日本食材を紡ぎ美味しさを奏でるイタリアン『オルケストラ』参宮橋にオープン

9月1日、小田急線の参宮橋駅から1分の場所に、新たなイタリアンレストラン『Orchestra(オルケストラ)』がオープンしました。重厚感ある扉の前に立つと薪焼きの良い香りがし、ドアを開けると、クラッシック奏でる温かな空間が迎えてくれます。

シェフを務めるのは、トラットリアからイノベーティブな料理まで、イタリアで7年間経験を積んだ小川慎二氏です。小川氏は、イタリアではモデナのミシュラン一つ星『ストラーダファチェンド』、ミシュラン二つ星『リストランテサンドメニコ』に勤務。帰国後は目黒の『リナシメント』にて活躍されました。

＜目次＞

オーケストラのイントロを奏でるのはピアノのボックスに入った前菜
主役は出汁！日本の旨味とイタリアの旨味が融合した詰め物パスタ
目の前で作り出されるのはイタリアで手に入れた絶品ラヴィオーロ　
メインは日本初とも言える扉付きの薪窯で焼いた肉料理

オーケストラのイントロを奏でるのはピアノのボックスに入った前菜

はじめに登場したのは、ピアノ塗装で仕上げられた黒いボックス。そうです、店名はイタリア語でオーケストラを意味する『Orchestra(オルケストラ)』でした。小川シェフがイタリア修行時代に触れた音楽と、「一皿を作り上げるのに数人が同時に手を動かし、集中して仕上げていく様は、まるで100人で壮大な曲を演奏するオーケストラのようだった」という鮮明なイタリアの厨房での記憶がこの店名に繋がったそうです。

『オルケストラ』では、その枠組みをさらに広げ、生産者・料理人・サービス人・皿やカトラリーを作る職人など、レストランに関わる人達と完成させた最高の料理を楽しんでもらえるような、一体感のあるレストランを目指しています。

優しいピアノの演奏から始まるかの如く、運ばれてきたピアノ塗装で仕上げられたボックスの蓋を開けると、中にはピアノの鍵盤のように並んだ白と黒の器。ここには、日本食材を使い作られた、ピアディーナやスクアックエローネ、トルテッリーニなどのイタリアの代表的な料理が並びます。

コースが進むにつれ、まさにオーケストラの演奏のように、強弱のついた盛り上がりがあり、最後まで飽きずに楽しめる構成になっています。

主役は出汁！日本の旨味とイタリアの旨味が融合した詰め物パスタ

「トルテッリーニインブロード」は、日本の出汁文化とイタリアのパスタ文化を融合させた一皿。鶏肉を詰めた極小のトルテッリーニは、つるんとした食感も残していて、口の中で踊るよう。パスタと具材のバランスも良く、トルテッリーニを噛むと、優しい鶏肉の味わいと幸福豚の脂の甘味がしみじみと感じられます。

「トルテッリーニインブロード」の主役ともなる重要な要素は”出汁”。毎朝時間をかけて仕込みます。長崎県出身の小川シェフは、五島列島の焼きあごをメインに、昆布、鶏節、長ネギ、パルミジャーノレッジャーノの皮、生ハムを使い、6時間ほどかけて出汁を取り、熱々のスープをトルテッリーニにかけていきます。最初に舌に触れるスープからは、焼きあごの力強い旨味がしっかりと感じられるスペシャリテ。

目の前で作り出されるのはイタリアで手に入れた絶品ラヴィオーロ　

厨房を囲むようにL字型に配置された8席のカウンターの中にあるアイランドでは、小川氏がイタリアの『リストランテサンドメニコ』でいくつ作ったかわからないというスペシャリテ「ラヴィオリリコッタ法蓮草卵黄黒トリュフ」を、ライブ感溢れる演出で作ってくれます。魅せるポイントのひとつです。

ラヴィオーロは目玉焼きほどの大きさでしょうか。中心にスプーンを入れると、中に仕込んである半熟の卵黄がとろ〜り流れ出してきます。刻んだ法蓮草の入ったまろやかでミルク感のあるリコッタチーズ、そして卵と抜群の相性のトリュフが交わり、幸せ感半端ない。仕上げは溶かしバターをかけてリッチな仕上がりでした。

メインは日本初とも言える扉付きの薪窯で焼いた肉料理

肉料理は、薪火で焼く厳選肉。熾火で柔らかく火入れし、肉汁を閉じ込め旨味を逃しません。池田牛のサーロインをいただききましたが、ジビエや豚肉など3種からチョイス。

オーブンには扉を設置し、カウンターへの放熱の配慮も欠かしません。また料理を盛り付ける器も有田のカマチ陶舗でオーダーメイド。ここにも楽器の色合や型などが想起できるようなデザインで、BGMも料理に合うクラッシックがチョイスされています。

世界観とコンセプトを考え抜き、産地を巡り、また自らの経験だけでなく故郷へのオマージュをも込めた熱量は、食べる側にもしっかりと伝わります。コースは10品で構成されていますが、イタリアでの料理経験もしっかり織り込まれたコースは、まさに小川シェフ自身の交響曲。薪の香りで迎えてくれる参宮橋のステージで、名店を渡り歩いた矢島聡支配人のチョイスする、イタリア産にこだわらない、自然派やフランス産や古酒に至るまで幅広いラインナップのワインと共に、ここでしか食べられないイタリア料理が堪能できます。