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イタリアワイン界のニューウェイブ、愛されキャラ全開のお店 【イタリアワインと私】Vol.3 阿部誠治さん(イタリアワイン阿部) | ワインバー 吉祥寺

イタリアワイン沼に浸かる喜びを体現するソムリエ

イタリアン関係の方に会うと、

「(いいイタリアンレストランはたくさんありますが、その中でもとくに)お好きなイタリアンレストランはどちらですか?」

「(イタリアワインに強い)おススメのソムリエはどなたですか?」

といった質問するのが習慣になってるんですが、いろんな方から立て続けにおススメされたのが、「イタリアワイン阿部」の阿部誠治さんでした。

イタリアワイン阿部のFacebookを見ると、「異彩を放つ」をいう形容がまったく誇張ではなく、夏には流しそうめんとワインのイベントを企画したり、ビジュアルや文章がキレキレだったり、はじけています。まさにイタリアワイン界のニューウェイブの極北です。

イタリアワイン阿部 Facebook https://www.facebook.com/Italiawineabe/

JR吉祥寺駅から徒歩で10分くらい、京王井の頭線だと、井の頭公園駅から徒歩30秒の至近距離ある「イタリアワイン阿部」。

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真っ白い店内には、阿部さん作のポスターや小物などがディスプレイされ、なんだか中野ブロードウェイに来たような錯覚がしないでもありません。都心のワインバーの、ちょっと緊張感を強いられるようなオシャレ空間とはちがって、とても居心地のいい雰囲気です。

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実はこの空間デザインを手がけたのは、デザイナー佐藤オオキさん(nendo)で、阿部さんの高校時代からのお友だちなのだそう。「阿部」のロゴも、佐藤オオキさんによる手書きのレタリング。

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阿部さんのキャラの立った写真を見ると、「ど、どんな方なんだろう・・・」とちょっビビるかもしれませんが(笑)、とても穏やかでフレンドリーで、イタリアワインについての尋常ではない知識と愛情をお持ちのソムリエなので、まだ行ったことがない方も安心して行ってくださいね。

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深い深いイタリアワイン沼に沈む快楽を体現していて幸せそうな阿部さんのお話を聞きながらいただくワインとお料理は、最高です。

Q1. 現在のワインのお仕事について

東京でありながら「0422」市外局番という、三鷹市・井の頭公園ビサイドで、イタリアワイン専門バー・ワイン&食材店を運営。生活との密着度が高いイタリアの食文化ならではの「毎日飲んでも気軽で美味しい、日々のちょっとした贅沢」だったり、競技という場の経験もある「熟練ソムリエの審美眼」を感じてもらえるような場所でありたいと思っています。

Q2. イタリアワインとの出会いは?

学生時分、世はすっかり「イタ飯&シェフ」ブームもあり、当初はイタリア料理人を志望していました。当時からワイン(98年の赤ワイン大ブームの時代です)は好きで、「ソムリエバッジぐらい持っているシェフ」が目標でしたが、才能もなく挫折(笑)。今に至るのですが、面接に伺った「カノヴィアーノ」(代官山)にて、(当時)支配人の城倉隆さんに「調理よりもサーヴィスには興味ない??」とお誘いいただいたり、コック志望で最初に入った「キアッケレ」(代官山)では酒見嘉亮さん(現「ラ・ビスボッチャ」)、永島農さん(現「HIBANA」オーナー)、羽賀大輔さん (現「Fegato Forte」オーナー)といった凄腕のサーヴィスマン・ソムリエに囲まれていたり、と、どう転んでも「イタリアワインを扱うソムリエ」の方が縁があったみたいです。

Q3. イタリアワインの魅力は?

古代ギリシャ人に「ワインの大地」と称された圧倒的な気候風土の優位&多様性に加え、長い歴史や人の営みによる文化が加わるイタリアワインの世界感は「汲めども尽きない」恐るべきボリューム…。一個一個のワインに「強制的にローカライズ」させられるような「ピンポイントの旅情感」がありながら、「ヨーロッパ」ならではの異文化とのクロスオーバーを感じさせる要素などもそこかしこに…。そんなこんなをどんどん掘り進めてると他地域までは手はもうまわりません(笑)。

相当オタク要素の強い阿部、約20年イタリアワイン使いをやっていますが、この沼から脱出できそうな雰囲気はますます無くなっているように思います(笑)。

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Q4. 阿部さんの好きなイタリアの場所はどこですか?

ワイン畑と自然の風景、人の介在する景色が「黄金比ともいえるバランス」で配合されている、キアンティクラッシコのエリアの風景が、一番グッと来るんですが、とりわけ「カステッリーナ・イン・キアンティ」あたりの一層開放感のある風景は一際グッと来ます。

また、「ワイン生産地」を周ることが多いがゆえに、「そうで無い場所」で過ごすのは、かなりゼイタクに感じることもあって、ベッタベタですが、「ヴェネツィア」はゴハンがあれだけイケて無いにもかかわらず、大好きだったり致します。

Q5. とくにオススメのイタリアワインを1本、挙げるとしたら?

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ランブルスコ・ディ・モデナ カンティーナ・デッラ・ヴォルタ

どんなワイナリーにも美意識やストーリーがあると思いますが、(もちろんプロとしても)プライベートで阿部が愛して止まないワインって「アイデンティティ」だけでなく、「クリエイティビティ」や「オンリーワンなデザイン」が充満するワインだったりします。とくに「オンリーワンなデザイン」で「まだこんなの出てくんのかよ! どんだけ恐ろしいんだ!! イタリアワイン沼!!!」みたいなワインに一番興奮したり致します。

言うまでもなく「それら全盛り」がコチラ、「カンティーナ・デッラ・ヴォルタ」。「イージー&ジャンク」な面白さで世界を席巻したイタリアが誇る赤の発泡ワイン「ランブルスコ」。品種的にファミリーがいくつかあるのですが、その中で「酸っぱい」と冷や飯食い的ポジションだった「ソルバーラ品種」。しかしその「酸と鮮やかな果実風味」は鍛え上げた素材と、卓越した醸造・瓶内二次発酵方式による注意深い仕事で「三ツ星レストランにこぞってオンリストされる逸品」に結実するという、「偉大なるブレイクスルー」を起こしました。

いまでは大手・小規模生産者がこぞってフォロー商品開発に躍起ですが、曽祖父の時代から続く醸造一家の4代目「クリスティアン・ベッレイ」が友人達と資金を集めて2009年に立ち上げて以来、こうした事態をわずか数年で達成した、というストーリーも痛快&刺激的で。凝り固まった「伝統的ワイン生産国」にはナカナカ無いこうしたワインがざっくざくなのも、「イタリアワインの恐るべき豊饒性」なのかな、と存じます。


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PROFILE
阿部誠治(あべ・せいじ)
イタリアワイン阿部 オーナーソムリエ
早稲田大学第一文学部、国立・エコール辻卒業後、代官山「キアッケレ」にてキャリアをスタート。2001~2010年、目白・フォーシーズンズホテル椿山荘東京「イル・テアトロ」に在籍、シェフソムリエとして多くの経験を積む。2010~13年、イタリアワインバーの老舗中の老舗、渋谷区東「バール&エノテカ インプリチト」の(三代目)ディレットーレを在任。2014年、三鷹市井の頭に「イタリアワインと食材 阿部」を開業。
2007年 ヴィニタリー2007国際コンクール ワインリスト部門 最優秀ワインリスト作成
2008年 第六回JALUXワインアワード 準優勝
2011年 第五回JETCUPイタリアワインベストソムリエコンクール 準優勝

Wineワイン、オリーブオイル、パスタなど、イタリア食材のセレクトショップに、ワインバーを併設。葡萄の壁画は、陶芸家・岳中爽果さんによるもの。

SHOP DATA
イタリアワイン阿部
●住所:東京都井の頭3-31-1 井の頭レジデンス1階
●営業時間:(月~金)17:00~23:30(L.O.23:00)
(土)13:00~23:30(L.O.23:00)
●定休日:日曜日、第2月曜日
●TEL:0422-29-9106
●公式サイト  https://italiawineabe.jp/
●Facebookページ  https://www.facebook.com/Italiawineabe/

◆Q&Aのテキスト&写真/阿部誠治

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