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ここはイタリアワイン好きの楽園。イタリアでソムリエ修業18年の達人【イタリアワインと私】Vol.4 齋藤貴子(「オステリア スプレンディド」シェフソムリエ)| イタリア 料理

イタリア各地でワインとサーヴィスを学んで帰国

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イタリアワイン好きが夜ごとに集う「バール&エノテカ インプリチト(bar e enoteca implicito)」、そしてその地下にあるリストランテ「オステリア スプレンディド(Osteria Splendido)」のシェフソムリエをつとめる齋藤貴子さん。

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フレンドリーな人柄に触れると、一度会っただけでも昔からの知り合いのように親しみをもって、すっかりファンになってしまう、そんなチャーミングな齋藤さんですが、2015年に帰国するまでの約18年間、イタリアの名立たるリストランテにソムリエとしてつとめ、ワインのエキスパートとしての道を極めてきたウルトラ本格派。

齋藤さんのイタリアでの楽しいエピソードの数々を聴きながらワインを飲む時間は、至福のひとときです。

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左から、「バール&エノテカ インプリチト」「オステリア スプレンディド」オーナーの松永聡さん、シェフソムリエの齋藤貴子さん、シェフの小早川大輔さん、スーシェフのジェルマン・ルイス・ジェノヴェーゼさん。

Q1. 現在のお仕事について

渋谷区東「バール&エノテカ インプリチト」「オステリア スプレンディド」でシェフソムリエをしています。

同じ「食べる・飲む」でも、家で食べるときと外で食べるときというのは全然違いますよね。以前、フィレンツェのレストランで働いていたとき、友人のフィレンツェ人が食べに来てくれて、後日、その友人が「すごく楽しくて、店を出たとき、一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。こんなに住み慣れた街なのに」と言ってたんです。すごく嬉しかったですね。本当に楽しんでくれたんだなぁ、と。ずっとその言葉が残ってます。

お店に来てくださるお客様には「日常に近い非日常な空間を味わってもらえたら」と思っています。

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Q2. イタリアワインとの出会いは?

私はもともと「イタリア」が好きでスタートしました。本で読んだ古代ローマ帝国の豪奢な饗宴が印象的で。日本でもワインスクールに通いましたが、当時の私にとって、イタリアに行くための後付け理由のようなものでした。

渡伊して2ヵ月目。「やりたいこと」と「できること」の境目でアップアップしていた頃。同居人がワインを持ってきてくれまして。最高級クラスのワインだったんですが、そうとは知らずに口にしました。衝撃の塊でした。

人懐こそうに見えて実は保守的。激しい陰と陽を持っていて、華やかで繊細、狡猾。果てしない広がりと深みと奥行き…。

そのワインを飲んだとき、「うわ、本当にイタリアが好きで良かった」と思いました。それが「真正面からイタリアワインに出会った瞬間」でした。落とし穴に落ちたようなものです。

Q3. イタリアワインの魅力は?

現在でこそイタリアという一国ですが、たった150年程前までは、ほかのヨーロッパ諸国の影響を受けたそれぞれの王国、公国、共和国だったわけで、各自の文化があります。

その全土でさまざまな個性をもつワインが、何千年もの間、毎年作られているわけです。北部の雪深い村から南の小さな島まで、その土地ならではの料理とワインが当たり前のように出てきます。

その多様性と生活密着性。食べること、飲むことが文化そのもの。それがイタリアワインの魅力です。

Q4. 齋藤さんの好きなイタリアの街、村はどこですか?

リグーリア州の人々の気質が肌に合っていたと思います。リグーリア州のサヴォーナにあるリストランテ「「La Fornace di Barbablu(ラ・フォルナーチェ・ディ・バルバブルー)」で働いていたことがあるんですが、みんなとても親切で温かく、でも近づきすぎない適度な距離感を保っている、その付き合い方がとても心地よかったですね。

Q5. とくにオススメのイタリアワインを1本、挙げるとしたら?

ブルネッロ ディ モンタルチーノ

「ブルネッロ ディ モンタルチーノ リゼルヴァ 1988 カーゼ バッセ」(写真は別ヴィンテージ)。

前述した「イタリアワインに真正面から出会った瞬間のワイン」です。高価なので毎日飲めるワインではありません。いろいろな事情から希少なワインになっています(「ブルネッロ ディ モンタルチーノ」と銘打ったワインは2006年ヴィンテージで最後になっています)。ですが、この優雅さと永遠感は絶品。後悔しないワインです。


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PROFILE
齋藤貴子(さいとう・よしこ)
「オステリア スプレンディド」シェフソムリエ
1997年、渡伊。語学学校に通いつつ、2000年、イタリアソムリエ協会(AIS)認定ソムリエ・プロフェッショニスタ取得。その後、ミラノ「Giannino(ジャンニーニ)」、フィレンツェ「Enoteca Pinchiorri(エノテカ・ピンキオーリ)」、サヴォナ「La Fornace di Barbablu(ラ・フォルナーチェ・ディ・バルバブルー)」、チェルヴェーレ「Antica Corona Reale(アンティカ・コローナ・レアーレ)」などイタリア各地のレストランに勤務。その間、キャンティクラシコのアンティプリマ、グルメガイド『ガンベロロッソ』や『エスプレッソ』のプレスへのサーヴィス、エルブスコ「Gualtiero Marchesi(グアルティエーロ・マルケージ)」でのサーヴィス、フィレンツェ大学醸造学科を経て、2015年、帰国。2017年より「オステリア スプレンディド」シェフソムリエ。

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photo:bar e enoteca implicito

INFORMATION

バール&エノテカ インプリチト(bar e enoteca implicito)

●住所:東京都渋谷区東4-6-3 Belle Air 1F
●TEL:03-5774-4433
●営業時間:月~金曜日 18:00~26:00、土曜日 18:00~25:00
●定休日:日曜日
●Facebookページ https://www.facebook.com/bar.e.enoteca.implicito
2003年オープン。イタリアワイン好きから熱烈に支持されるバーであり、また優秀な人材(「イタリアワイン阿部」の阿部誠治さんなど)を輩出しています。

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オステリア スプレンディド(Osteria Splendido)

●住所:東京都渋谷区東4-6-3 Belle Air B1F
●公式サイト http://www.osteria-splendido.jp/
●予約サイト(一休.com) https://restaurant.ikyu.com/109249/
インプリチトから螺旋階段を下りていくと、そこには秘密の花園のようなリストランテが。2007年オープンの「オステリア・スプレンディド」は、2017年4月に小早川大輔シェフが加わり、リストランテとして新装オープン。イタリアの「ヴィッラ・クレスピ」「サン・ウベルトゥス」「カーザ・ペルベリーニ」などで研鑽を積んだ小早川シェフと、齋藤貴子シェフソムリエが織りなすイタリア料理とイタリアワインのアッビナメントを堪能できます。

◆Q&Aのテキスト/齋藤貴子
◆写真/アレッシオ・ミラネスキ photo:Alessio Milaneschi

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