いまや日本を代表するスニーカーとして、世界に多くのファンをもつ『SANGACIO』の「にゅ~ずスニーカー」。フィレンツェで靴デザインを学び、イタリアで感じた「日本らしさ」を靴づくりに反映しながらスニーカーを提案しているデザイナー兼オーナーの前田一輝さんのインタビュー、第2弾をお届けします。
一から革を作るこだわりのスニーカー
―――とくに靴の製作の部分でこだわられている点はありますか?
他社メーカーさんが合皮や他の素材に代わってきているところを、SANGACIOではほとんどオール本革を採用しています。革の厚みや色合い等全て指示を出させてもらって、張物でなくて一から革を作っているんですよ。
また、スニーカーのゴムの部分については、既製品のゴムを使用するのではなく、ゴムの粒子の配合から指定して、出来上がったゴムの硬さも僕が一点一点チェックしています。5種類ほどのゴムの硬さを作ってもらって、滑りやすさ、柔らかさ、履き心地のテストをし、僕が一番履き心地がよいと思ったものを使っています。
それから、普通だとゴムは靴底の板の部分を靴型に抜いた一枚を靴につけるのですが、僕たちはゴムについても、前の部分を柔らかく、後ろを硬くするなどして硬さを変えています。
―――スニーカー1点1点に対するこだわりが伺えます。靴の検品もとても厳しそうですね。
普通の靴屋さんだと、製作工程で100足できたら抜き打ちで2,3足チェックするんですね。僕たちは、仮に100足生産した場合、全足に対して1足につき2回~3回のチェックを行います。靴が完成したら、まずスタッフが靴を全てきれいに磨いて、焼き止め(紐の先端を溶かして溶着する糸処理方法)をして、糸のほつれもチェックしています。また、スニーカーだと皮に糊がついて取れていないこともあるので、ピンセットで綺麗に取って製品にし、梱包の時にも再度チェックして、検品しています。
他の会社さんに比べると靴1足に対するこだわりは、僕が知る限りトップクラスではないかと思います。
より高いクオリティを目指して
―――SANGACIOの靴はどこで作っているのでしょうか?
タイにある工房『SANGACIO INTERNATIONAL』で製作しています。

有名な靴屋さんで手作りされているメーカーさんもありますが、ほとんどの場合、生産過程で下請け業者に回しているんですね。SANGACIOでは、タイのSANGACIO INTERNATIONALで作っています。
―――タイで生産されているんですね。現地でのスタッフのトレーニングはどうされていますか?
実は、スニーカーの生産について、日本にはノウハウが少ないんです。これは少し大きな話になりますが、日本の靴産業は衰退してきていて、一環してスニーカーを作れるところはおそらく僕の知る限り1社だけですね。あとは、ほぼ分業制になっていて、糊付け、靴底の生産、縫製、チェックなどそれぞれの工程を異なる下請け業者が行い、靴が作られています。
逆に東南アジアには、スニーカー作りの設備やノウハウが蓄積されています。70年代後半~80年代のナイキの靴などはほぼ東南アジアで作られていて、メイド・イン・台湾やベトナムが多かったように思います。
なので、日本で作るよりも何倍もクオリティが高いものをタイで作ることができるんですよ。彼らに日本式のもっと丁寧な作業を教えるだけでいいのです。
また、SANGACIOは代理店を通さず、企画から製造・検品・輸出・輸入までを自分たちで行うので、非常に高いクオリティで商品をお客様に提供できています。
驚きのコラボレーションが続々と
―――FIAT、Peter MacArthur、パ・リーグ、ゴーストバスターズ、ニューヨーク市など、業種も国も越えて数々のブランドや都市とコラボされていますが、コラボされるときに気をつけている点や大事にされている点をお聞かせいただけますでしょうか?
コラボレーションで大切にしていることは、コラボレーションのパートナーの世界観をどう靴に反映するかということです。これは毎回テーマであり、チャレンジになるところですね。


―――なるほど。特にニューヨークのような都市とのコラボレーションでは、その世界観を靴に落とし込むのはかなりのチャレンジだったのではないでしょうか?
ニューヨークはスニーカーの文化が生まれた場所なんです。そんなスニーカーにとって影響がある街、ニューヨークとぜひコラボしてみたいと思い、実現しました。ナイキの靴がなぜ爆発的にストリートで売れ始めたのかというと、僕なりの見解ですが、今までアスリート向けに作っていたものを、ニューヨーカー達が街で普段履きをし始めたことが普及につながったのではないかと思っています。
僕も幼い頃、そんなスニーカー文化を生み出したニューヨークに影響を受けたので、僕自身のルーツ的な部分もニューヨーク市とのコラボでは大事にして、カラーリング、素材感などに反映しました。

―――今後コラボしてみたいブランドや、製作してみたい商品のアイデアについて教えていただけますか?
「歩む」をテーマに、僕たちの新しいブランドでもある「SANGACIO」を一緒に歩んでくれるブランドや仲間とのコラボレーションができればいいなと考えています。

たとえば、イタリアだと、フィレンツェ市内のバス・トラムを運営するataf(アタフ)という会社や、スーパーマーケットとのコラボレーションも面白いですね。イタリアってパスタのパッケージ一つとっても綺麗でかわいいので、靴にも反映できるし、イタリアのルーツも感じられてよいと思います。あとはイタリアのアーティストやブランド、キャラクターなど「イタリア」というキーワードが入ったコラボレーションは積極的にしていきたいなと思っています。
SANGACIOとしてリブランディング
―――最後に、今後の靴工房サンガッチョの展開について、お聞かせください。
今まで弊社の名前は「サンガッチョ」というポピュラーな言い方ですが、実は、これはイタリア語の日本語なまりの発音で、正しくは「サンガチオ」と呼ぶんです。
これまで6年近くサンガッチョとしてやってきましたが、これからはサンガチオとしてさらにステップアップした靴のデザインを作っていきたいと思います。
音楽で言うと、これまでの6年間は伴奏、これからは、サビの前の小節が始まるというイメージですね。
どうやって会社を経営していくのかという段階から、これからはどうやって自分の好きなデザインの靴を作っていくのかというステージに入ると思います。
ただお客様に靴をお渡しするのではなく、我々が作った靴を通して人生を満喫してももらえるような靴を作っていけたらと思います。
ひらがなのスニーカーを原点として、今後もっと自分を表現できるものに変えていくために、SANGACIOとしてリブランディングすることにしました。
―――素敵なブランディングですね。にゅ~ずスニーカーだけではなくて、今後は他の商品も含めて展開されていくということでしょうか?
はい、そうですね。実は僕も最近子どもが生まれたこともあり、愛妻家というコンセプトで、靴を通して世の中の奥様や子ども達への愛情表現ができる靴も作ってみたいなと思っています。留学中に奥さんを大事にするイタリアの文化に触れたこと、そして、仲の良い家族と一緒に住んでいたことがこのインスピレーションの源になっています。
初の体験型直営店OPEN!
2026年10月4日、SANGACIO初となる直営店、 「にゅスニーカー京都店(NEW'Z SNEAKERS KYOTO)」が京都・四条河原町にオープン!実際に履いて、その魅力を体感できます。
ITALIANITY読者のみなさんも、ぜひ訪れてください。
SANGACIO
*2021年6月17日掲載の記事を再編集しています。