イタリアワインの格付けにおいて最も厳正な規定が設けられている、いわばイタリアワインの最高峰に位置するのがDOCG(原産地呼称保証付き統制ワイン)。このプレミアムなワインと、そのワインが生まれた地を、イタリアワインの輸入・販売を手掛けるVino Hayashi発行の【月刊DOCG】の協力のもと、その一部をご紹介する特別連載が始まります。
記念すべき第一回は、北イタリアの誇り高きDOCG「アマローネ」。
アマローネを旅する
窓の外に広がるのは、棚の形に仕立てられた2m近い高さのブドウ樹たち。上から見下ろした光景は、まるで緑の絨毯を敷き詰めたかのよう。ここはアマローネの生産者、セコンド・マルコ(SECONDO MARCO)社のテイスティングルーム。
北から南へ、いくつもの谷が形成されているアマローネの生産エリアでは、丘の上のみならず、このような平地にもブドウ畑が多くみられます。
山からの冷たい風とガルダ湖からの温かい風が交差するこの辺りでは、十分に果実を成熟させるために、平地での栽培にメリットがあるというのです。
葉の陰ではいかにも重たそうな大きなブドウの房が、収穫の時を待っていました。
ミラノから列車で1時間。交通の便の良いガルダ湖はヨーロッパ人にとって長期休暇を楽しめる絶好のロケーションの一つで、ウォータースポーツも楽しめる人気のリゾート地。
アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ DOCGの基礎知識
イタリア北東部に位置するヴェネト州のワイン生産量は、国内No.1。中でも州随一の“誇り高きワイン”といわれるのが、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ(ヴァルポリチェッラ地域のアマローネ)です。
ドライフルーツやタバコ、スパイス、ビターチョコレートなどの複雑な香りと凝縮感のある力強い味わい、優雅で長い余韻が印象的で、イタリアワインの中でもアパッシメント(※)由来の唯一無二の味わいは世界中で高く評価されいます。
法定アルコール度数は14%以上。実際には15~16%もあるものが多くみられるのも、アマローネの特徴。10年、20年、30年…という長期熟成のポテンシャルを持つ偉大な銘柄の一つとして今、世界中のワイン好きを虜にしています。
東西に広がる生産エリア
東はカッツァーノ・ディ・トラミーニャから西はサンタンブロージオまで、その距離およそ25㎞。アマローネの生産エリアは、東西に長く伸びるようにレッシーニ山脈の裾野に広がっています。
中でも西側エリアには、古くからアマローネを造っていたクラッシコ(Classico)と呼ばれる特定の地区があります。アマローネの中でもクラッシコを名乗れる地区はごく一部で、それ以外の、新しくワイン造りをはじめたエリアと区別されています。
ガルダ湖に近いクラッシコ地区のワインは、湖から来る気候風土の影響もあり、しっかりした骨格を持ちながらもエレガントで洗練された味わいに仕上がります。
一方で、それ以外のエリアで作られるワインは、より厚みがありコクのあるフルボディーのワインができる傾向があります。
今月のワイン
SECOND MARCO Amarone della Valpolicella Classico DOCG(セコンド・マルコ アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ クラシッコ)
丁寧に収穫したブドウを120日間アパッシメントさせた後、長期のマセレーションを施したワイン。その日数は90日間以上。破天荒とも言えるマルコさんのこだわりが、他のワインにはない深みを生み出しています。その後、5,000ℓの大樽で3年半~4年の熟成、更には瓶内で1年熟成を行った上でリリースしています。
熟れた果実、プルーンやチェリージャム、シナモンやナツメグといったスパイス、鉛筆の芯のような香り。余韻にはセージのようなハーブのニュアンスがあり、アマローネならではの清涼感も感じられます。酸味、旨味が凝縮され、力強いながらもエレガント。カンベロ・ロッソ誌最高評価トレ・ビッキエーリを獲得。
【月刊DOCG】とは?
希少で個性豊かなイタリアワインの輸入・販売を行う株式会社Vino Hayashiによる、イタリアの「地酒」の最高峰であるDOCG銘柄のワインと、生産地の旅情報を掲載したマガジン【月刊DOCG】を2019年3月から発行しています。約5年で全73銘柄を網羅する予定。メジャーなのにマニアックなDOCGワインの旅へあなたをお連れします。担当ライターは鶴岡 恵さん。