トスカーナを訪れたら外せない伝統料理といえば、「パッパ・アル・ポモドーロ(Pappa al pomodoro)」。パッパとは子供が食事のことを呼ぶ「まんま」のような意味合いで、古く硬くなったパンをトマトで煮込んだ料理です。
日本では、世界から要人がやって来ると、どんな食事をしたのか話題になりますが、日本のように食文化を誇りにしているイタリアも同じで、世界から要人がやってくると何を食べたのかが話題になります。2015年にドイツのメルケル首相がフィレンツェを訪問した際の食事で提供されたが、まさにこの「パッパ・アル・ポモドーロ」。メルケル首相も気に入られたそうですが、要人に食べてもらいたいほどトスカーナの人たちが誇りに思っている一品なのです。
ちなみにこのパッパ・アル・ポモドーロ、なんと「Viva La Pappa Col Pomodoro(パッパ・アル・ポモドーロ万歳」という歌にまでなっているんです!リタ・パヴォーネ(Rita Pavone)が歌うこの曲は、思わず口ずさんでしまうノリノリで明るいポップな曲調。
今回パッパ・アル・ポモドーロのレシピを紹介してくれたのは、生粋のフィレンツェ市民で、料理が大好きというマンマ、ベアトリーチェ・セッラさん。
「15歳の時から料理をしているのだけど、昔っから料理が大好きなのよ。旅行に出かけて美味しいものに出会ったら、その料理のレシピを調べて自宅で再現してレパートリーにするようにしているの。」
料理上手だったお母さんから受け継いだトスカーナの伝統料理レシピ本は今でも大切に愛読し、このレシピをベースに自分流にアレンジしているのだそうです。「トスカーナ料理ならどれでも任せて!」というベアトリーチェさんに、自慢のパッパ・アル・ポモドーロを作ってもらいました。
料理好きのフィレンツェ在住マンマ直伝!「パッパ・アル・ポモドーロ」のレシピ
余って硬くなったパンでつくる、エコロジーでエコノミーな食事でもあるパッパ・アル・ポモドーロはまさに庶民の味。冷めても美味しく、作り置きもできます。ベアトリーチェさんはトマトにもこだわり、使うのは「フィオレンティーノ(フィレンツェのという意味)」という種類のトマトです。トスカーナの特産品の塩が入っていないパンを使るのが定番ですが、日本では手に入りにくいため、バケットなどで代用してください。その際にも、最低1日は置いて、硬くなったものを使用するのがポイントです。
Pappa al Pomodoro(トマト煮込みパンのおかゆ)
<材料(4人分)>
・トマト(フィオレンティーノ) 800グラム
・野菜スープ(にんじん、たまねぎ、セロリ、イタリアンパセリで取ったダシ。市販の野菜ブイヨン代用でもOK) 1リットル
・パン(塩なしのトスカーナのパン。最低でも1日置いて硬くなったもの)500グラム
・エシャロット3つ(またはネギ1本)
・にんにく 1片
・エキストラバージンオリーブオイル 大さじ8
・塩こしょう 適量
・バジル 10枚程度
<下準備>
①野菜スープを火にかけ、暖めておく
②トマトを湯剥きして、1センチ幅程度に切っておく
<作り方>
①エシャロット(またはネギ)をみじん切りにする
②鍋にオリーブオイルを入れて弱火にかけ、エシャロットとにんにくを丸ごと入れてを炒める。
③炒めている間にパンを1センチ幅程度にカットする
④エシャロットに火が通って少し色づくまで炒めたら、トマトと塩コショウを加えて15分程度煮込む
⑤温めておいた野菜スープを④の鍋に加え、塩とこしょうも加えてさらに10分程度煮込む
⑥バジルを加え、さらにパンを少しづつ⑤の鍋に加える
⑦時々かきまぜて、様子を見ながら少し液体が残る程度にまでパンを加え、さらに5分煮込む
⑧火を止めてから蓋をして、そのまま2〜3時間置いておく。食べる前に全体をしっかりかき混ぜて、もう一度火にかけ温まったら完成
⑨食べる直前にオリーブオイルを回しかけるとさらに美味しい
パッパ・アル・ポモドーロはトマトの酸味が爽やかな、とても素朴で優しい味わいで、冷めても食べられるため、暑くて食欲が無い時や、ちょっと体調が優れないという時にも食べることができます。イタリア旅行中に旅の疲れが出た時や、美味しいワインを飲みすぎた時などにもさらりと食べられるので、旅行中にも是非食べてほしい一皿。イタリア旅行ができない今こそ、ご自宅でイタリアの味に挑戦してみてはいかがでしょうか。