いよいよ「2024年パリオリンピック」が開幕しました。熱戦が繰り広げられるバレーボールコートで躍動する背番号「4」のアウトサイドヒッター、石川真佑(まゆ)選手へのインタビューをお届けします!

昨年からイタリア1部リーグ「セリエA」でプレーする石川さん。初めての海外チームでの経験、2年目になるイタリア生活で楽しみなこと、オリンピックへの意気込みなど、たっぷりうかがいました!
イタリアで感じたチームメイトの優しさ
――昨年、日本のチーム(東レ)からイタリアリーグのチームに移りました。すぐになじめましたか?
石川さん:最初はやっぱり「いったいどんな雰囲気なんだろう?」という具合に、なにもわからない状況でしたね。でも、そんな自分がチームにとけこみやすいよう、みんなが環境や雰囲気をつくってくれました。本当に優しくて、温かく迎えてくれたんですよ。
――イタリアの人たちの第一印象が「優しい」というのは、同感ですね。行く前にイタリアの知り合いはいませんでしたか?
石川さん:私の兄(同じくセリエAでプレーする石川祐希選手)がいたくらいで、まるで知人はいなかったです。どちらかというと、それまでイタリアの人たちは選手として「戦う相手」でしたから。この前に試合をしたことがあるなとか、見たことがあったという感じで。
――イタリア代表は強いですから!
石川さん:本当にそうですね。

Photo by Maurizio Anatrini
――そんなバレーボールの世界最高峰と言える環境に身を置いた今、ライバルにする選手はいるのでしょうか。
石川さん:自分とは、体格も、プレースタイルも異なる選手ばかりです。ライバルというより、自分もこのプレーを真似してみようだとか、トライしてみようと思う人が多いですね。
――バレーボールに打ちこむ環境としてイタリアのプロリーグはどうですか。たとえば、身体やメンタルのケアなど、イタリアならではという特徴はあるのでしょうか。
石川さん:正直なところ、日本のチームのほうがバレーボールに選手が集中できる環境を整えてくれると思います。イタリアの場合は、自分自身でやるべきことが多いです。そういったところも含めて、日本には日本の良さ、イタリアにはイタリアの良さがあると思いました。
慣れない環境を自分がどうプラスに変えていけるか。それをイタリアに来て学ぶことができました。これから世界のいろんな場所でプレーするにあたって、すごく必要なことだって思えたんです。

――あらためてイタリアでバレーボールをすることが、どうプラスになっているかを教えてください。
石川さん:まず、日本でバレーをやっていたときとは「高さ」が違います。自分が世界を相手にするなかで、そうした経験ができているのはすごく良かったと思うんです。セリエAは自分が成長できるリーグだというふうに考えています。
――日本とイタリアでバレーボールのファンに違いはありましたか?
石川さん:イタリアで観戦してくださる方たちは年齢の幅が広いですね。日本だったら私と同じくらいの年代が多かったんですけれど、イタリアでは本当に若い子たちが来てくれるんです。小学生だったり、さらに小さい子が「がんばれー!」と応援してくれるんですよ。それが選手としてすごい励みになりますし、いろんな方にバレーを見ていただけるのがとっても嬉しいです。

オフの楽しみは「散歩」「カフェ」「ネイル」
――イタリアリーグでの所属は、まずフィレンツェのチーム(イル・ビゾンテ・フィレンツェ)でした。来シーズンから2年契約でノヴァーラのチームに移籍します(イゴール・ゴルゴンゾーラ・ノヴァーラ)。北部の街ですが、愛知育ちの石川さんにとってイタリアの寒さは平気ですか?
石川さん:フィレンツェに住みはじめたのは秋だったので、最初はそんなに寒くなかったです。現地の方から「以前の冬と比べたらそこまで寒くならないよ」と聞いていたのですが、それでも寒いなとは思いました(笑)。でも、覚悟していたより快適に過ごせましたよ。

――あまり観光などをする機会もなかったと思いますが、フィレンツェの街並みや自然が好きだとうかがいました。イタリア暮らしの感想を聞かせてもらえますか。
石川さん:普通に歩いているだけでも、すべての街並みが「きれいだな」と感じます。日本で過ごすときと違い、ちょっと散歩するだけでも気持ちが切り替わって、いい気分転換になりますね。
――どんな天気や時間に散歩するのがお好きですか?
石川さん:朝に散歩することもあったんですが、真冬だったから朝は冷え込んでいましたね。やっぱりお昼くらいの日差しがある時間帯が気持ち良かったです。
――フィレンツェのどのあたりで暮らしていたんでしょう。
石川さん:中央駅(サンタ・マリア・ノヴェッラ駅)から歩いて10分から15分くらいの場所だったので、わりと中心部に近いエリアでした。

――石川さんのインスタグラムアカウント(@mayu_00514)ではカプチーノを飲んでいる写真などがアップされていましたが、イタリアの食べものはお口に合いますか。
石川さん:「この料理が大好き」といった好みはあまりないですが、イタリアのご飯はいろんなものが本当に美味しいです。でも、ひとりなのでレストランに入るのはちょっと難しかったですね。カフェは休みの日に行っています。注文に関しては「コレとコレ」という感じで簡単に言っていたので、最初からなんとかなりました。
――現在はオリンピックに備えて合宿先やホテルで滞在されていると思いますが、普段のオフはどう過ごしてしているのですか。
石川さん:午後からオフだったら、みんなで夜ご飯を食べに行ったりします。あまりオフの時間が取れないときには、美容院や身だしなみを整えるお店に行ってリフレッシュしますね。今もこんな感じで(爪を見せてくれながら)ネイルをしたところです。
――わぁ、淡いワインレッド調のカラーがきれいです!
石川さん:これもイタリアに行ってからなんです。チームメイトが本番前に自分で爪を塗ったりして、ファッションを気軽に楽しんでいましたね。そうやって気持ちの切り替えを上手にやっているのを見て、とてもいいなと感じました。

語学でも、試合でも「耳」が大切
――アスリートにとってメンタルの整えかたは大事ですね。この記事の読者にも、将来は海外で自分の競技をプレーしてみたい人がいるかもしれません。そんな方たちに向けたアドバイスがあるとしたら、どんなことがあるでしょう。
石川さん:イタリアに限らず、言葉はすごく大事だなってあらためて感じました。私は今イタリアでプレーしているのでイタリア語を学んでいますが、ほかにもトルコリーグだったり、アメリカのリーグだったり、世界にはいろんなバレーボールのリーグがあります。共通言語の英語が話せることも大切だなと思います。やっぱりコミュニケーションは重要ですから。
プレー中に使う単語はコミュニケーションで必要になってくるので、そこは単語から覚えていきました。最初は会話をするのが難しかったです。だから、空いている時間に少しでもイタリア語に触れていました。

――よく使っているイタリア語の言葉はどれですか?
石川さん:いちばん使うのは、たぶん「ciao(チャオ)」だと思いますよ。あとは「dai(ダイ)」でしょうか。これは「がんばれ!」とか「さぁ、行こう!」みたいな意味ですね。
――お兄さんの本(『頂を目指して』)にはイタリア語の勉強法が書いてありましたが、石川さんの学習法や語学のコツがあったら教えてほしいです!
石川さん:コツは私も知りたいです(笑)。イタリアでは、現地の通訳の方にイタリア語を教えてもらっています。その方に言われたのは、テレビなどを家でつけっぱなしにして、少しでもイタリア語を耳にして、とにかくわからなくてもイタリア語をしっかり聞き取るのが大事だということでした。それを習慣にして、耳から学ぶんだと。だから向こうでとにかくちょっとでも時間があればラジオを聞くとか、そういうところを意識して学んでいます。
――なるほど、耳からですか。試合中も目だけではなくて、結構、耳も使うでしょうからね。
石川さん:そうですね。自分もしっかり周りの声を聞きながらプレーしています。やっぱり声を出すことがとても大事です。耳で状況を把握して、声で自分からも伝える。
――今度、そういうところにも注目して試合を見たいと思います!

チームとして強くなる姿を見てほしい
――日本でバレーボールに打ちこむ中学生や高校生などの10代に向けて、ぜひメッセージをいただきたいです。
石川さん:私も中学・高校時代、好きなバレーができることに感謝しつつ、結果を求めてプレーしてきました。その後、社会人になってから、あらためて「私はバレーボールが好きだな」って感じたんです。好きなバレーボールをより楽しむことで、さらに「もっと結果を求めたい」と感じることが増えました。
もちろん苦しかったり、大変なこともあったりするでしょう。でも、いちばんには自分の好きなバレーボールを楽しみながらやってほしいなって思いますね。
――プレイヤーは「楽しむことが大事」というメッセージですね、ありがとうございます。私たちのような一般の人たちがオリンピックの試合でどんなところに注目してみると楽しく応援できるか、そのポイントもぜひ教えてほしいです。
石川さん:私たちはメダルを獲得することを目標に「チーム」として戦います。やっぱり、バレーボールはチームスポーツです。選手個人がしっかり力を発揮して、プレーで活躍を見せることも大事です。でも、誰かひとりの力ではなくて、チームとして勝ちたい。いろんな選手が自ら持っている良さを出して掛けあわせた結果、どんどんチームが強くなる姿を見ていただきたいですね。

――最後に、今後のイタリア生活で楽しみにしていることがあったら教えてください。
石川さん:バレーボールだけじゃなく、普段のプライベートな生活を昨シーズンより充実させたいなと思っています。昨年のフィレンツェではあまり外に出かけていなかったので、来シーズンは時間があればいろんなところに行ってみたいですね。
あとはイタリアの人って、日本が好きな方が多いという印象があるので、私は日本の良さを伝えていきたいなって思います。日本にも旅行に行ってほしいですね。イタリアの選手は、意外とお寿司好きが多いんですよ。
――お寿司はヘルシーだし、タンパク質もとれますから。この「ITALIANITY」では、イタリアをテーマに、スポーツや食だけではなく、旅、歴史、文房具やビジネスといったジャンルまで扱っていく予定です。石川さんが読んでみたい記事のリクエストがあれば聞かせてください!
石川さん:やっぱり場所を教えてほしいです。今度から選手生活の拠点になるノヴァーラに関する情報も少ないです。日本からファンの方が試合観戦にいらしたとき用にも、アクセスはこんな感じだとか、観光するならここがいいよ、といった記事が読めたらうれしいですね。
――じゃあ、次の「秋のバカンス」特集でノヴァーラ周辺の街歩きガイドをつくりましょう。楽しみにしていてください。これからも応援しています!
石川さん:はい、今日はありがとうございました!
