イタリアの新しい世代のデザイナーと日本をつなぐ『THE NEW ITALIAN COOL Award 2025』。未来のファッションを担う受賞者たちが招かれ、ファッションショーが開催されました。授賞式直後のデザイナーへの直撃インタビューをご紹介します。
幾何学的かつエネルギッシュなモードでダブル受賞
11月14日、東京・武蔵小山の商店街の店舗跡で開催された『THE NEW ITALIAN COOL Award 2025』。受賞デザイナーたちは授賞式に合わせて来日し、バイヤー、ジャーナリスト、インフルエンサーなど200名のゲストの前で自分たちのコレクションを発表しました。商店街の方々もランウェイに登場したファッションショーは、心あたたまるアットホームな雰囲気と前衛的なモードが交錯するユニークなイベントとなりました。
『NEWカテゴリー アパレル部門』と『プレス賞』をダブル受賞したのは、Alberto Zambelli。「Spring-Summer Collection 2026は、“ル・コルビュジエの絶対的な形としての幾何学”がテーマで、レザーが身体の形に沿って形成され、服と体が一体化するように作られています」と、デザイナーのアルベルト・ザンベッリは語りました。

「これまで私のコレクションでは色をほとんど使っていませんでしたが、今回は世界的にとても複雑な状況の中、新しいエネルギーを伝えるメッセージを込めるために色を導入しました」。イエローやオレンジの鮮やかな色彩には、デザイナーの想いが込められていました。
「東洋と西洋の出会いもテーマとなっていて、日本の影響が強く見られます」との言葉通り、和服を思わせる生地の合わせなど、繊細な手仕事が感じられるコレクションです。

アップサイクルと職人技の美しい共演
『NEWカテゴリー アクセサリー部門』を受賞したのは959。デザイナーのPaolo Ferrari パオロ・フェラーリは「私のコレクションはブランドの哲学に基づき、持続可能性を重視しています。一部はアップサイクル素材で、残りは自然由来やリサイクル素材です」とコメントしています。ブランド名『959』は、1959年にボルボがシートベルトを導入したことに由来していて、そのシートベルトも今回のコレクションで使用している素材のひとつです。

「コレクションはミニマルな概念にも強く結びついています」。当日、彼が持っていたバッグは、アップサイクルしたシートベルトをベースに、職人技の極みともいうべき華麗な刺繍を組み合わせたもの。先進のサステナビリティとイタリアが誇るクラシックな美の融合は、新時代のラグジュアリーを物語っています。

受賞をきっかけに自身のブランドを設立したい
学生や新卒者に贈られるUPCOMING賞の受賞者はGiulia Linで、世界屈指のファッション大学マランゴー二 フィレンツェ校に通う学生です。「今回の作品は卒業制作で、昨年の10月から取り組みました」。彼女の作品は、実用性とは一線を画し、学生らしい冒険心と遊びに満ちあふれています。

「この受賞をきっかけに、自分自身のブランドを立ち上げたいと思っています。とても励みになりました」と、初々しい笑顔で言葉を紡いでくれたジュリア。彼女のようなデザイナーが新たな一歩を踏み出すサポートこそが、このプロジェクトの目的であることを再確認しました。

エコ・フューチャリスティックなビジョンを映すシューズ
サステナビリティ賞に輝いたのは、持続可能でエコ・フューチャリスティックなビジョンが評価されたFIALLO。「私たちのブランドはモータースポーツからインスピレーションを受けています。レトロスニーカーのシルエットに、現代の技術を融合させたデザインが特徴です」と語ったのは、代表でデザイナーのフェリペ・フィアロ。
「私たちが作るシューズは、100%再生可能エネルギーなどのサステナブルな方法で製造され、工場で使う水も100%再利用されます。アクセサリー類はすべて縫製され、縫い目で簡単に取り外せます。アウトソールも再生TPUで作られ、TPUやリサイクルポリエステルも再利用されています」。

さらに『FIALLO』を象徴するのがデジタルパスポート。「職人技を新しいテクノロジーで示し、デジタルパスポートを通じてイタリアの優れたものづくりを見せることを目指しています」とコメント。「デジタルパスポートでは、製造している工場の全てを映像で見ることができ、本物の“メイド・イン・イタリー”であることを確認できます」。
完璧なデザインとサステナビリティを両立させ、イタリア独自の職人技をテクノロジーでユーザー共有する姿勢。そのすべてがサステナビリティに結びつき、ファッションの未来の道筋を照らしています。

LINEAPELLE賞 NEW部門
Chronos Corps

LINEAPELLE賞 UPCOMING部門
Maria Palomba

これから1カ月の間、ICCJショールームでの展示、一人ひとりに合わせたコンサルティング、日本の職人たちとのアーティスト・イン・レジデンスなど、受賞者にはさまざまなチャンスが与えられます。イタリアと日本、そして世界へ羽ばたくファッション界の新星たちの未来は、ここから始まります。
在日イタリア商工会議所 公式サイト https://iccj.or.jp/ja/
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