FOOD

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わざわざ足を運びたい!
都心から少し離れたレストラン「ドンブラボー」で、
お腹と心が満たされるイタリアンを堪能

全国から国領へ、わざわざイタリア料理を食べるためだけにやってくる!

その美味しさが評判を呼び、全国のイタリア料理通や料理人たちが、調布市国領にわざわざ足を運ぶイタリア料理店があります。
その名も「Don Bravo(ドンブラボー)」
ストンっと体になじむような料理は、食べ終わった後に心にぽっと温かな明かりが灯った気分になり、なんだか幸福感で満たされるレストランです。

ここで腕を振るうのは、オーナーシェフである平雅一氏。
広尾「アッカ」に勤務後、渡伊しフィレンツェ「ラ・テンダ・ロッサ」(ミシュラン 二ツ星)、ミラノ「サドレル」(ミシュラン 二ツ星)、ラグーサ「ドゥオーモ」(ミシュラン 二ツ星) 等で3年間修業。帰国後、広尾「リストランティーノ バルカ」現代官山「TACUBO」に勤務し、三宿「ボッコンディビーノ」でシェフを務め、2012年6月に生まれ育った国領で「ドンブラボー」をオープンしました。

オーナーシェフである平雅一

新宿から京王線で約30分電車にゆられベッドタウン 国領へ

国領駅を降りると駅前のロータリーが整備され、駅前にある商業施設をはじめ全国展開をしているスーパーなどがいくつか点在し、いかにも住みやすそうな東京のベッドタウンという印象を受けます。適度な賑わいもあり、「ただいま」と言いたくなる街です。

「ドンブラボー」へはそんな国領駅から徒歩で3分ほど。この美味しいオーラを放つ入り口に到着します。

レストラン入り口

店内に入るとまず目につくのは厨房の奥にあるピザ窯。少し照明の落とされた店内で、揺れる炎と薪の香りが心地よいです。ここでもまた、「おかえりなさい」と迎えられているように座った瞬間から寛いでしまいます。

厨房の様子

この窯は食事のシメに出されるピザだけのもの。時折料理にこのピザ窯の力を活用することがあるものの、シメピザのためだけに毎日火を灯すので、贅沢さこの上ありません。そんなピザは評判を呼び、2020年6月、「ドンブラボー」から2分ほどの場所に「CRAZY PIZZA(クレイジーピザ)」というピザ専門店まで作ってしまったほど。このピザ店の評判も上々とのことですが、長くなるのでまた後日ご紹介します。

ピザ窯

ゆったりした雰囲気でも料理はリストランテクラスの最上級をめざして

メニュー

店のメニューは2ヶ月サイクルで変わります。おおよその構成は決まっており、決して食べ疲れせず、体が自然に美味しいと感じるリズムで構成されています。メニューを作る段階で、当然最高のコースを作り上げているわけですが、料理は日々進化し、2ヶ月後には全く別の料理構成になっていることも多いと言います。これは、季節が進めば変わっていく食材に合わせ、最高の状態で食べて欲しいという思いから。同じ野菜でも時期によってその食感や水分量が変わっていくし、その変化に応じて、野菜のカットや合わせる食材を毎日毎日変えていく。そんな日々の積み重ねを経て、平氏の「今作れるいちばん美味しいもの」が私たちのもとへ届くのです。

スープ

コースのスタートはスープで始まることが多いと言います。寒い時には温かいもの、暑い時には冷たいもの。時には生ハムメロンという王道ですが、誰もがその美味しさを知っていて、メロンの果汁がスープと同じ様に体に染みてくるようなものが登場することもあるようです。

スタートの液体は、胃袋に負担のかからない優しい食べ物から始まり、細胞が活性化します。これで食べる準備は万端です。

ブルスケッタ

次はお待ちかねの「ドンブラボー」のシグネチャーメニューにもなっているブルスケッタ。ブルスケッタといえば、家庭でも簡単に作れるバゲットの上にトマトを乗せたイタリアのカナッペですが、「ドンブラボー」のブルスケッタは、あまりにも美しく「ブルスケッタです」と言われるまでそれと気づかないかもしれません。一口で口の中に収まるそのサイズでクリエイティブに作り込まれた食べる宝石は、パンのさくっとした食感とトマトの酸味、さらには越田商店の鯖の味が入ることで力強い味わいを加え、今まで食べてきたブルスケッタとは一線を画すものとなっています。「なぜ1つなの?もっと食べたい・・・」。そんな後ろ髪を惹かれたままコースがどんどん進められていきますが、ちょっとした飢餓状態はきっとその美味しさを何倍にも脳裏に焼き付けてくれているに違いありません。

サラダ

緩急つけたリズミカルな構成となっている「ドンブラボー」のメニューは、全てスター級のメニューばかりではありません。ちょっと箸休めのような料理も時折差し込まれています。

例えばサラダ。私もメニューに「サラダ」という文字を目にした時には、メニューに載せるものなのか?と思いましたが、登場したサラダには一体何種類使っているのだろうかというほど、いろいろな食材が組み合わされています。五味のバランスがよく、それぞれの素材の旨味を発揮しながら一体感があり、サクサクと食べられてしまいます。

パスタ

イタリアンなので当然パスタも登場します。しかし、毎日の気候や食材で料理を変えていくという平氏。暑い日に食べたくなるパスタってなんだろうと考えていたところ、当日の朝にひらめいたという最高のパスタを作ってくれました。

パスタ

私が訪問したのは、ある夏の暑い日。梅肉とミントがトッピングされ、日本人ならきっと素麺と思うに違いありません。しかしながら、ドライトマトをベースに作られた冷たいスープに、カッペリーニではなく、スパゲッティーニを使い、しっかりしたコシがあります。仕上げはオリーブオイル。イタリア料理ならではのエッセンスも忘れてはいませんが、この最後の一滴の放たれる位置や微細な量までもが計算され、丁寧に仕上げられています。加えて、最後は口の中にとろっ〜っと心地よく流れ込んでくる柔らかなブッラータチーズ。この喉越しがたまりません。ブルスケッタに仕込まれた鯖もそうですが、素材を重ねていく平氏の料理は、驚くほどバランスが良いのです。素麺からブッラータチーズが出てきたら誰だってびっくりすると思うし、日本食材の代表格でもある梅とイタリアチーズのブッラータという考えたこともなかった組み合わせは、いい意味での裏切りを感じました。まるで平氏の掌の上で、もてあそばれているようでちょっと悔しいのですが、こんな嬉しい裏切りは、レストランで感じる最高の愉しみと言わざるを得ないでしょう。

食事の最後は、薪で焼いた最高のピザ

ドンブラボーの〆といえば、窯で焼いたピザと決まっています。

ピザを焼く姿

ヨーグルト菌を使い長時間かけて発酵させた自家製酵母、ホエー(乳清)、たまねぎ水などを使い、決め細かな生地には挽きたての国産全粒粉を使っているため、その旨味と香ばしさがとても印象的。食べるタイミングを見計らって焼いてくれます。

焼きあがったピザ

定番のマルゲリータは、生地の厚さや具材のボリュームなどもしっかり計算され、食後でも美味しく食べられる大きさに焼き上げられています。トマトの尖った酸味が主張するのではなく、チーズなどの他の食材と一体になり、口の中で三位一体となる美味しさです。

肉は自分で最高の状態にカットする

カトラリー

レストランのメニューに普通道具は書かれていません。「ドンブラボー」のメニューは、シンプルで食材だけを載せているものですが、肉と共に【研ぎ】という文字が書かれています。実は研ぎはナイフのことで、一週間に一度研ぎに出しているというのです。切れないナイフでは、カットしている間に肉汁が全部流れてしまうし、口当たりだってよくない。店のゆったりとした雰囲気もそうですが、細部にまで美味しく食べられる環境を作る心配りを感じ、なんだか心が綻びます。

帰り道、私は同席者たちの顔がやけに優しい表情なっているのに気づきました。それもそのはず。国領というのんびりした街のレストランで、照明の落ちた店内で薪の香りや炎のゆらぎで癒されての食事。食材の味をいかした決して食べ疲れしない五感に響く料理を流れに乗って食べているだけで、いつの間にかちょうどいいボリュームでお腹が満たされて行く。満腹になって、うっかり暖炉の前でうたた寝してしまったような幸福感に包まれるのも不思議ではありません。

料理が日々進化するレストランは、人々の心理や食材の小さな変化を捉え、今一番美味しいを引き出す努力を惜しみません。次に行った時はさらに美味しいはず。そんな期待が膨らむ国領でキラリと輝くレストランでした。

Don Bravo(ドンブラボー)

https://www.donbravo.net/
東京都調布市国領町3丁目6−43
042-482-7378
12:00~15:00(L.O.14:00) 18:00~23:00(L.O.22:00)
水曜定休