INTERVIEW

INTERVIEW

お客様のお好みを引き出しテーブルに届ける 奥が深いソムリエの仕事

マネージャー兼ソムリエとして、西麻生の本格イタリアン「Le Api Osteria」に務めるイタリアワインソムリエの藤本智さん。ソムリエとはどんな仕事なのでしょうか? 意外と知らないソムリエという仕事の舞台裏について、また藤本さんの専門であるイタリアワインの魅力についてたっぷりお伺いしました。

※インタビューは、「Le Api Osteria」で行いました


イタリアワインソムリエ藤本のワインとペアリングの話~JFKワインズ編Vol.1~
WINE

イタリアワインソムリエ藤本のワインとペアリングの話~JFKワインズ編Vol.1~

藤本 智 / 2022.04.21


ソムリエの仕事はサービス。ワインと食事をコントロールして居心地のいい空間を作る

──まず、ソムリエとはどのようなお仕事か教えてください。


藤本:ワインにフォーカスされがちですけれど、基本的にレストランのソムリエはダイニングを取り仕切るといいますか、サービスの中の仕事だと思います。ワインと食事をコントロールしてお客様の居心地のいい空間を作る。そしてシェフの料理に合うワインをお客様に提供して楽しんでいただくのがソムリエの仕事かなと。


──仕事の流れを教えてください。


藤本:ワインを選ぶのはお客様なので、まずは1週間、2週間、1ヶ月のスパンで予約の確認をします。リピータのお客様に関しては過去の伝票を見て、オーダーしたワインや逆に飲み残したワインなどを洗い出し、用意するワインを考えます。ほかには、ワインの在庫を見てペアリングのワインを発注したり、この時期の食事に合いそうなワインを皆でテイスティングしたり。そういうことの繰り返しですね。ワインを選ぶというより、お客様の好みを重視します。ほかには、シェフの料理に合わせやすいワインをセラーの中からピックアップしたり、店にとって必要なワインを選ぶといった業務の繰り返しです。



──お客様が来店されてからではなく、ずっと前から準備が行われるということですね。


藤本:料理全体をしっかりと満たすのがサービスマンであり、ソムリエの仕事だと思います。常連のお客様のために前もってワインの仕込みをやっていくと。ペアリングに関しては、ワインによっては2日前から抜栓して、週末に飲みごろになるように心がけます。


──人によって好きなワインが異なると思いますが、お客さまご自身は好みを把握していらっしゃることが多いのでしょうか?


藤本:引き出すことが多いですね。辛口ならどういう辛口なのか、国はフランスなのかチリなのか、イタリアなのか。その中からチョイスしてお客様のお好みのワインをテーブルに届けられるようなディスカッションは、可能な限りします。辛口のワインと言っても人によって千差万別ですから。その中で、さらにお好みのワインを選べるように意識しています。



──お客様の味の好みの違いに合わせられるのは、経験によるものですか?


藤本:いっぱい飲んでるだけですけどね(笑)。普段はイタリアワインだけを扱っていますけれど、試飲会などでは、イタリア以外のワインも扱えるようにテイスティングします。日本のレストランでは、フランスのワインだとブルゴーニュ、ボルドーなどがありますが、「ではイタリアだとどんなワインなのか?」というやりとりが多いですね。自分も飲んでいないと分からないので、フランスワインは積極的に飲むようにして、ボルドータイプと言われたらイタリアのこれ、とできるだけ他のワインとすり合わせができるようにしています。


──どのぐらいのワインを日々お飲みになっているのですか?


藤本:減りましたけれど多いと一日で60種類以上ほどでしょうか。コロナ禍で減っていますが、新ヴィンテージが入ってくるタイミングになると、さまざまな場所で試飲会がありますので、1日に2件以上回っています。4〜5時間で約100種類のワインをテイスティングして、その中で自分のお店に合うワインを選ぶようにしています。それだけテイスティングしても、自分の中に刺さるワインがないこともあります。


──ピンと来ないワインもあるんですね。


藤本:タイミング次第です。その時の適温もありますし、忙しい時や来場者が多い試飲会ではテイスティングが難しいため、どれも同じような味に感じてしまいます。このワインは冷えていたら美味しいと推測できることもあります。


ただ、一回飲んだだけでいい悪いの判断はしたくないので、できれば何度も口にして、「意外とこういうシチュエーションだったらいいな」とか「この料理と合わせるととてもいい」など、ペアリングを通した発見もあります。


僕も家でワインを開けて失敗することもありますけれど、2、3日経った頃には美味しくなる時もあるので、その場で判断しないようにします。この点もお家でワインを楽しむコツかもしれませんね。


──味覚は、その日のコンディションで変わりますか?


藤本:厳密にいうと時間帯によって味覚の鋭さが違い、10時、11時ぐらいがピークです。1日の中で飲んだり、食べたりして夕方から夜になると舌にストレスもかかっているので、少し味覚が鈍くなるといいますけれど、人体で1番曖昧な感覚でもあり人によると思います。


イタリアワインにのめり込んだきっかけはシェフとの出逢い

──藤本さんはどのようなきっかけでソムリエの道に入ったのですか?


藤本:僕は、もともとバーテンダーだったんですよ。表参道の6Fがバーで7Fがイタリアンレストランのお店で働いていました。レストランで使われているワインをバーでも使わせていただいたり、バーで料理を提供する時もありました。そういうことを通して、ワインも面白いなと。ソムリエの資格自体は持たずにワインを提供していました。代々木上原のレストランでマネージャーとして勤務していた時に、試験が夏から始まるんですけど、3月ごろから独学で勉強を始めて資格を取ったのがきっかけですね。



──イタリアワインを特にご専門になさっているのは、そのレストランがきっかけでしょうか。


藤本:そうですね。実はイタリアにはウィスキーのコレクターが多いので、バーテンダーの時にそういう目的でイタリアに行ったこともありました。1番のきっかけになったのは、サービスマンとして入った店のシェフと出会ったことですね。


イタリアの日本では見たことないようなディープな郷土料理を美味しく出してくれるそのシェフと出会って、イタリア料理がとても面白く感じました。料理に合わせられるイタリア全20種のワインがあって、それがとても魅力的で一気にのめり込みましたね。それでとにかくイタリアワインを知りたくて、あの頃はフランスワインなども全く飲みませんでした。イタリアワインにハマって、そのままずっとイタリアを専門にしていました。


イタリアワインの魅力はバラエティの豊かさ

──イタリアワインの特徴、魅力とは?


藤本:バラエティ豊かなのがイタリアワインの特徴でもあると思うんです。1861年にイタリアが統一されるまで、国境が接しているフランスやオーストリア、スイスなどからも葡萄が入ってきたため、時代背景により全20州に様々な葡萄が植えられていました。フランスの産地と違って、場所によってすごく気候が変わるので、土壌もモザイク上にガラリと変わります。そして、そのブドウ品種の数はいまやおよそ500種類です。それも政府がワイン用に認めている品種がそれぐらいで、よくわからない品種も入れると2000種類ぐらいになる。そのバラエティの豊富さがイタリアのワインの面白さでもあり、魅力でもあります。


イタリアワインおすすめ15選 | 選び方や特徴も紹介
WINE

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「ITALIANITY」編集部 / 2023.01.09


──フランスでいうと代表的なボルドー、ブルゴーニュなどがありますが、イタリアワインというと分からないなと。


藤本:僕ですらまだまだわからないです。でも長く携わって飲んでる人ですら、そこも含めて楽しんでいます。ハイブリット系といった品種も増えていますし、忘れ去られた古代品種を復活させるような未知の品種もあります。そこを面白いと感じるかわかりづらいと感じるかで、イタリアワインにハマる、ハマらないと分かれると思います。


──イタリアワイン初心者はどう選べばいいですか。


藤本:ネットでよくピックアップされて目にする生産者や歴史が長い生産者は、支持されるそれだけの理由があります。ワインの場合は美味しいからという理由が一番。ですので、まずはおすすめにのっかってみる。自分で選ぶのが難しい場合は、僕らみたいなイタリア専門の人に聞くのが一番ですね。


別に高いワインだから、美味しいってわけでもありません。自分が飲んで美味しいのが正解だと思います。


──おすすめのワインはありますか。


藤本:引き続き今流行っているのはロゼ、バローロ、北ピエモンテワインやロゼのスパークリングなどで、どんどん質が高まっています。注目してるのはそれと、ティモラッソというワインです。


イタリアワインソムリエ藤本のワインとペアリングの話〜JFKワインズ編Vol.2〜
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イタリアワインソムリエ藤本のワインとペアリングの話〜JFKワインズ編Vol.2〜

藤本 智 / 2022.06.20


店舗情報

Le Api Osteria(レ アピ オステリア)
住所:東京都 港区 西麻布 2-8-7 サングラータ西麻布Ⅱ 1F


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