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「ミラノデザインウィーク 2022」に出展した注目ブランド3選

世界最大規模のインテリアとデザインの祭典「ミラノデザインウィーク 2022(Milano Design Week 2022)」が、2022年6月7日(火)から6月12日(日)の間、イタリア・ミラノにて開催されました。ミラノデザインウィークの会期中は、ミラノ全体がデザインの祭典一色に染まり、大変な盛り上がりをみせました。


今回、ミラノデザインウィーク2022に出展したALCANTARA(アルカンターラ)Loro Piana Interiors(ロロ・ピアーナ・インテリア)、そしてLLADRO(リヤドロ)に焦点を当ててご紹介します。


ALCANTARA(アルカンターラ)


アルカンターラ社 会長兼CEO アンドレア・ボラーニョ氏

100% メイド・イン・イタリーの最高品質を誇るマテリアルブランド「ALCANTARA(アルカンターラ)」。独自の技術により生み出された、比類ない感覚、美しさ、機能性を兼ね備えたマテリアルは、その汎用性の高さから、ファッション、アクセサリー、自動車、インテリアデザインおよび室内装飾、家電など、さまざまな分野の一流ブランドに選ばれています。


そんなアルカンターラは、ミラノ市内のスーパースタジオ・ピウ(Superstudio Più )(Via Tortona, 27)にて、グリーンウォッシングの問題をテーマとしたインスタレーション「Someone is Lying…(誰かが嘘をついている…)」の展示を開催。


グリーンウォッシングとは、うわべだけ環境保護に熱心にみせること。「環境に優しい」イメージを訴求することは、企業のイメージアップ効果が高く、実際にはそこまで活動をしていないのにも関わらず「環境に優しい」と主張する企業が現れ始めました。こうしたやり方を揶揄するため、1980年代から「グリーン(=環境に配慮した)」と「ホワイトウォッシング(=ごまかす、うわべを取り繕う)」を合わせた造語を、欧米の環境活動家が使い始めました。


アルカンターラ社による本展示はイタリアファッション国立商工会議所(Camera Nazionale della Moda Italiana)の支援を受け、世界銀行グループが中心となって、コネクト・フォー・クライメート(Connect4Climate)とのパートナーシップによって行われました。同団体は、民間企業や非政府組織、大学、研究センター、業界団体などが集まって設立され、気候変動に関する情報伝達をテーマに活動しています。


アルカンターラ社は、2009年にもっとも厳格な国際認証機関の一つであるテュフ ズード(TÜV SÜD)から、カーボンニュートラル認証を取得しています。会長兼CEOであるアンドレア・ボラーニョ氏は、今回のプロジェクトに際し、次のように述べています。


「2009年から13年たった今でも、私たちはこの分野での取り組みを徐々に改善し続け、常に極めて透明性の高い運営を行い、事実に基づいたアプローチ、つまり科学的証拠と認証を採用しています。また、サステナビリティの真の複雑さを伝えることがいかに難しいかを認識し、その透明性をもっとも重要な資産の1つとして位置づけています。そこで私たちは、サステナビリティについてわかりやすく簡単に理解してもらえるような取り組みとして、子どもたちに大切なことを説明するときのように、おとぎ話『ピノキオ』の登場人物をモチーフにした作品を作ったのです」



ピノキオの物語は、必ず嘘は見抜かれて真実が明らかになるということだけでなく、嘘によって人は簡単に騙されてしまうということも教えてくれます。今回のプロジェクトでは、「グリーンウォッシング」によって消費者たちが騙されている問題をおとぎ話になぞらえています。消費者たちを欺くだけではなく、サステナブルではない施策や活動に対して投資を誘導し、不公正な競合関係の起因となるグリーンウォッシングを問題視する欧州各国の消費者庁は、2021年に初めて「グリーンウォッシング」をテーマに、さまざまな業種における企業の環境保護に関するオンライン上での訴求や表現内容に関する審査を行いました。


その結果、42%にも及ぶ企業の環境保護に関するオンライン上での訴求や表現が誇張、虚偽、または誤解を招くものであり、EUの規則に基づく不当な商行為に該当する可能性があることが判明しています。アルカンターラ社では、このピノキオのインスタレーションを通して、企業だけでなく、世代を超えたあらゆる人々が、現実的かつ具体的な持続可能性の取り組みに目を向けるようになることを目指しています。


Loro Piana Interiors(ロロ・ピアーナ・インテリア)



最高級の自然素材を扱うイタリアのテキスタイルブランド「Loro Piana(ロロ・ピアーナ)」。19世紀初頭に事業を開始したロロ・ピアーナはファッションの世界で知られていますが、2006年にインテリア部門を設立。2007年パリの展示会で、初の室内用生地コレクションを発表し、全世界への販売を開始しました。スロー、カーテン、椅子張り、ラグなどのアイテムは、素材に徹底的にこだわった極上の手触りが特徴。エレガンスを日常の生活に取り入れることを可能としています。


エレガントな「ロロ・ピアーナ・インテリア」がミラノに新たなフラッグシップストアをオープン!
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エレガントな「ロロ・ピアーナ・インテリア」がミラノに新たなフラッグシップストアをオープン!

遠藤友香 / 2022.06.24


そんなロロ・ピアーナ・インテリアは、ミラノデザインウィークにて、ラファエル・ナヴォ氏のデザインによる新作家具を発表しました。デザインウィーク中、ミラノの新社屋コルティーレ・デッラ・セタ(Via della Moscova 33)の中庭で、緩やかに起伏する砂丘の風景を思わせるインスタレーションで新作を展示。


ナヴォ氏とロロ・ピアーナ・インテリアの関係が始まったのは3年前のこと。両者は「職人技、柔らかさ、親密さ、くつろぎ、純粋さ、美しさ」を共通の価値観に、「心地よさ、タイムレス、コンテンポラリー」を共通の言語として交流を深めてきました。


長椅子を現代的に解釈したパームデュエット・シェーズロングとオットマン

コラボレーションで最初に誕生したのが、2021年発表のパームデュエット・シェーズロング。ロロ・ピアーナのキャッシュファー・ファブリックの手触りが際立つ、しなやかなフォルムの家具です。パームデュエットは、親密な関わりをテーマにしたオブジェでもあります。自分の時間を楽しむためにデザインされていますが、ゆったりとしたアームレストにもう一人座り、共に時を過ごすこともできます。


パーム・シリーズのしなやかなラインが特徴のパームソファ

パームデュエットの特徴的なデザインは、ソファ、デイベッド、アームチェア、スツール、サイドテーブル、コーヒーテーブルからなる今回のコレクションにも採用されました。パームデュエットと同じしなやかな柔らかいラインが特徴的。タイムレスでコンテンポラリーなデザインです。それぞれのエレガントな個性を活かして、単体で使用したり、組み合わせて会話を楽しんだりすることも可能です。同じシリーズとして共通の「パーム」という名前が付けられています。人の手の平のように指を軽く曲げて包み込み、心身を癒してくれます。


ナヴォ氏によると、すべてのアイテムは、未来的な手法でデザインされています。彼いわく、アイテムは人間性が強調された「生き物」。冷たいイメージがあるハイパーテクノロジーによる未来像ではなく、過去の視点から見た未来像ともいえる、可能性に満ちた場所をイメージしているそう。


ナヴォ氏のこのマントラは、今回の新作家具にも見られます。パーム・シリーズの家具はすべて、職人技のぬくもりを最大限に残し、しなやかなラインとそれを覆う厳選されたファブリックが完璧に調和しています。すべて天然素材の最高品質の繊維が使われているのも特徴です。



ミラノデザインウィークのために制作されたインスタレーションは、パーム・シリーズのしなやかなラインに着想を得ています。来場者は、巨大な砂丘に見立てた柔らかいカーペットの会場で没入型の旅をし、そこでナヴォ氏がデザインした「生き物」に出会います。ある場所では砂丘の上に立ち、風景を見渡すかのように、ある場所では砂丘の中の洞窟に潜ります。そこには新作が組み合わされて展示。ナヴォ氏がよく言うように、パームのオブジェに手を伸ばして体験することで、来場者とオブジェの間に関係性が生まれ、個人的で自然なつながりを感じ取ることができるでしょう。


LLADRO(リヤドロ)


「Seasons」コレクション(日本での発売は未定)

スペインのラグジュアリーポーセリンアートブランド「LLADRO(リヤドロ)」。1953年の創業以来、リヤドロの作品はすべてバレンシアにある工房で、ひとつひとつ手作業で作っています。創業時からの技術や技法を守り、4,000色以上の色彩を組み合わせ、デザインからモデリング、彫刻、エッチング、絵付けまで、熟練したアーティストとデザイナーのチームが、ポーセリンを芸術作品へと仕上げます。


アーティストの技術の粋、贅を尽くした特別なコレクション「ハイポーセリン」は、世界の名だたる美術館や博物館でも所蔵されています。また、一流のデザイナーや現代アーティストとのコラボレーションで生まれた様々なモダンアート作品まで、世界約120か国以上で展開。来年2023年には創業70周年を迎えます。時代とともに進化を遂げながら、人々の暮らしに寄り添い、上質で豊かなライフスタイルを提案し続けています。 


ミラノ大学にて展示されたシャンデリア

ミラノデザインウィークで開催される、世界最大規模の国際家具見本市「ミラノサローネ(Salone del Mobile.Milano)」は今年60周年を迎えました。それを記念して、品質、革新、美、サステナビリティという4つの重要な価値観でこの節目を祝いました。


会期中、リヤドロのクリエイティブ・ディレクターであるニエヴェス・コントレラス氏氏は、新しいライフスタイルを起点にしたサステナビリティ会議に参加。会議が行われたミラノ大学では、アールデコと自然の色彩からデザインされたリヤドロのライティング最新作「Seasons」コレクションより、荘厳なシャンデリアが掲げられました。


リヤドロ作品、中央は「The Guest」
「JAPAN-KABUKI」

その他、リヤドロを代表するデザイナーとのコラボレーション「The Guest」コレクションや、日本の伝統芸能である歌舞伎を題材にした新作「JAPAN-KABUKI」など、バラエティーに富んだ数々のコレクションをミラノの各地で展示し、ライフスタイルに輝きと彩りを与える個性豊かな作品を披露しました。


「Firefly by Olga Hanono」
オルガ・アノノ氏

リヤドロの「Firefly」コレクションでは、今年コラボレーション作品を発表したメキシコ人デザイナーのオルガ・アノノ氏が来訪。ショールームにて、ミラノのデザイナーや建築家、スタイリストたちと、デザインとファッションの融合をテーマに語り合ました。


大盛況のうちに閉幕した「ミラノデザインウィーク 2022」。問題提起するインスタレーションから感性を刺激してくれるコレクションまで、幅広いラインナップとなりました。来年度はどんな作品がお披露目されるのか、今から待ち遠しくてなりません。