火山の影響を大きく受けた土壌
古代ローマでは各地に水を供給するために、紀元前300年頃から水道を建設したと言われています。ローマの中心地から南東へ5kmに位置する水道橋公園(Parco degli Aqcuedotti)では、かつて69kmにも渡って造られた巨大水道橋の遺跡を間近で見ることができます。現在この公園はジョギングやお散歩、まったりデートなど、市民の憩いの場となっているようです。
ここから更に南東へ15kmのところに、白ワインで知られるフラスカーティの生産地があります。フラスカーティのワインは今も昔もローマの人にとって欠かせないものとして、幅広く普及されています。
その更に南東に、ラツィアーレという複合火山があることはあまり知られていません。実はトスカーナ州のアミアータ火山以南ローマを含んだこの辺りまでは、カルデラ火山が連なっている火山地帯なのです。ラツィアーレはクレーターや火山湖がある丘陵地帯となっており、この特徴的な火山性土壌がフラスカーティのブドウ栽培に大きな影響を与えています。
ローマからフラスカーティまでは電車で約30分
ヴァチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂。毎週日曜日のミサでは12時からローマ法王がお話とお祈りをされるため、世界中から多くの信者が集まる。ミサはテレビの生中継でも見ることができる。
紀元前312年に執政官アッピウス・クラウディウスによって敷かれた旧アッピア街道。このような玄武岩でできたローマの石畳は「サン・ピエトリーノ」という愛称で呼ばれる。
かぼちゃの花のフリットに厚みのある味わいのフラスカーティ スーペリオーレ “エポス”。
カンネッリーノ・ディ・フラスカーティとフラスカーティ スーペリオーレの基礎知識
Cannellino di Frascati DOCG
Frascati Superiore DOCG
カンネッリーノ・ディ・フラスカーティDOCG
フラスカーティ スーペリオーレDOCG
火山地帯で生まれたワイン
ローマから南東に20km。ラツィアーレ火山の北~北西に広がる同じ生産エリアの中で、甘口ワインと白ワインの2銘柄のDOCGが造られています。
ブドウ畑の標高は70~500mと様々で、畑はティレニア海の方角の西~北西向きが多くなっています。というのも、海から吹き込む風が畑の温度上昇を軽減させると共に、ブドウに適した湿度を保ってくれるからです。
フラスカーティのワインは古くからローマの歴史に大きく関わって流通し、中世ルネッサンス時代においてもローマ人の慣習や経済に影響を与えてきました。
第二次世界大戦後、ローマは経済的に活気があったことから、フラスカーティのワインの需要は増えていきました。そんな中“質より量“が求められ、徐々にクオリティは落ちてしまいました。しかしここ10年ほどの間に品質の向上が見られ、本来のフラスカーティを追求して表現する生産者が増え、近年見直されつつあります。
カンネッリーノ・ディ・フラスカーティDOCG
州:ラツィオ
DOCG昇格年:2011年
瓶詰めワイナリー数:約10社
主なブドウ品種:マルヴァジア・ディ・カンディアとマルヴァジア・デル・ラツィオで70%以上
法定熟成期間:なし
ワインのタイプ:甘(中甘口~甘口)
フラスカーティ スーペリオーレDOCG
州:ラツィオ
DOCG昇格年:2011年
瓶詰めワイナリー数:29社
主なブドウ品種:マルヴァジア・ディ・カンディアとマルヴァジア・デル・ラツィオで70%以上
法定熟成期間:なし(リゼルヴァは1年以上)
ワインのタイプ:白
高位聖職者、貴族の避暑地カステッリ・ロマーニ
フラスカーティを含む、アルバー二丘陵地帯に位置する14の町の総称がカステッリ・ロマーニです。
16~17世紀ごろ、現在のフラスカーティ駅の東側に広がる丘陵地には途轍もなく大きなVilla(邸宅)が建てられていました。12のうち2つは戦争で破壊されましたが、残りのいくつかは現在もホテルや学校としても使われています。
その他、ローマ法王が避暑地として滞在されるカステル・ガンドルフォ、アルバーノ湖を臨むアルバーノ・ラツィアーレ、高架橋やキージ宮殿で知られるアリッチャ、ネミ湖のそばのネミなど。いずれも歴史と自然を感じられる場所で、ローマっ子の憩いの場にもなっています。
ACCESS
ローマのテルミニ駅から電車で行くことができます。フラスカーティ駅(30分)、カステル・ガンドルフォ駅(45分)、アルバーノ・ラツィアーレ駅(55分)。
今月のワイン
Merumalia
Cannellino di Frascati DOCG “CANTO”
メルマリア
カンネッリーノ・ディ・フラスカーティ“カント”
神への歌を表現した中甘口ワイン
畑の土壌は玄武岩や凝灰岩。樹齢60年のブドウを使用。
9月下旬にブドウを枝ごと切って元の樹に引っ掛けて吊るし、そのまま放置して畑でアパッシメントさせます。数日後には葉が枯れ、その後ブドウの実が徐々に乾燥していきます。11月上旬にアパッシメントしたブドウを収穫して醸造し、7ヶ月間バリックで熟成します。
みかんや八朔といった柑橘類や、ハチミツの香りがやわらかく広がります。甘さは控えめで品が良く、飲み疲れしない味わいです。
2016年は潮風による適度な湿度のお陰で20%ほど貴腐菌が付着したため、良い風味をお楽しみいただけます。生産本数は非常に少なく、2016ヴィンテージは僅か1,200本。
DATA
ヴィンテージ:2016
アルコール度数:14.0%
ブドウ品種:マルヴァジア・デル・ラツィオ70%、ボンビーノ30%
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POGGIO LE VOLPI
Frascati Superiore DOCG “EPOS”
ポッジョ・レ・ヴォルピ
フラスカーティ スーペリオーレ “エポス”
DATA
ヴィンテージ:2016
アルコール度数:13.0%
ブドウ品種:マルヴァジア・ディ・カンディア50%、マルヴァジア・デル・ラツィオ40%、ボンビーノ10%
【月刊DOCG】とは?
希少で個性豊かなイタリアワインの輸入・販売を行う株式会社Vino Hayashiによる、イタリアの「地酒」の最高峰であるDOCG銘柄のワインと、生産地の旅情報を掲載したマガジン【月刊DOCG】を2019年3月から発行しています。約5年で全74銘柄を網羅する予定。メジャーなのにマニアックなDOCGワインの旅へあなたをお連れします。ライターはイタリアソムリエ協会認定ソムリエの鶴岡 恵さん。
注文はこちらからhttps://store.vinohayashi.com/lp/docg/