気鋭のシェフが、ITALIANITYのためにイタリアの郷土料理を調理!「イタリア料理」のユネスコ無形文化遺産登録を祝してスタートした新連載の第2弾は、ピエモンテで愛されているご当地パスタが登場します。イタリアを旅するような気分で、Buon appetito!
余った食材で作る庶民の詰め物パスタ
ITALIANITY読者なら、イタリアのパスタにはたくさんの種類があることはご存知でしょう。それでも、「Agnolotti アニョロッティ」と聞いてピンとくる方は、かなりのパスタ通。北イタリアのピエモンテ州の方言で、小さな詰め物パスタのことを「アニョロッティ」と呼んでいます。
「この料理の原点が、お祭りなどで大量に作った調理の余りを中に詰めたという庶民の料理なんですけど、今日の具材も、『牛頬肉のバローロ煮込み』の余りを使っています」。
ピエモンテ州ノヴァーラのリストランテ「マカッレ」で一年間イタリア料理を学んだ菊池優也シェフ。現在は週に1日、一橋学園にある自分の店 イタリア料理『スカルペッタ』で腕をふるっています。
つまんで形を作るピエモンテの郷土パスタ
「今回作るのは『アニョロッティ・ダル・プリン』で、プリンはつまむっていう意味なんですけど、つまむことで独自の形に仕上げています。ピエモンテの郷土パスタですね」。
「パスタの粉の配合は色々あるのですが、今日は小麦粉100gに対して卵1個、一番基本的な配合で生地を作ります」。手で生地をこねた後、パスタマシンで伸ばすことを繰り返し、かなり薄くなった生地を調理台に置いた菊池シェフ。「アニョロッティを作るのはめちゃくちゃ久しぶりなので、緊張しています」。かなり薄い生地で、詰め物をしたら破れないかと心配になりますが、「これでもちょっと厚いぐらいなんです。手が透けるくらいがいいと言われましたね」。



「この作業が『つまむ』。これがポイントで、『ダル・プリン』という名前の由来にもなっています」。キレイにつまんで形ができたら、カットしていく菊池シェフ。思わず、そんなギリギリのところでいいの?と思いましたが、「僕が習ったのは、結構ギリギリでカットする方法でしたね。カットした部分とか端っこは、賄いのスープに入れたりします」。
セージ香るバターソースが絶品!
アニョロッティに絡めるのはセージバターソース。バターを溶かしてセージの香りを移し、水を加えて乳化させるというシンプルなソースです。「ソースはお店によってやり方があって、『マカッレ』では“スーゴ・ダ・ロスト”、鳥や牛の骨をローストして煮出したソースで仕上げていましたね。作っていたら思い出してきました。懐かしいですね」。セージが香る『アニョロッティ・ダル・プリン』は、菊池シェフにとって思い出の味です。
実際に食べてみると、思った以上にあっさりしたバターソースが詰め物パスタの美味しさを引き立てるように寄り添い、飽きることなく、いくらでも食べられる美味しさ。ここでもオリーブオイルではなく、バターが使われているところに、北部のピエモンテらしい味わいを実感しました。

付きっきりで教えてくれた82歳のオーナーシェフ
もともと、学校では西洋料理を習っていたものの、フレンチの世界に進む友人も多いなか、なぜ菊池シェフはイタリア料理を選んだのでしょう。「学校でテーブルマナーを習いに行ったとき、イタリア料理の厨房を見学させてもらったのですが、イタリア語でやりとりしているのがすごくカッコよくて。あとは、パスタとかリゾットとか、わかりやすい美味しさが魅力だなと思って。それでイタリア料理の道に進みました」。
「イタリアに修行に行った当初は、イタリア語は全然しゃべれない。一応、日本のイタリア料理店で働いているときに、食材の名前とか時間、数字などは覚えたので、本当にそれ以外は現地で覚えました」。誰も知っている人のいない土地で、半年間のレストラン勤務しか経験していない若者が、料理という共通言語を頼りに学んでいく。なかなかハードルの高いチャレンジです。
ピエモンテにも色々なレストランがありますが、『マカッレ』の料理にはどんな特徴があるのでしょうか?「セルジオさんは割と伝統志向ですね。だからこそ、一番クラシックな郷土料理を学べて、すごく勉強になりました」。
「マカッレ」のオーナーシェフは当時82歳のセルジオ・ズインさん。「ずっと厨房で動いているわけじゃなくて、お客さんに挨拶したり、僕の指導をしてくれたり。本当にセルジオさんは付きっきりで教えてくれましたね」。

あっという間に過ぎた一年のイタリア料理修行
「スーシェフのマルコさんは、厳しいけど、すごくやさしい。休みの日に、一緒にモンテローザで山登りをしたりしてコミュニケーションを深めました。やはりイタリア語を覚えていって、だんだん仲良くなっていきましたね」。
イタリア時代の写真を見せていただくと、どの写真もすごくいい笑顔で写っている菊池シェフ。『マカッレ』のシェフやスタッフたちに可愛がられていたことがわかります。「本当に思い出に残る一年でしたね。こんなに早く時間が過ぎることってあるのかっていうぐらい。辛いこともあったんですけど、それ以上にやりがいがありましたね」。
日本人が一年間でどこまでやらせてもらえるのか考え、少人数のリストランテを選んだ菊池シェフ。望んだ通りの環境で学び、イタリア人のシェフやスタッフに応援され、たくさんの宝物を得て帰国しました。

次回は、「第16回 全国イタリア料理コンクール」決勝戦で絶賛された革新的なカルボナーラ「Pappardella ripiena alla Carbonara」をご紹介します。お楽しみに!
菊池優也シェフ Instagram
https://www.instagram.com/yuya.cucina/