアに、そして東の端はスロヴェニアと国境を接する州「Friuli-Venezia Giulia(フリウリ・ヴェネチア・ジュリア州)」。

イタリアにおいて最高峰の白ワインを生み出す、まさに「白ワインの聖地」のようなエリアです。


この州のワイン産地としては北部にありながら、アドリア海からの海風も穏やかに届き、やや温暖なエリアColli Orientali del Friuli DOC(コッリ・オリエンターリ・デル・フリウーリ)

今回は、このDOCの南部にあたるButtrio(ブットリオ)のワイン「ロンコ・ブロイロ」とペアリングにスポットを当てていきたいと思います。


熟成感と滑らかさと複雑さを兼ね備えたロンコ・ブロイロ

  • ワイナリー/Conte d’Attemis(コンテ・ダッテミス)
  • ワイン名/DOC Friuli Colli Orientali Ronco Broilo(DOC フリウリ・コッリ・オリエンターリ ロンコ・ブロイロ)
  • 葡萄品種/Pinot Bianco,Friulano(ピノ・ビアンコ、フリウラーノ)

「ロンコ・ブロイロ」750mlのボトル
ロンコ・ブロイロ 750ml|コンテ・ダッティミス
¥8,030

陰干しした白ブドウ2種類をブレンド。中樽と小樽を使い熟成します。


「Friulano」(フリウラーノ)はこのエリアを代表する土着品種。アーモンドのような香ばしさとハーブや白い花のようなアロマを持つ、複雑でデリケートな香りのワインです。


陰干しした白ブドウ2種類をブレンド

フリウリ・ヴェネチア・ジュリア州で作られる樽熟の白は、やはりシャルドネが多いです。フリウラーノの樽熟がまったくないわけではないですが、決して多くはないですし、さらに熟成が進んだものとなるとちょっと珍しいかもしれませんね。

ロンコ・ブロイロの特徴

さて、ワインの特徴ですが……


フリウリ・コッリ・オリエンターリロンコ・ブロイロ
フリウリ・コッリ・オリエンターリ ロンコ・ブロイロ

とても輝きのある黄金色。


抜栓したての味は、プロポリスやドライアプリコット、エルダーフラワーに、少しの香ばしさがアクセント。ややドライな飲み心地はミネラルが主体。それに伴う収斂味や心地よい苦味、豊富な酸が口の中を引き締めます。


抜栓してしばらくすると、甘さと香ばしさのボリュームが上がりコクが出てきますが、下支えの酸は引き続き滑らかでしっかりとその存在感を見せます。


さらに時間が経過すると、ナツメグやモルトシロップのようなスパイシーな香りと、しっかりした熟成感の中にレモネード、ヘーゼルナッツ、ナツメヤシ、砂糖漬けの果物、少しのバニラ、繊細なドライフラワーの香りのアクセントも感じさせてくれます。


このように、ロンコ・ブロイロは、いろんな表情を見せてくれる複雑さと熟成感が特徴です。

ペアリングその① 牡蠣×バター

旨味も酸も豊富で、複雑な味わいの白ワインと何をペアリングするか。僕がおすすめの食材、それは「牡蠣」です。

さらにワインの持つ風味やコクとボリュームのバランスを合わせるため、たっぷりのバターを使い「牡蠣バター」にしました。



大ぶりの牡蠣に小麦粉を纏わせ醤油とたっぷりのバターでソテーしただけの超シンプル料理です。


牡蠣は、スッキリさっぱりした辛口と合わせると生臭さが出てしまいやすい食材ですが、ロンコ・ブロイロのような味わいのワインと合わせると、牡蠣の磯の風味ととワインの果実味ががマーブル状に混ざり合います。牡蠣のヒダの風味とワインの熟成感が非常に良く合うのも印象的です。


双方の旨味の凝縮感と味わいのコントラストが生まれるのも、このペアリングの楽しいところだと思います。


後半にいくにつれ、ワインのトロピカルフルーツのような果実味と牡蠣の風味の相性が増し、また飲みたくなり、また食べたくなります。


ペアリング① 牡蠣×バター

ペアリングその②カラスミ×バター

次は熟成香のしっかりと効いた白ワインと合わせたい食材、「カラスミ」です。こちらもバターと組み合わせて、ワインとの同調をはかりました。


カラスミとバターを滑らかなペースト状にした「カラスミバター」。

カラスミ×バター

クラッカーではなくスライスした生のセロリをディップします。さらにサンブーカ、胡桃オイル、ケッパーなど、味変の要素も添えて楽しみます。


カラスミも、軽く爽やかな白ワインを合わせるとバッドフレーバーを引き寄せ易い食材ですが、今回のような白ワインとの相性はとても良いです。


牡蠣と同様、磯の風味がこのワインと合わせやすいのもあるのですが、ワインも食材も共に「熟成」しているというのも、ペアリングの大事なポイントの1つだと思います。


ワインの乳製品のような風味とバターのコクが同調して好相性です。


カラスミとバターが合わさることでピスタチオのような濃厚なナッツの風味を感じさせ、ワインのナッティーな風味と重なり合います。ペアリングによってワインの南国系の果実風味のコクが更にふくよかに感じるのも面白いと思いました。


食べた時の滑らかなテクスチャーがワインの質感ともぴったり。


本来なら、サルデーニャの酸化熟成した少し強めの飲み心地の白ワインと合わせることが多い食材ですが、北イタリアの上質な白ワインとの相性の良さを再確認できるペアリングとなりました。


最後に

今回は「磯の風味の強い食材×バター」「熟成感のあるリッチな白ワイン」の組み合わせをお届けしました。


どちらの料理も難しくはないので、お家でも再現しやすいと思います。自宅で今回と同じようなタイプの白ワインを開ける機会があれば、ぜひ試していただきたいです。


数時間前には抜栓し、ワインクーラーで冷やし続けずに、ゆっくりと室温にして楽しんでみてくださいね。


皆さまのイタリアワインライフがより豊かなものになりますように。


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