6月14日から17日にかけてフィレンツェで開催された世界最大級のメンズファッション見本市、ピッティ・ウオモ。毎年1月と6月に開催され、今回で102回目を迎えます。
ここ数年はコロナ禍の影響で、オンライン取引のみでの開催や規模を縮小してキッズファッション見本市のピッティ・ビンボと同時開催していましたが、久しぶりにほぼノーマルなピッティ・ウオモとなり、2023年の春夏コレクションが紹介されました。
前回は、マスク着用義務に加え、ワクチン接種証明などの提示が必要とされましたが、今回は入場前の検温も撤廃され入場には一切の制限がありませんでした。また、会場内でもマスク義務もなく、ほとんどの人がノーマスクだったため、よりいっそうコロナ以前の日常に戻った雰囲気となりました。
第102回ピッティ・ウオモの様子を現地からご紹介します。
入場者数が倍以上増加の11000人、そのうち4割が海外からの参加者
1月に開催された第101回は、イタリアでコロナが大流行していたため、過去見たことのないほど入場者数がまばらの寂しい開催となりましたが、今回はコロナ以前までとはいかないまでもかなり活気が戻っていました。実際、開催終了前日の6月16日正午時点での発表では、今回の入場者数は前回の6000人からほぼ倍増の11000人が見込まれているとのことで、特に注目すべきは海外からの参加者がその4割にも上るという点。海外70カ国からのバイヤーは前回から340%も増加し、参加者数の多い上位10カ国はドイツ、オランダ、英国、米国、スペイン、トルコ、フランス、スイス、ベルギー、オーストリアとなります。
確かに会場を歩いていても、外国人参加者の多さが目につき、久しぶりにインターナショナルな見本市の雰囲気が感じられました。
まだアジア圏からの参加者は少ないものの、ピッティ・ウオモを運営するピッティ・イマジネのラファエッロ・ナポレオネCEOは「開催2日目までの時点で既に日本人のバイヤーが76人、韓国のバイヤーが61人来場しており、まだ自国で渡航制限などがあるにも関わらずピッティ・ウオモに戻ってきてくれたことは注目すべき点です」とコメントし、アジア圏からの参加者を喜んでいました。
出展ブランドの増加も際立ち、昨年6月開催のブランド数の倍ほどの682ブランドが出展。そのうち、41%は海外ブランドになります。前回は出展を直前で見合わせたブルネロ・クチネリも今回は再び出展するなど、多くのブランドが戻ってきていました。
ウクライナのデザイナー11人による「ウクライナ・ファッション・ナウ!」
今回のピッティ・ウオモでは、戦争中のウクライナから11人のデザイナーが招待され、会場内に特別展示ブース「ウクライナ・ファッション・ナウ!」が設置されました。
会場は、久しぶりの再会を抱き合って喜ぶ感動的なシーンが各所で見られる温かい雰囲気に包まれていたのがとても印象的で、デザイナーたちは海外からのバイヤーたちとの会話を心から楽しんでいるのが伝わってきました。
FIAT500(フィアット・チンクエチェント)とスニーカーブランドFESSURA(フェッスラ)のコラボによるカプセル・コレクション「RUNFLEX500(ランフレックス・チンクエチェント)」
今回のピッティ・ウオモではいくつもの新しいブランドやコラボが見られましたが、そのうちのひとつがイタリア生まれの車「フィアット」のチンクエチェントとイタリアのスニーカーブランド「フェッスラ」のコラボレーションによるカプセルコレクション「RUNFLEX500(ランフレックス・チンクエチェント)」。フェッスラは快適さ、デザイン、テクノロジーにフォーカスして誰もが手の届くところにあるファッションの新しいコンセプトを追求することをモットーとしたハイテクスニーカーなどを展開。
フィアット500がスニーカーのカプセルコレクションを展開するのは初めて。靴のサイドには500がデザインされ、中敷きには「フィアット」と車がデザインされているのが特徴的です。フェッスラの担当者は、「このカプセルコレクションが日本でも流通することを心より待ち望んでいます」と話していました。
ピッティ・ウオモでのお披露目が全世界での初お披露目となるこのカプセルコレクションは、2023年の2月から流通が始まり春夏に向けてフラッグシップストアやセレクトショップ、フェッスラの公式オンラインショップなどで展開される予定です。
若手デザイナーや学生たちの作品の発表も積極的に開催
ここ数年、ファッション界でキーワードになっている「サステナブル(持続可能性)」ですが、ピッティ・ウオモでは注目すべきサステナブルブランドにフォーカスを当てる「サステナブル・スタイルS/Style」プロジェクト毎回行われ、今回で5回目となります。ファッションジャーナリストのジョルジア・カンタリーニがキュレーションし、若手デザイナーたちによる、環境に配慮したユニークな10ブランドのコレクションが発表されました。
イタリアブランドのゼロセッタンタ・ストゥディオ(Zerosettanta Studio)では、ファッション・デザイン学校イスティトゥイート・モーダテック(Istituto Modartech)の二人の現役学生エリカ・グアリーノ(Erika Guarino)とカルロッタ・チティ(Carlotta Citi)によってデザインされた6点のカプセルコレクションを正式にブランドのコレクションとして採用され、その発表が行われました。会場では学生二人がバイヤーやジャーナリストたちに自分たちの作品について熱心に説明し、ピッティ・ウオモでの活躍のチャンスを喜んでいました。
イベント、ファッションショー、パーティーが復活、各地で華やかに開催
前回は企画展が中止となってしまったスペシャル・ゲストのアン・ドゥムルメステールは自身がキュレーションした特別展を開催やデザイナーのウェールズボナーのファッションショーなど、多くのイベントや企画展が復活しているのも特徴的でした。
また、今回はピッティ・ウオモの復活を感じるほど各地でパーティーも開催されました。ストロッツィ宮殿で開かれたフィレンツェ商工会議所主催のパーティーでは、ミシュランシェフら3人とイタリアで最も有名なパティシエのイジニオ・マッサリ(Iginio Massari)氏の4人が招かれ、彼らの食事を楽しみにながら、参加者たちはコロナ後の久々の華やかなパーティーを満喫していました。
チブレオ・レストランでは、イタリアブランドのマウナ・ケア(Mauna Kea)とNBA選手のジャレン・ジャクソン・ジュニア(Jaren Jackson Jr.)のスペシャルコラボレーションによるカプセルコレクションを発表するパーティーが開かれ、ジャクソン氏本人も出席して会場を盛り上げていました。
以前の活気が戻りつつあるピッティ・ウオモ、次回は来年1月に開催
世界各国でまだコロナ禍による渡航制限がかかっているところもあり、今回のピッティ・ウオモでも海外からの参加者はヨーロッパが中心とはなりましたが、コロナ禍以前の活気が戻りつつあるのを実感できたピッティ・ウオモでした。
ピッティ・イマジネのラファエッロ・ナポレオネCEOは今回の開催を振り返り「2年間のコロナ禍を経て、これだけ海外からの来場者が増えたことは出展者も運営する我々にとっても本当に喜ばしいことで、この活気あるエネルギーを待ち望んでいました」と喜びの声明を出し、復活の手応えを感じていました。さらなる飛躍が期待されるピッティ・ウオモの次回開催は来年1月に同会場にて開催される予定です。
フィレンツェは6月に入り、一気に気温が上がり日中は35度まで上がることもある猛暑が続いていますが、今回のピッティ・ウオモもそんな猛暑の中での開催となりました。そんな暑い日のファッションアイテムと言えば帽子。今回のピッティ・ウオモでも帽子スタイルが大流行となっていました。
2023春夏のメンズファッションのトレンドは?
時代を超えたエレガンスさが魅力のクラシックスタイルはピッティ・ウオモの定番スタイル。キャンバス地のボンバージャケット、クロシェ編みが施されたボリュームセーターとシンプルTシャツの組み合わせ、パイル生地のパーカー、起毛カーディガンなどが新しいアイテムとしてトレンドイン。
ビーチウェアは70年代の雰囲気がトレンドで、テーラードカットと伸縮性のあるウエスト、抽象アートからプリントなどが登場しました。
引き続きジェンダーレスやエイジレスのユニセックスデザインも多く、着心地を重視したリラックスしたスタイルは多くのブランドで紹介されています。
猛暑でもオシャレに抜かりなし!会場から最新スナップをお届け
コロナ禍の暗い気持ちを吹き飛ばすような明るい色が今年2022年春夏イタリアのトレンドカラーで、フィレンツェの街なかでもフーシャピンクやグリーン、オレンジなど色鮮やかなファッションが溢れていますが、ピッティ・ウオモ会場でも華やかな明るいファッションから、定番のモノクロスタイルまで様々なスタイルに身を包んだピッティ・ピープルが会場に華を添えていました。今年の夏、すぐにでも真似したいファッションアイデアの数々、一挙ご紹介します。
次回、103回を迎えるピッティ・ウオモは来年1月に同じ会場フィレンツェのバッソ要塞で開かれます。