今秋のITALIANITYのテーマ「トスカーナ」に合わせて、州都であり、古代ローマ時代から“花の都”と呼ばれ、ルネサンスの中心地となった歴史を持つフィレンツェに捧げられた楽曲をピックアップして紹介いたします。
プレイリスト収録曲詳細
1. 「Firenze – canzone triste(フィレンツェ – カンツォーネ・トリステ / 意:フィレンツェ – 哀歌)」(1980)
イントロなしでいきなり ♪フィレンツェ・ロ・サイ♪ と歌い始められる、永遠のフィレンツェご当地ソングの代表格がこの楽曲。
“コロッソ・トスカーノ(トスカーナの巨大な彫像)”とか、“ポンテ・ヴェッキオ(ヴェッキオ橋)”という言葉が歌詞に入って来るのもご当地ソングの必須の要素ですね。
歌の内容は、アイルランドからの留学生バルバロッサ(赤ひげ)と共に過ごした思い出と2人が愛したフィレンツェの街を女性に擬人化して表現し、彼が哲学科の学位を手にしてアイルランドに帰国した後の寂しさを歌っています。
自作して歌ったのは故Ivan Graziani(イヴァン・グラツィアーニ/1945-1997)。彼はギタリストとしてもイタリア音楽界で活動していたシンガーソングライターで、男声とは思えない高音域ヴォーカルが特徴です。生まれはアブルッツォ州ですが、異邦人の方がその街の魅力が端的に表現できるのかもしれませんね。
2. 「Firenze Santa Maria Novella(フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ)」(1980)
フィレンツェの玄関口となる駅の名前を冠したご当地ソング。ちなみに元となった“サンタ・マリア・ノヴェッラ”とは、駅の近くにある教会(13世紀~14世紀にかけて建立)の名前ですね。
歌詞の中ではフィレンツェのサッカークラブ「フィオレンティーナ」についても触れられていることもあり、フィオレンティーナが勝った場合にかかる定番曲にもなっています。
自作して歌ったPupo(プーポ)は同じトスカーナ州のアレッツオ近郊出身です。
3. 「Il cielo di Firenze(イル・チェーロ・ディ・フィレンツェ / 意:フィレンツェの空)」(1991)
まさにフィレンツェ生まれの地元っ子Paolo Vallesi(パオロ・ヴァッレージ)によるフィレンツェ曲で、地元民ならではの視点で描かれた、ややペシミズム的な歌詞がポイントです。
歴史の中で輝いていたフィレンツェは過去の話。現代のフィレンツェ人としては、過去の栄光を切り売りするだけの街でいいのか?と苦悶する気持ちが滲み出ています。
4. 「Io e Firenze(イオ・エ・フィレンツェ / 意:僕とフィレンツェ)」(1982)
プーリア州出身のFranco Simone(フランコ・シモーネ)の楽曲ですが、前出の曲と似た視点でフィレンツェの負の側面を嘆きつつも愛して止まないという歌詞になっています。
フランコ・シモーネはイタリア国内よりも南米での人気の方が高いというちょっと変わった存在です。
5. 「UFO su Firenze(ウーフォ・ス・フィレンツェ / フィレンツェの上のUFO)」(2008)
フィレンツェ出身のベテランロッカーPiero Pelù(ピエロ・ペルー)のロックナンバー。
1954年にフィレンツェのスタジアムでサッカーの公式戦中、UFOが1万人以上の観客の前で目撃されたという記録があり、そのことを歌っていると考えられます。
6. 「Firenze sogna!(フィレンツェ・ソーニャ! / 意:夢をみろ、フィレンツェ!)」(1993)
前出のピエロ・ペルーが所属するロックバンドLitfiba(リトフィーバ)作品。メタファーに満ちていますが、どうやら腐敗したフィレンツェ市の政治情勢を揶揄していると取れます。歌詞中に歌われている“古いキャンプにいるファラオ”とは、ヴェッキオ宮殿(現在は市庁舎に使われている)にいる市長、と解釈できます。
地元っ子はフィレンツェに対して、やはり可愛さ余って憎さが出てしまうものなのでしょうか。
7. 「Firenze sogna(フィレンツェ・ソーニャ / 意:フィレンツェは夢をみる)」(1939)
前出の楽曲と同じタイトルですが、こちらは甘美なフィレンツェ賛歌。主に戦前に活躍した俳優&歌手のCarlo Buti(カルロ・ブーティ)はフィレンツェ出身者で、数々のフィレンツェに捧げる歌を歌いました。
プレイリストにはサンレモ音楽祭優勝歴を持つフィレンツェ出身バンドHomo Sapiens(オモサピエンス / 意:ホモサピエンス)のカヴァー(1980)を収めてあります。
8. 「Lei, lui, Firenze(レイ、ルイ、フィレンツェ / 意:彼女、彼、フィレンツェ)」(2011)
美しいフィレンツェの街を背景にして、もう心が通わなくなった男と女の物語が綴られています。歌っているのは、カラブリア州出身のシンガーソングライターBrunori Sas(ブルノーリ・サス)。
9. 「La porti un bacione a Firenze(ラ・ポルティ・ウン・バチォーネ・ア・フィレンツェ / 意:どうかフィレンツェに大きな口づけを)」(1937)
主に戦前にシンガーソングライター&俳優として活動していたフィレンツェ人Odoardo Spadaro(オドアルド・スパダロ)作品。イタリア音楽史上に登場した2人目のシンガーソングライターと目される人物です。
プレイリストに入れたヴァージョンは、Nada(ナーダ / トスカーナ州リヴォルノ近郊出身)のカヴァーで、フェスティヴァルバール1971年の参加曲となり、リバイバルヒットしました。
10. 「Vecchia Firenze(ヴェッキア・フィレンツェ / 意:古いフィレンツェ)」(1949)
戦後初のイタリアの国民的スター歌手だったClaudio Villa(クラウディオ・ヴィッラ)のフィレンツェ賛歌。ちゃきちゃきのローマっ子の代表格のような彼が、古き佳きフィレンツェの美しさを甘美に歌い上げている珍しい作品とも言えます。
11. 「Amo Firenze mia(アーモ・フィレンツェ・ミア / 意:我がフィレンツェを愛している)」(1963)
フィレンツェ出身の歌手&俳優Narciso Parigi(ナルチーゾ・パリージ)歌唱の甘美なフィレンツェ賛歌。
12. 「È Fiorentina(エ・フィオレンティーナ)」(1999)
前出のフィレンツェ出身歌手プーポによるフィレンツェ賛歌であり、サッカークラブ“フィオレンティーナ”応援歌。
フィオレンティーナの愛称でありクラブカラーでもある “viola(ヴィオラ / すみれ色)”が連呼されていたり、フィレンツェ市の紋章である“giglio(ジーリォ / 意:ユリ)”という歌詞がでてくるのもポイントです。
13. 「Oh Fiorentina(オー・フィオレンティーナ)」
プレイリストの最後はフィレンツェのサッカークラブ“フィオレンティーナ”の応援歌を。