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結婚式におすすめ!アモーレの国イタリアのウェディングソング特集

現代のイタリアでは、法的な婚姻はせずに事実婚のカップルが多いということが日本と異なる点でしょう。

ラブソングが多く存在するイタリアですが、結婚式や結婚を祝福する歌は意外と多くはなく、“結婚”という単語がタイトルやキーワードに入っている楽曲でも、“意中の人が他の人と結婚してしまう・・・”、“望まない相手と結婚するけれど、心の中には別の人が・・・”といった後悔・嫉妬・哀愁の歌が多いのも、結婚に相応しい楽曲選びに苦労する点です。

今回は歌詞の内容も厳選した歌の中から結婚式にピッタリの楽曲はもちろん、熟年世代が一生添い遂げる想いを新たにするような、ちょっと変わった楽曲をピックアップしました。

Buon ascolto!(ブオン・アスコルト / 意:聴いてね!)

Matrimonio!~イタリアのウェディングソング集~プレイリスト収録曲詳細

1. イタリア人の多くが結婚式と言えばこの曲とイメージするのが883(オット・オット・トレ)「Una canzone d’amore(ウナ・カンツォーネ・ダモーレ / 意:ある愛の歌)」(1995)です。なんといってもそのMVが結婚式仕立てで作られたからに他なりません。

2019年に2度目の結婚をした883の顔マックス・ペッツァーリ2019年に2度目の結婚をした883の顔マックス・ペッツァーリ

2. 21世紀の結婚式の定番曲になりつつあるのがジョヴァノッティ「A te(ア・テ / 意:君に)」(2008)。聴いているだけでも愛に溢れるラブソングなので、ライブではカップルが抱き合いながら聴いたり、キスを交わし合う定番曲になっていたのですが、実際にライヴ会場で同曲の演奏中にプロポーズしたカップルが現れ、その動画がSNS上でバズり、ジョヴァノッティ自身も祝福のコメントを寄せたことから、イタリアでは非常に縁起の良いプロポーズ曲・ラブソングとして定着するようになりました。

自身が企画したJova Beach Partyで結婚式の神父役を務めるジョヴァノッティ(右)自身が企画したJova Beach Partyで結婚式の神父役を務めるジョヴァノッティ(右)

3. ズッケロ「ティ・ヴォリョ・スポザーレ[君と結婚したい)](Ti voglio sposare)」(2016)は、布袋寅泰のギターをフィーチャリングして発表され、同年ズッケロの初来日のステージでは同曲はもちろん、全曲に渡って布袋寅泰がギター演奏&コーラスを務めたのが大きな話題となりました。タイトル通り、“君と結婚したい、嘘じゃないよ” とイタリア語と英語の詞がコール&レスポンスとなっているサビがキャッチ―な楽曲です。

4. ジョー・バルビエリ「君にゆだねるよ(In buone mani イン・ブォーネ・マーニ)」(2021)は、ジョー自身の結婚式で、新妻へのサプライズとして歌った楽曲。スタジオ録音では、実力派女性シンガーソングライターのカルメン・コンソリがデュエット相手を務めています。原題の“In buone mani”は直訳では“良い両手の中に”という意味ですが、慣用句として“(人を信頼してその手に)ゆだねる”という意味があります。

5. ジォヴァンニ・カッカモ「Puoi fidarti di me(プォイ・フィダルティ・ディ・メ / 意:君は僕を信じていいよ)」(2018)。愛とは永遠を誓うこと、というよりも、その瞬間瞬間に愛が存在することが大事だと信じている男性の視点で歌われています。2人を取り巻く余計な感情や環境を排除したら、残るのは僕と君の2人だけなのだから、と。

6. クラウディオ・バリォーニ「Io ti prendo come mia sposa(イオ・ティ・プレンド・コメ・ミア・スポーザ / 意:僕は君を花嫁として連れて行く)」(1972)。“20世紀を代表するラブソング”に選ばれた楽曲を含むコンセプトアルバム『Questo piccolo grande amore(クエスト・ピッコロ・グランデ・アモーレ / 意:このありふれた大きな愛)』収録曲。愛する女性を“花嫁”として、あらゆる所へ連れて行く、と誓う男性視点の歌。彼女を連れて行く先は、神の前、霧に満ちた朝、涼しい夏の夜、黄色い紅葉、ミモザ畑の前、済んだ穏やかな空、などなど。

7. ブンガロ「Come la pioggia che si sposa al vento(コメ・ラ・ピオッジァ・ケ・シ・スポ―ザ・アル・ヴェント / 意:風と結婚する雨の様に)」(2012)。“風と結婚する雨のように / 雲を全部消し去るよ / 空が泣くのを止めるよ / 君が唯一の運命のように感じるから”と、風と雨が結婚することに例えたプロポーズにぴったりの楽曲です。

8. マンゴー「La sposa(ラ・スポーザ / 意:花嫁)」(2011)。自分の花嫁となる女性のために、自分のあらゆる想いを込めて歌われた楽曲。哲学的な作風で知られるPasquale Panella(パスクァーレ・パネッラ)の作詞なので、若い青臭さとは一線を画した大人の視点での非常に抽象的な世界観が歌われています。“愛とはおそらく運だ / 運というものは相手の顔を見てはいないし、相手が誰かなどはお構いなし / でも私は君が花嫁であることを知っている / 私の花嫁 / 彼女が何であれ / 人生だ”

9. 883「Io ci sarò(イオ・チ・サロ / 意:僕はそこにいるよ)」(1998)。1曲目と同じ883の作品で、同様に結婚式に最適な楽曲のひとつと考えられています。“僕は君に約束はしない”と予想外の歌詞から始まりますが、“分不相応な約束はしない・できない”という等身大の男性の想いが綴られています。“おとぎ話では白馬に乗った王子様が現れ / 美しい人をお城に連れ帰って結婚し / 永遠の愛を誓うけれど / こうじゃないんだ / 君が僕を理解してくれたらいいな / 幸運と逆境の中で / 喜びと困難の中で / 君がそこにいるなら / 僕はそこにいるよ”と最後に男性は約束の気持ちを述べます。

10. マルチェラ・ベッラ「E se qualcuno(エ・セ・クァルクーノ / 意:もしも誰かが)」(1990)。今ではイタリアを代表する大作曲家となったジァンニ・ベッラが3兄弟の力を集結し、実妹のために書き上げた美しい楽曲。“もしも誰かが”という仮定法が満載の歌なので、イタリア語の条件法の教材にもピッタリの歌です。もしも誰かに“世界を意のままにできる”、“神はいない”、“恋をするな”などと言われたらどうしよう?と自問自答する女性の歌。あなたがいなかったら、あなたに出会わなかったら素直にその言葉に従えたかもしれないと、女性は考えあぐねます。逆説法的な表現のラヴソングです。

11. アドリアーノ・チェレンターノ「L’emozione non ha voce(レモツィオーネ・ノン・ア・ヴォーチェ / 感情には声が無い)」(1999)。前出のジァンニ・ベッラが作曲し、名作詞家モゴールが63歳の時に詞を書き、61歳のチェレンターノが歌った、人生の酸いも甘いも知った男性たちが作り上げた究極のラブソング。“俺には愛の語り方が判らない / 感情には声がないんだ / 少し息切れしているし”とこれまた意表を突く歌い出しが印象的です。しかし、不器用ながらも純朴な男性の愛情が綴られていきます。“俺の腕の中で君は穏やかに眠るだろう / 完全に感じあうためにこれは大事なことだ / 俺が知らないもうひとつの人生を君が与えてくれる / 君は俺の伴侶になるだろう / 君が望む限り”

12. ウンベルト・トッツィ「Io camminerò(イオ・カンミネロ / 意:僕は歩くだろう)」(1976)。気鋭のソングライターとして、様々な歌手に楽曲を提供していたウンベルト・トッツィが晴れてソロデビューした1stアルバム収録曲で、ファウスト・レァーリやミーナなどの大物がカヴァーする隠れた名曲。翌1977年に世界的な大ヒット曲「Ti amo(ティ・アーモ)」をリリースし、世界的スターとなる直前の瑞々しい作風の逸品です。まだ半人前だと自覚している男性から妻になる女性に贈るラブソングです。“io d’amore ti vestirò(イオ・ダモーレ・ティ・ヴェスティロ)”のフレーズが光ります。“僕は君に愛を着せる”が直訳で、“君を愛で包む”という意味ですね。“僕は歩くだろう / 君は僕についてくる / 堕天使の僕らにも天はあるさ / 僕は働くだろう / 君は待っていてくれる / ある晩 僕は喜び狂うことだろう / 子供が出来たと君が言う時に”

13. ベティ・クルティス「アル・ディ・ラ(Al di là)」(1961)。サンレモ音楽祭1961優勝曲。冒頭では“私がこんなことが言えるとは思ったことがありませんでした”と歌い出され、その後は数々の例を挙げて(最も美しいもの、最も深い海、遠い星々・・・)、それらを超えて、“あなたがいる。私だけのためにあなたがいる”と歌い切るラブソングです。当時、映画の劇中歌ともなり、世界中でスマッシュヒットとなりました。

14. プー「50 primavere(チンクァンタ・プリマヴェーレ / 意:50回の春)」(1992)。作詞&歌唱しているステファノ・ドラツィオが金婚式を迎えた両親のために書いた詞。時は第二次世界大戦中でしたが、無事に教会で式を挙げた両親。50回目の春を迎え、祖父母と呼ばれるような孫もできたようです。しかも彼らが結婚した4月25日は、後年にイタリア解放記念日(終戦記念日)となる日付になるという“Che sposi fortunati!(ケ・スポージ・フォルトゥナーティ! / なんて幸運な夫妻!)”なのです。

15. アル・バーノ「Oggi sposi(オッジ・スポージ / 意:今日結婚しました)」(1991)。タイトルは結婚式の写真や挨拶状などに入れる定番文で、英語で言うと“Just married”に近いニュアンスです。そのイメージから想像できるフレッシュなカップルというよりも、長い付き合いとなったカップルが、最初の頃の様に戻ろうと意識を新たにする心境が歌われています。ある朝、手を繋いで目覚めた2人は、友達や親戚に電話をかけて呼び集め、礼服を着て式を挙げます。そしてその式が終わり、妻が休んでいる間に、夫は天に登り、そこに「今日結婚しました」と書きます。そう、大勢を呼び寄せた式とは、実は葬式だったのです。文字通り、死が2人を分かつまで一緒に居続けることを熟年カップルが改めて誓う究極の愛の歌です。

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