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世界イタリア料理週間に合わせて開催された、世界の美食家から賞賛されるエミリア・ロマーニャ州の最高級の食が理解できるセミナーって?

2023年11月13日から11月19日までは「世界イタリア料理週間(Settimana della cucina italiana nel mondo )」です。これは、世界各国のイタリア大使館、領事館、イタリア文化会館、イタリア貿易振興会、ENIT(イタリア政府観光局)、在日イタリア商工会議所のネットワークが推進する、イタリア料理と高品質食品のプロモーションを目的とした全世界で展開される食をテーマにしたイベントのこと。


今年のテーマは「イタリア料理と食卓を囲んで:味覚とウェルネス(A tavola con la cucina italiana : il benessere con gusto)」。健康的で質の高い食事の代名詞である地中海料理と、正しく健康的なライフスタイルとして理解されるウェルネスとのつながりを強調するものだといいます。


在日イタリア商工会議所は、11月14日にイタリアのエミリア・ロマーニャ州と連携したセミナー「イタリア料理の美味と美観 / エミリア・ロマーニャ州の最高級の食とペッレグリーノ・アルトゥージ」を開催しました。世界中の美食家たちから賞賛されているイタリア屈指の食の都として名高いエミリア・ロマーニャ州は、イタリア共和国北東部に位置する州で、州都はボローニャ。州名は、州西部から中部にかけての「エミリア地方」と州東南部の「ロマーニャ地方」を結んだものです。


セミナー終了後に振る舞われたパルミジャーノ・レッジャーノとバルサミコ酢

エミリア・ロマーニャ州は食通の州として知られており、パルマの生ハムやチーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ)の他、手打ちパスタ、トルテッリーニ、ソーセージ、モデナのバルサミコ酢など美味な食材が豊富となっています。日本でもお馴染みのラグーソース「ボロネーゼ・パスタ(ミートソースのパスタ)」はこの州の州都であるボローニャ発です。


手打ちパスタ実演の様子
エミリア・ロマーニャ産のワイン

世界中から愛されているイタリア料理は、カーザ・アルトゥージ財団の努力も実り、ユネスコ無形文化遺産の候補に挙がっています。エミリア・ロマーニャ州は、夢のようなグルメとワインのルートを持ち、品質を認証されている数々のブランド、唯一無二のガストロノミーの伝統を誇る、知って楽しむ価値のある地域です。


ペッレグリーノ・アルトゥージ著『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』

世界中の美食家たちを唸らせるイタリア料理をよく理解できるのが、グルメ関連書籍出版史上初となる世界中の多くの言語に翻訳された、ペッレグリーノ・アルトゥージが執筆した『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』です。2019年に日本語にも翻訳された本書は、古くからイタリアに根付く食文化、その土地ごとに生産、消費される食材についての物語を伝えています。


「イタリア料理の美味と美観 / エミリア・ロマーニャ州の最高級の食とペッレグリーノ・アルトゥージ」セミナーの様子

世界イタリア料理週間に合わせて開催されたイタリア料理を知ることのできるセミナー「イタリア料理の美味と美観 / エミリア・ロマーニャ州の最高級の食とペッレグリーノ・アルトゥージ」には、エミリア・ロマーニャ州農業・農業食品・狩猟・漁業会議員のアレッシオ・マンミ氏や、カーザ・アルトゥージ財団代表のライラ・テントーニ氏、『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』監訳者の工藤裕子氏、イタリア料理アカデミー東京支部のエマヌエラ・オリギ氏、法政大学教授の木村純子氏らがご登壇。ペッレグリーノ・アルトゥージについてや、アルトゥージと日本文化の関わり、またDOPとIGP認定食品の日本における価値などをテーマにセミナーが進められました。


カーザ・アルトゥージ財団代表のライラ・テントーニ氏

カーザ・アルトゥージ財団代表のテントーニ氏は次のように語っています。「イタリアにおいて家庭料理、それはイタリア料理のほとんどだというふうに考えられますが、それについて話すときにはアルトゥージ、この著者の当時の取り組みを語らないわけにはいきません。彼の作ったこのレシピ本はイタリアにおいても、それからイタリアだけではなくて全ての家庭の中に入っていった重要な本だからです。


当時言われていたことは、最も素晴らしい本で現実的、かつ最も美しい本であるということです。他の料理本を全て棚に上げてしまうような素晴らしい本だということで、アルトゥージは食におけるダンテであるというふうにさえ言われました。


このアルトゥージの本なんですが、色々と新しい状況が出てきて向かい風がたくさんある中にも関わらず、非常に長い間ベストセラーセラーを続けています。その中には伝統と同時に革新さというのがあって、現在の逆風にも耐えてきたと言えます。なぜこの本がこれだけ長生きしてきたのか、長寿の秘訣というのを考えてみる必要があります。たかが料理本ですがされど料理本で、そういう意味では過去になかった新しいタイプの本だと言えるでしょう。


彼が強調しているのはシンプルで美味しい料理、そして良い品質で旬の食材を使うということ。従って、伝統に基づきながらも自分自身の解釈を自由にしていいと言っています。例えばレシピの47番のミネストローネは、自分の好きなように色々と味を変えてもいいし、皆さんの伝統や家庭、畑にある材料に合わせてレシピを変えていいですよ、という趣旨のことを述べています。


古代のローマ人たちが言ったように、美味は最も大事なことであり、それはみんなが求めること。そして、そのために競争性があり、経験があり、文化があるということが言われています。もう一つ重要なことですが、この美味というのは美観とも呼応しています。つまりこれはアルトゥージが強調しているように、ディテールに関するこだわり、あるいは簡単ではあるけれども、非常に繊細であり、その中では特に分量であるとか、調和といったようなことを重要視すること。それが、経験に基づいたこの知識が生まれることに繋がります」


エミリア・ロマーニャ州農業・農業食品・狩猟・漁業会議員のアレッシオ・マンミ氏

エミリア・ロマーニャ州農業・農業食品・狩猟・漁業会議員のマンミ氏は「この世界イタリア料理週間で、エミリア・ロマーニャ州を紹介するという機会を得たとき、私達はそれを日本で行うということについて全く疑いを持ちませんでした。なぜなら、イタリアと日本は様々な点で似ていると感じるからです。特に料理については、その素晴らしい料理を評価し、それに対して価値を与えるということについては、イタリアも日本も非常に似ている点が多いと思います。


イタリア料理は、(2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたように)現在ユネスコ無形文化遺産に登録されようとしていますが、そのイタリア料理を考える上でエミリア・ロマーニャ州というのはなくてはならない存在です。イタリア料理にとってエミリア・ロマーニャ州が必要であることと同じように、その地域においてこの偉大なアルトゥージが生まれたということは偶然ではないと感じています。


エミリア・ロマーニャ州は「フードバレー」という言い方をされています。なぜならば、地理的表示(GI)がイタリアだけではなくヨーロッパの中で一番多い地域だからです。地理的表示というのは、そもそもどういった意味を持つのでしょうか? 場合によっては何千年にもわたる、少なくとも何世紀にもわたるような長い伝統の中に基づいた、そういったものであるということです。もう一つの特徴としては、作られる特産物がその土地に根ざしているということ、その地域の産物であるということです。ですからその地域ではないものが混じることはなく、そういう意味では、その地域にオーセンティックな産物だということが言えます。


また他の特徴としては、トレーサビリティがはっきりしているということ、それから品質や様々な条件に関して厳しい水準をクリアしたものであるということです。このような産物があることで、町から離れた中山間地域などにおいても、農業がきちんと機能をし、彼らにとって生活の糧になるという、そういう重要な意味も持っています。


そういう意味では、こういった地理的表示の産物について、私達州政府が国の一つの機関として、そしてまた地域に根ざした地域の公的機関としてこれらの商品を守ることが重要です。ですが、こういった特色があってそれが素晴らしいクオリティを持っているがゆえに、逆に模造品や様々な嘘も生じます。これらから地理的表示を受けている本物の商品を守ること、そしてこれは生産者だけではなく、それを信じて食する最終消費者にとっても重要な権利でもあるというふうに考えており、これらが私達の重要な公的機関としての役割となっています。


最後に、私にとって飲食とは何か、我々にとって飲食とは何かを考えてみると、今日のタイトルにもなっているように、美味であり美観であり、そして高品質であること。それはただ食べ物として優れているだけではなくて、食を通じて多くの文化を持った違う人たちが同じ時を楽しむ時間を共有することが、最終的には一番大事だということを強調したいと思います」と述べました。


世界中の人々から愛されているイタリア料理が、ユネスコ無形文化遺産になることを願って、イタリア料理についてこれからも注目していきたいものです。