INTERVIEW

INTERVIEW

松山からイタリア車の魅力を発信する老舗ディーラー|心の旅〜Tizさんと行く日本の中のイタリアVol.6

イタリア文化のアンバサダー、ティツィアナさんがイタリアニタ(イタリアのスピリット)を探しに日本全国を旅する連載「心の旅〜Tizさんと行く日本の中のイタリア」。第6回は、愛媛・松山で長年イタリア車の正規ディーラーを営む松岡毅さんを訪ねました。


イタリア車のロマンを届け続けて40年

──松岡さんが代表を務める「(株)オートサービスエム・アルファロメオ松山」は、松山で40年もイタリア車の販売をされているそうですね!創業者であるお父様はもともとイタリア車がお好きだったんでしょうか?


松岡さん:実は、父はもともと日本車の販売をしていたのですが、当時のお客様の中にフィアットの輸入権を持つ会社とパイプの太い方がいました。その方と知り合ったことをきっかけにフィアットのディーラーとなり、それをきっかけにアルファロメオ、そしてアバルトと取り扱うブランドを広げ現在に至ります。


ディーラーの皆さんと一緒に

──ご自身は29歳のときに東京から松山に帰郷して、お父様のもとで初めて車のビジネスをはじめたとのことですが、当時はどんな気持ちでしたか?


松岡さん:子どもの頃からファッションが大好きだったので、その原点ともいえるイタリア車を扱えることにワクワクドキドキでしたね。


──やっぱり!松岡さんがファッションをお好きだというのは一目見たときからわかりました(笑)。イタリアのファッションのどんなところに憧れますか?


松岡さん:まず色使いですね。日本ではつくれない色、そして色の組み合わせというのに毎回魅力を感じます。


──色に遊びが効いているという点では、やはりイタリアの車もそうですよね。ファッションの観点から見て、イタリア車とはどのような存在でしょう?


松岡さん:車っていうのは普通、乗って運転するもの。それが車の原点ですよね。でもイタリア車というのはそれに留まらず、衣服のように自分自身にまとうとでもいうのでしょうか。やはりデザインとカラーがどの国の車よりも優れているので、車全体がもうファッション一部のように感じます。


イタリアでアルファロメオはパトカーにも使用されている。

──松岡さんは松山のお客さまたちにどのようにイタリア車に対するパッションを伝えているのでしょう? 


松岡さん:私はまず、イタリア車があるライフスタイルというのをこちらから提案するようにしています。車の機能性どうこうではなく、この車をこういうふうに乗ってください、こういうふうに生活に取り入れてくださいと発信するよう意識していますね。


松岡さんの自宅には美しいFIAT 500eが。

想像を越える進化があるからこそイタリア車はおもしろい

──40年もの間イタリア車を販売されていて、驚くような体験もたくさんあったのではないでしょうか。


松岡さん:そういう意味では、イタリア車にはいつも驚かされていますよ。モデルチェンジするたびに、必ず惹き込まれる何かのアクセントがある。しかも、こんなふうにアップデートされるだろうなという予想ができないんです。先が読めないからこそワクワクする。40年間ずっと刺激を受け続けているし、これからもそうでしょうね。


10/11にアバルト初の電気自動車 「Abarth 500e」が発表されたばかり

──松岡さんが扱うイタリア車のブランドは、フィアット、アルファロメオ、アバルトの3ブランドですが、それぞれの車の性格を教えてくだい。


松岡さん:フィアットは日常の生活に当たり前のように必要なデザイン。アバルトは生活に刺激を与えてくれる存在。アルファロメオはイタリアンスポーツカーの真骨頂ですよね。世界中にいろいろなスポーツカーはあるけれど、僕はアルファロメオこそがスポーツカーの原点だなと、今でも自負しています。


──この40年間の中で、日本のイタリアに対する認識はどう変化したと思いますか? 例えば私の経験でいうと、40年前の日本にはイタリアンレストランなんてほとんどありませんでした。でも、今はどこにでもある。イタリアでは、観光地としてはマイナーな場所でも日本人観光客を見かけるようになりました。そう思うと、日本とイタリアは40年前と比べてだいぶ近くなったのではないでしょうか。


松岡さん:確かに近くなりましたよね。食はもちろん、ファッションでもイタリア流がだいぶ日本でも浸透してきました。日本人がイタリア文化をずいぶん理解してきたから、お客様との会話の進め方も40年の間にスムーズになった。
それは日本のイタリアへの認識が変わったというよりも、日本が変わったからかなと。一昔前の日本人はみんな同じ色に染まろうとしていたけど、今は個性をアピールするようになってきました。そして自分のパーソナリティを表現する方法のひとつとして、ファッショナブルなイタリアに行き着く人が増えてきたのかなと感じます。


──松山さんはイタリアに何度も旅されていると思いますが、いちばん戻りたいと思う場所はどこですか?


松岡さん:どの街も素晴らしいけれど、やはりフィアットがトリノから始まったというのが頭にあるから、自動車王国としてのトリノの雰囲気が大好きですね。あとはナポリかな。南部が好きです。


トリノの街並み(出典 zm_photo

──私も15年トリノに住んでいましたが、住む前は工業地帯の暗いイメージがあったんです。だけど実際はとてもアートが素晴らしい街で、想像とのギャップにびっくりしました。そんなに美しい街だなんて期待していなかったから(笑)。不思議なマジックがある街ですよね。


装いはイタリアブランドを扱う誇りの表れ

──今後の松岡さんのライフプランについて教えてください。


松岡さん:リタイア後はイタリアで暮らしてみたいですね。


松岡さんの素晴らしいホスピタリティに感動

──松岡さんにすごくおすすめしたい場所はイスキア島です。あそこはナポリに近いし温泉もあるし、天気もいい。海が美しくて食べ物が美味しいということも、四国に似ているかもしれません。だから過ごしやすいはずです。


松岡さん:それは最高ですね。また行ったことがないので、いつか必ず訪れてみたいです。


もちろんスプマンテで乾杯!

──最後に、松岡さんは毎日の自分の生き方の中で、どのようにイタリアンスピリットを表現されていますか?


松岡さん:そうですね、特別何かがない日でも、常におしゃれをしてスタイリッシュな装いでいようとは思います。それは、イタリアを代表するブランドの車を売っているんだという自覚と自信を表すためでもあります。だから着るものにはすごく気を遣っていますね。あとは姿勢をよくすること。それが僕なりのイタリアンスピリットです。


松岡毅プロフィール

1962年愛媛県松山市生まれ。東京の不動産会社勤務を経て、29歳のときに東京から松山に帰郷。実父の松岡剛氏が創業者である式会社オートサービス・エムに入社する。2000年に同社の代表取締役に就任し、フィアット、アルファロメオ、アバルト、Jeepの4ブランドを扱う正規ディーラーへ。2024年に創業40周年を迎える。

https://matsuyama.fiat-abarth-dealer.jp/fab/


番外編:道後温泉での一夜

愛媛県松山市中心地の東に位置する、日本最古かつ日本三古湯の一つといわれる道後温泉。1984年に建設された木製の公衆浴場である道後温泉本館は、宮崎駿監督の人気ジブリ映画「千と千尋の神隠し」のインスピレーションとなったと言われています。


2019年より改修工事が始まり、残念ながら今回は温泉に浸かることはできませんでした。(2024年12月完了予定)


道後温泉には地元の特産品、お土産、軽食を販売するお店がたくさん並ぶ商店街があり、ほとんどのお店が夜遅くまで営業しているのでとても賑やか。私も他の宿泊客と一緒に浴衣で出かけ、温泉街ならではの心地良い雰囲気を楽しみ、素晴らしい時間を過ごすことができました。


1895に建設され、明治時代の建築をうまく表現している道後温泉駅。現在は3つの路面電車路線のターミナル駅として機能しています。


道後温泉は坊っちゃんゆかりの地ということで、道後温泉駅前では坊っちゃん列車が展示されることも。駅前の放生園にある坊っちゃんカラクリ時計では、1時間ごとに音楽とともに坊ちゃんの登場人物が姿を現します。


寝る前のお風呂、そして朝一番の温泉は格別です。


東京に戻る前に朝の散歩タイム。1,000年以上の歴史を持つとされる伊佐爾波神社を訪れました。伊佐爾波神社は、日本三大八幡造りの一つに数えられ、国の重要文化財に指定されています。135段の石段を登る価値があります。


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