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イタリア喜劇の父が家族間の本音と建前をリアルに描く|映画『PARENTI SERPENTI』

イタリアのクリスマス・イブはどのように祝われるかご存知ですか? 今日は、中部イタリア・アブルッツォ地方のある一般家庭のクリスマス・イブとクリスマス・デーを描いた、1992年の優れたイタリア映画をご紹介します。


大家族の“偽り”をあぶり出す


イタリア喜劇の父、マリオ・モニチェッリ監督による実話を基にした映画で、タイトルは『PARENTI SERPENTI(蛇の親族)』。


このタイトルは、イタリアのことわざ“Parenti serpenti, cugini assassini, fratelli coltelli(蛇の親族、人殺しのいとこ、兄弟のナイフ)”を題材にしたもので、本来ならば愛をもってひとつにまとまるべき家族の縁が、しばしば継続的な苦しみや痛み、苦痛、抑圧、所有、嫉妬、さらには激しい喧嘩と悲劇の原因に変わることを強調している表現です。


あらすじ
クリスマスに彩られたアブルッツォ州の小さな町スルモナ。一年で最も神聖で幻想的なイベントを祝うために、この町に住む老夫婦の元へ、その子供たちが家族を伴い集まってくる。挨拶をかわし、プレゼントやごちそうを背景に待ちに待った家族の再会を喜び合う。ところが、年老いた祖母の思いがけない頼みごとが、大家族が保っていた見せかけの均衡と陽気な雰囲気を壊し、一連の愉快でグロテスクな出来事を引き起こして予想外の結末へと導いていく──。


本作では、イタリアの家族が祖父母の家に集まって団欒する、クリスマスイブから大晦日にかけての一年で最も重要な祝祭の時期が描かれています。


この時期、多くの小さな村や集落は、イエスの降誕を手作りで再現した伝統的な「キリスト降誕シーン」を思わせる雰囲気に包まれます。映画の舞台となったスルモナ村も同様で、スルモナ村は、砂糖漬けのアーモンドの生産地として世界的に有名でもあります。


家の中でも、クリスマスツリーに始まり、色とりどりのライトに照らされた小さなキリスト降誕のシーンなど、クリスマスの飾り付けは欠かせません。食卓には伝統的な料理やご馳走が並び、和気あいあいとした雰囲気の中で共に過ごす喜びが味わえます。また、村の狭い通りを通る神聖な行列、クリスマスの伝統菓子パネトーネ、福引やプレゼント交換など、毎年繰り返される伝統行事も見逃せません。古い伝統とニューコンシューマリズム、すべてを含む祭事なのです。


描かれる「本音」と「建前」


この作品に描かれているシニカルで冷酷な描写は、イタリアのあらゆる家庭で見られる典型的な力関係を表しています。この物語の主軸は、それぞれ登場人物の異なる個性にあります。登場人物の人間像のどれかは自分に当てはまり、観客の心を惹きつけます。特に、本作でリナを演じているマリーナ・コンファローネら俳優たちの優れた演技によって、間違いなく引き込まれるのです。


監督は、登場人物たちの多面的な性格や、彼らの本心と両親や家族全員の前で維持したい見せかけのイメージとの矛盾を、苦い皮肉とともに楽しく見せてくれます。


この「本音」と「建前」の対比とバランスは、物語が進むにつれて耐えがたくなり、家族の本当の愛情が試されます。突然限界を迎えた家族のバランスと結びつきを維持する意志の弱さが浮き彫りになっていきます。


また、登場人物たちの共犯関係や対比は、何人かの登場人物が隠していた悪い真実をついに明らかにさせることでしょう。


映画『PARENTI SERPENTI』は、家族の根底にある“偽善の勝利”を描きます。クリスマスや誕生日会、葬儀の時などに、忍び寄る偽善はすぐさま爆発します。競争や嫉妬、抑圧された恨みといった感情が噴き出す典型的な場面だからです。


家族制度は崩壊しつつあると言われていますが、実際には、家族はあらゆる葛藤を抱えながら存続しています。この作品は、負の側面、悲しい側面さえある家族についてリアルに描いています。しかし、家族には蛇のように怖い面もあることを表す“Parenti Serpenti(蛇の親族)”ということわざがあるように、”血のつながった家族や親戚より、蛇が近くにいる方が良い”という人もいるのです。


この映画は、人生をただシニカルに描いているのではありません。人生そのものを、喜び、偽善、シニシズム、苦味、時には深みをもって、見事にブレンドした“ポプリ”として表現しているのです。