皆さんはワインのお供には何を選びますか?
日本でも未だに人気の衰えないイタリアのサラミやハム。
街中では中々手に入りにくい現地産の食品ですが、ちょっと足を伸ばしてでも手に入れたい方も大勢いらっしゃるのでは?
そんなサラミやハムに深く関わる”Arigat-EU”という新しく発足されたプロジェクト。
そのプロジェクトの一環として11月20日(火)に表参道にて開催された第1回ARIGATEU WORKSHOPに参加してきました。
今回はいくつかの人気なサラミやハム、またそれらを使った絶品レシピを紹介させていただきます。
今回は「リストランテ・ステファノ」のオーナーシェフであるファストロ・ ステファノさんがセミナーをしてくださいました。
ステファノシェフの来歴
北イタリア・ヴェネト州ヴァルドッビアデーネという町の出身。
4人兄弟の長男。
17歳から料理の世界に入る。
1999年来日。
日本で最初のイタリア人オーナーシェフである、カルミネ氏のレストランにて4年間総料理長を務める。
2004年2月、神楽坂に北イタリア料理(ヴェネト料理)専門店としてリストランテ・ステファノをオープン。
ステファノシェフの料理に対する思い
食事は人々をリラックスさせ、心を豊かに満たし、かけがいのない時間であると思っています。イタリアでは食事の時間をとても大切にしています。生きる活力となり、生活に彩りを与え、全ての源となっています。ファーストフードという便利な食文化もありますが、その食材に最も適した調理法で旬の料理をゆっくり味わう時間を大切にしてもらいたいと思っています。私は、その、『あなたの人生のひとときを豊かにすること』を使命としています。
私は北イタリアのヴェネチアを州都とするヴェネト州で生まれ育ち、料理上手な母の手料理で大きくなりました。私は4人兄弟ですが、そんな子供たちを母はお腹だけではなく心も満たしてくれました。日々のあわただしさの中、つい何かを見失いそうになってしまう現代生活を、食事の面から後押し、お役にたてればと願っています。この私の故郷の本当の北イタリア料理を皆様に味わって頂きたいと思っております。様々なイタリアの旬な料理を楽しんで、イタリアの食文化を感じて頂けたらとおもいます。
Arigat-EU(アリガテウ、本物のヨーロッパのデリ肉)
日本市場におけるPDOとPGIのデリ肉の価値についての消費者の認識の向上、イタリアのデリカッセンの品質の高さのプロモーションを目的に、EUによる支援のもと3つの食肉加工品のプロモーション機関により結成された3年間に渡る新たなプロジェクトです。
パートナーであるモルダデッラ・ボローニャ協会(主導協会)、サラミーニ・イタリアより、DOP、IGPの食肉加工品を普及するのか主要目的です。詳細はこちら
今回は「サラミーニ・イタリアーニ・アッラ・カッチャトーラDOP」「ザンポーネ・モーデナとコテキーノ・モーデナIGP」「ザンポーネ・モーデナ」「コテキーノ・モーデナIGP」という4つの種類のサラミについて深く掘り下げてみましょう。DOP、IGPとは
サラミーニ・イタリアーニ・アッラ・カッチャトーラDOP
小さいサイズで、水分が少なく、密度が高く、ルビー色で、中に小さくカットされたラルドが均一に入っているのが特徴です。
栄養価が高く、バランスが取れた味わい深いサラミです。まさに王道のサラミと言えるでしょう。
サラミーニが小さいのは理由があります。
カッチャトーレ(ハンター)が袋に入れて運び食べやすいように小さいサイズになったと言われています。
彼らの長くて激しい猟では、体内の塩分が大量に失われます。
それを補うのに十分な塩があるため、このサラミは重宝されたそうです。
また塩分だけでなく良質な脂肪、エネルギー、アミノ酸、タンパク質も含んでいることもカッチャトーレ達に適したサラミだったと言えるでしょう。
栄養的な面からもこれからこのサラミは注目されるように感じます。
サラミーニは白カビに覆われています。
実はこのカビがかなりいい仕事をしてくれています。
カビが成長すると、サラミから水分が出され、肉の脂肪やたんぱく質が分解し、たんぱく質はアミノ酸に変わるのです。
また適度な乾燥により深い味わいになるのです。
白カビが繁殖する事で他の有害菌付着の防止にもなります。
Arigat-EUがオススメする食べ方
〈材料〉
紫玉ねぎ 1個
サラミーニ・イタリアーニ・カッチャトーラDOP(薄切り) 20〜24切れ
ルッコラ・セルバチカ 60g
ストラッキーノチーズ 100g
赤ワインビネガー 20cc
トマト 1個
塩、ブラックペッパー 適
フレッシュタイムの小枝 4本
オリーブオイル
ペコリーノ・トスカーノ(熟成の短いもの)
〈レシピ〉
①玉ねぎを薄くスライスする。
②鍋に砂糖をスプーン2杯ほど入れ、黄金色に色づけ、赤ワインビネガーを加え、さらに、スライスした玉ねぎとタイム、塩胡椒を加え、2〜3分炒めた後冷ます。
③トマトの皮をむき、花びらの形に4つにカットし、塩胡椒、オイルで味付けをする。
④直径5センチのステンレスリングに薄くスライスしたサラミーニ・イタリアーニ・アッラ・カッチャトーラDOPを層にし、中心にストラッキーノをのせる。
⑤その上にキャラメル色になった玉ねぎを配置する。
⑥リングを外し花びら型にカットしたトマトをのせ、味付けしたルッコラと薄くスライスしたペコリーノを飾る。
⑦オイルとピンクペッパーで味付けをする。
モルタデッラ・ボローニャIGP
モルダデッラ・ボローニャIGPは長楕円形、またはシリンダー型で、身がしっかり詰まっており、弾力性はありません。
切り口はビロードを彷彿とさせる模様で、オバール色の四角い脂肪質は総重量の15%以上でなければいけません。
日本ではボロニアハム、ボロニアソーセージ、ボローニャソーセージといった名前でも呼ばれています。
モルタデッラはイタリア各地でよく目にする多くの人に愛されているハムです。
ボローニャ付近で伝統的に作られている本家本元のモルタデッラ・ディ・ボローニャIGPが高品質と言われる事が多いです。
豚の喉の部分や内臓の油脂によって『甘み』や『旨味』を調整する事があるそうです。
特殊な製法で作られており豚肉を約3回ミンチマシーンで挽いて非常に細かいクリーム上にする事で、モルタデッラ特有のテクスチャーが生み出されるのです。
4回挽いてしまうと固くなり過ぎてしまうとステファノシェフが説明してくださいました。
一般のモルタデッラはピスタチオ入りや黒コショウ入りがあります。
アメリカの”バローニー”やブラジルの”モルタデーラ”など、モルタデッラとよく似たタイプが世界の各地に見られるのは、万人に受け入れられる味という事なんでしょう。
イタリアのホテルの朝食には、かなりの確率でモルタデッラが出てきます。
輸出量はパルマの生ハムに次ぐ量との事。
なんとこのモルタデッラ、『mortadella Bo’』といわれるモルタデッラ祭りなるものまであるそうですから驚きです。
吊るされたモルタデッラ(現地工房にて)非常に大きいです。
現地ボローニャでは、モルタデッラを詰めたトルテッリーニが有名です。
今でも、クリスマスには家庭でトルテッリーニを作って食べるという伝統が残されています。
写真のトルテッリーニはもちろんボローニャで食べた一皿!!
ボローニャの町は、夜になるとオレンジ色の街灯が雰囲気を演出してくれます。
その土地の歴史や、文化、そして今を知ることで、より食材や、レシピを楽しむ事が出来ると私は考えています。
Arigat-EUがオススメする食べ方
〈材料〉
モルタデッラ 8切れ
ポテト (調理済) 150g
生クリーム(脂肪分35%) 120g
ピスタチオ(15+15) 40g
大きめのズッキーニ 1本
玉ねぎ 1/2個
イタリアンパセリ 10g
白ワインビネガー 適
オリーブオイル 適
塩、ホワイトペッパー、砂糖 適
ナツメグ 適
ミニトマト 4個
〈レシピ〉
①塩水でポテトを茹で、茹で上がったらマッシャーでつぶし、20グラムの生クリーム加え、冷蔵庫で冷やす。
②残った生クリームをホイップし冷やしたポテトを少しずつ加えていく。
③砕いたナツメグを15グラム、塩、胡椒、ナツメグを加える。
④モルタデッラのスライスを広げ、半分に分け、そこに用意したポテトを少量のせてコーン型に巻き、ピスタチオで飾る。
⑤ズッキーニをごく細長くスライスし、薄くスライスし水で晒した玉ねぎ、イタリアンパセリ、オイル、塩胡椒、白ワインビネガーで味付けする。酸味が強すぎる場合には砂糖を少量加える。
⑥好みで、それぞれのコーン型に15グラムのズッキーニのサラダを添え、チャービルと半分にカットしたミニトマトを添えて味付けする。
ザンポーネ・モーデナとコテキーノ・モーデナIGP
ザンポーネ・モーデナとコテキーノ・モーデナIGPは、豚の横紋筋、脂肪、皮と塩、胡椒を混ぜ合わせて作ります。
一説によると、ザンポーネとコテキーノの発祥の地はモデナ近郊のミランドラと言われています。
1500年から1511年の冬、教皇ユリウス2世の軍勢によって町が狙われました。
市民は豚を渡さないように加工して蓄えておこうとした事が始まりと言われています。
コテキーノとザンポーネは、イタリアではジャガイモやほうれん草を添えて出される事が一般的です。
新年の縁起物として年末年始に食べられる風潮もあります。
食べるとお金持ちになれると言われている「レンズ豆」との組み合わせも伝統的です。
Arigat-EUがオススメする食べ方
今回はステファノシェフが実演してくださいました。
『コテキーノには酸味が合う!!』とステファノシェフ。
コテキーノもザンポーネも弱火でコトコト皮が破れないように煮込むのが一般的ですので、ほぐして再び固まらせるという調理は新鮮でした。
コテキーノの新たな可能性を感じました。
〈材料〉
人参 1/2本
リンゴ 1/2個
オリーブオイル 20cc
ラズベリー・ビネガー 10cc
塩、ブラックペッパー 適
ポレンタ(トウモロコシ粉)で作ったチップス 4個
コテキーノ・モーデナIGP(調理済)とその汁 250g
白ワインビネガー 110g
玉ねぎのみじん切り 80g
スプラウト 適
フレッシュラズベリー 16個
〈レシピ(コテキーノ)〉
①袋入りのコテキーノ・モーデナIGPを湯煎で20分温める。
②同時に、玉ねぎをビネガーで水分がなくなるまで煮詰める。温めたコテキーノを袋から出しボールに汁と一緒に入れる。
③薄皮を取り除き、用意した煮詰めた玉ねぎを加える。
④木のレードルか泡立て器でコテキーノをほぐしていき、氷の上にボールを置き、ゴム製のヘラでかき混ぜながら冷やす。
⑤固まってきたら、型に入れ、冷蔵庫で少なくとも6時間冷やす。
〈レシピ(人参のサラダ)〉
①人参の皮をむき細切りにし、りんごも同様に細切りにする。
②全てを塩、胡椒、ラズベリーのビネガーで和え数分置いた後に軽く絞り、その後オリーブオイルとさらにラズベリーのビネガーを加える。
③お皿の中心に、人参とりんごのサラダでベースを作り、その上にコテキーノ、そしてスプラウトをのせる。
④周りに、ラズベリーのビネグレットソースを添え、フレッシュなラズベリー、又は4つにカットし味付けをしたミニトマトを添える。
今回3種類のイタリアの『デリ肉』を紹介していただきました。それぞれにそれぞれの歴史や背景があるイタリアのデリ肉。栄養価が高く携帯性にも優れており重宝せされたもの、万人に受け入れられる味わいにたどり着いた逸品。食材をも守ることから生まれた知恵を反映させたもの。先人達が残してくれたかけがえのないこの食文化を、さらにいい形にして繋ぐ事の大事さも噛み締めた一日となりました。