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日本未上陸ワイナリー一家が届けたい!土地の性格を引き出すワインの楽しみ方

イタリアワインを楽しむために必要なのは、知識?センス?それとも現地に行くこと?
そんな迷えるイタリアワイン初心者の方や、すでにイタリアワインが大好きな方にもお届けしたい“ワインの楽しみ方”を伝授するため、イタリアで5世代に渡り、6つの地域でワインを製造する老舗ワイナリー「セイテッレ」が、日本未上陸のワインの数々を携えて「オンラインテイスティングセミナー」を開催。在日イタリア商工会議所のサポートの下、ワインジャーナリストの宮嶋勲氏を講師に迎え、各地にワイナリーを持つ彼らならではの土地の性格が感じられるワインの楽しみ方を教えてくれました。

トレンティーノ創業老舗ワイナリー「セイテッレ」

コロナ禍ゆえにワイン愛好家の間で密かにブームとなっている「オンラインワインセミナー」ですが、初心者にはなかなかハードルが高く感じるもの…。そんな不安を吹き飛ばす情熱的なイタリアの老舗ワイナリーが、全編イタリア語で日本へ向けて初めてのテイスティングセミナーを開催しました。

1877年にワインの銘醸地として知られるトレンティーノ州で創業し、現在はヴェネト州・ピエモンテ州・ロンバルディア州・エミリアロマーニャ州・トスカーナ州にぶどう畑を所有するワイナリー「セイテッレ」。「セイ=6」、「テッレ=土地」を意味する老舗ワイナリーの5代目アンナ・リッツィさんは、リッツィ家代々受け継がれるワイン愛を伝えるべく、まだセイテッレのワインが輸入されていない未開の地、日本へ向けてセミナーを開催することを決意。オンライン環境ということで、事前に20ミリリットルずつ小瓶に入ったテイスティング用のワインを日本の受講者へ送付し、宮嶋氏の通訳を介して遠く離れたこの地までイタリアンワインの魅力を届けました。

ワインは好きだけど「美味しい!」「重い!」「フルーティ!」しか感想が言えない筆者は、愛好家の皆様のように違いを感じることができるか緊張しながらもセミナーを受講。その緊張を解きほぐすかのように、アンナさんはワイナリーの歴史、つまりご自身の家族のヒストリーをパーソナルな視点で優しく語ってくれました。

1877年、ぶどうを含む果樹栽培の農家を営んでいたリッツィ家。3代目からぶどう農家に専念し、同時にワイン造りもスタートしたそう。4代目で醸造家、そしてアンナさんの父でもあるルイジーノさんが、イタリア各地のワインに魅せられぶどう畑を拡大し、現在のブランド「セイテッレ」を設立しました。
アンナさんは5代目として、ルイジーノさんと共にイタリアンスタイルのワインの魅力を海外へ発信しています。イタリア各地のワインをぶどう畑から手掛け、イタリアンワインスタイルを追求するリッツィ家の真髄をしっかり受け継いでいらっしゃるようです。

セミナー中はアンナさんが話すのと同時に、BSフジのTV番組「イタリア極上ワイン紀行」の企画・監修・出演でも知られる宮崎氏が、彼女の言葉をリズミカルに逐次通訳してくれるため、彼女の人柄がそのままに受講者に伝わります。気付けば、テイスティング初心者の不安は消えていました。

何でも「ワインを愛することが私たちの情熱」と代々受け継がれてきた家訓を語るアンナさん。ちなみに、スローガンは「大地から食卓へ」とのことです。早朝のフレッシュなぶどう摘みから醸造、パッケージング、食卓へ届くまでを全て管理し、自信を持ってワインを提供することでセイテッレの魅力が伝わるのだとか。

早速テイスティングへ

今回テイスティングしたワインは下記の6種。

① アメリゴヴェスプッチ クストーザ DOC

ワインのボトル

セイテッレの「オステリアライン」から、食事に合う「セイ・エスプラトーリ」(6人の探検家)と名付けられたシリーズ。その中のアメリゴ・ヴェスプッチという15世紀の探検家の名前を冠したクストーザからテイスティングがスタートしました。

クストーザはイタリア北部のガルダ湖の南にある丘陵地帯のこと。アンナさんがいるのはクストーザのヴァレッジョスルミンチョという街で、トルテッリーニがとても有名だそう。試飲してみると、フレッシュで華やかな香りが鼻に抜けます。

宮嶋氏「やや軽めで非常に芳しいですが、飲み終わりの塩味がクリーンな印象ですね。午後に友達とお喋りして生ハムなんか摘みながら飲んだら、どんどん食が進んでしまいますね。」

アンナさんによると、軽やかなワインに見えながら、飲む度に口の中をクリーンにしてくれるので、トルテッリーニはもちろん、意外にバターにも合うそう。これは新発見です!

② スメラルド ルガーナ DOC

ワインのボトル

続いて、アメリゴヴェスプッチと同じく「オステリアライン」から、「セイ・ディアマンテ」(6つのダイヤモンド)シリーズのスメラルド ルガーナDOCをテイスティング。同じ北イタリアでも、クストーザ(アメリゴヴェスプッチ)が女性的だとしたら、ルガーナ(スメラルド)は男性的な印象なんだとか。

ルガーナはロンバルディア州にある地域。ルガーナの酸とミネラルが強いぶどうの品種・トゥルビアーナは、多少熟しても重く感じさせない風味があり、通常より10日ほど収穫を遅らせているとのこと。ミネラルな軸がありながらも、フレッシュでトロピカルな風味につながりややダイナミック、飲み口はキリッとしていてしっかり飲みたい時に持ってこいの印象です。

宮嶋氏「ルガーナは酸とミネラルの影響で、長期熟成に非常に適した地域です。このワインは10年熟成させても全然ヘタらないワインですね。」

力強いルガーナに合うアンナさんのおすすめ料理は、ウサギやチキンのグリル。すかさず「焼き鳥(塩)にも合うと思いますよ!」と宮崎氏がコメント。
確かに焼き鳥に合うワインだったら、イメージしやすいですね。

③ アンブラ ヴェルメンティーノ トスカーナ

ワインのボトル

同じく「セイ・ディアマンテ」シリーズから、ヴェルメンティーノトスカーナのアンブラをテイスティング。アンブラとは、日本語で琥珀という意味。エチケッタ(ラベル)の琥珀色のダイヤモンドで、トスカーナの豊かな太陽を思い出すために選ばれたようです。

イタリアのトスカーナ州の南部からラツィオ州へかけたティレニア海沿岸地域のマレンマで作られたこちらのワインは、イタリア西部で南北に幅広く栽培されている品種のヴェルメンティーノの中でも、太陽に恵まれた産地トスカーナならではの「熟れた黄色い果実と太陽」が感じられます。

北のワインを飲んだ後にヴェルメンティーノ トスカーナを試すと、土地の性格の違いがよくわかります。口に含んだ瞬間からもうここは完全にトスカーナ!自信に満ちた開放的なのに濃厚なボディのカウンター、鼻に抜ける香りは芳醇そのもの。それにも関わらず、飲み心地はとてもみずみずしく、宮嶋氏曰く「最後にアーモンドのような苦味が残る苦味は、酸とはまた違ってみずみずしさに支えられた苦味」だそう。

これだけテロワール(土地の特性)がワインに表れるのは、「セイテッレは各地域の伝統を大切にすることが哲学だからよ。」とアンナさん。

④ スペリオーレ サッソスクリット トスカーナ IGT

ワインのボトル

お次は、オーダーがあった時に作られるという「パレットライン」から、「スペリオーレ」シリーズのサッソスクリットにトライ。3種の白を飲み比べた後は、赤ワインを試していきます。

サッソスクリットは、トスカーナ州の中でもビーチが人気な港町・リボルノの丘にある村。古代ギリシャ時代にエトルリア文明が栄えた地域でもあり、リッツィ家のワイナリーからもエトルリアの遺跡が発掘されたのだとか。ちなみに、マレンマ地域でもあります。

品種は85%サンジョベーゼ、残りを5%ずつカベルネ・メルロー・シラーが構成しています。ただ、このサンジョベーゼですが、キャンティクラシコのように酸によって厳格なタンニンが残るのではなく、「暖かく太陽に恵まれ、すくすくと育った土地のサンジョベーゼ」(宮嶋氏)とのこと。2017年という猛暑の年のワインですが、通常暑い年のワインには加熟のトーンが出るところ、こちらのワインには全く感じられません。海に近いサッソスクリットは海風によって日中の気温が上がりにくく、夜になると丘から冷たい風が吹くため、結果「丸みを帯びた」タンニンが柔らかで芳醇な余韻を楽しませてくれました。

⑤ スペリオーレ ロッソ ヴェロネーゼ IGT

ワインのボトル

「スペリオーレ」シリーズのロッソ ヴェロネーゼIGTを。トスカーナの海沿いのワインを楽しんだら、今度はまたイタリア北部ヴェネト州のヴェローナに移ります。

ヴェネト州の名産であり、主体となる品種のコルヴィーナは、軽やかなタンニンがスパイシーさを醸し出し、それは先ほどのマレンマの赤とは対照的です。

宮嶋氏「温度を冷やしても攻撃的に感じないワインですね。」

渋い系ワインが多いイタリアの赤ですが、こちらは珍しくフレッシュなワインです。濁りなく、すっきりと踊りたくなるような洗練された味わいに妙な新鮮さに感じます。先ほどの海沿いの明るさとはまた少し違ったサラッとした口当たりで、肉類にも合いますが、アンナさんと宮嶋氏のおすすめはリゾットやパスタ、そして熟成させたチーズとのこと。

アンナさんによると、セイテッレではなんとリゾット専門リストランテを手掛けており、このロッソ ヴェロネーゼは最も人気なワインの1つだそうです。リゾットといえば白のイメージですが、「赤が合う」と言わしめるほど。この軽やかさが伝わったでしょうか?

⑥ プラート アマローネ DOCG

ワインのボトル

最後はイタリアワインの中でも最高峰との呼び声が高いヴェネト州の「アマローネ」。

ワイン造りが盛んなヴァルポリチェッラで作られたプラート アマローネDOCです。ヴァルポリチェッラの中でもやや東側にある標高350〜400メートルの石灰質の土壌が、重すぎないアマローネを生み出すとアンナさん。

アマローネの生産過程で特色でもあるブドウの陰干し発酵を強く感じるような、暗くてベタっとした苦味がないため、アマローネに想像される濃厚で荘厳なワインではなさそうです。代わりに、食事とも合わせたくなるような滑らかさが心地よい印象を残します。

宮嶋氏「鉄板焼きのグリルしたお肉とも合いそうですね。やりすぎてないアマローネです。」

バランス感覚に長け、日常的にも楽しめつつ、昔から変わらない土地の性質を生かしたワインを生み出すのは、幅広くイタリアンワインを追求するリッツィ家の賜物なのかもしれません。

アンナリッツィ氏の写真

アンナさん「造る人間が、“自分が自分が”と前に出るようなワイン造りではなく、一歩下がってテロワールを押し出すようなワイン造りを大切にしています。」

大地のぶどう畑から食卓までを、そんなスタイルでワインに寄り添うアンナさん。イタリアから発信されるオンラインセミナーを通して、パーソナルに紡ぎ出されるストーリーと、その土地の性格にリッツィ家の愛情がたっぷり注がれたイタリアンワインで、まるで現地にいる時のような穏やかさに包まれました。

この記事を読んだ皆様も、オンラインセミナーでイタリアンワインをテイスティングしてみたら、目を閉じた瞬間にイタリアの風景が見えてきてしまうかも?

<お問合せ先>
在日イタリア商工会議所
電話:03-6809-5802

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