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イタリア・ローマの野外コンサート「Primo Maggio 2022」レポート!5月1日メーデーの風物詩

Concerto del Primo Maggioとは?全欧最大級の一大イベント

イタリアでは、毎年5月1日がメーデーの祝日。ここ30年間もの間、ローマで開催されている無料の野外コンサート 「Concerto del Primo Maggio(コンチェルト・デル・プリモ・マッジョ / 意:5月1日のコンサート)」が風物詩となっています。昼間から夜間にかけて7時間半を越えるライヴが行われ、その大部分がTV&ラジオで生放送されるという、まさに全欧最大級の一大イベントです。


その愛称は「Concertone(コンチェルトーネ)」。イタリア語の語尾に付く“-one(オーネ)”という接尾語は、大きいという意味を持つので、まさに巨大なコンサートを意味しています。


メーデーは祝日!そしてローマで無料コンサートの日!
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メーデーは祝日!そしてローマで無料コンサートの日!

ワダ シノブ / 2022.04.13



Primo Maggio 2022のテーマは「平和のために働こう」

2022年のテーマに掲げられたのは、「A lavoro per la pace(ア・ラヴォーロ・ペル・ラ・パーチェ / 意:平和のために働こう)」。労働者のための祭典であるメーデーで、世界平和を祈願したのです。


そして最初に出演したのはウクライナのグループGo_A。ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2021のウクライナ代表を務めた彼らは、オープニングにジョン・レノンの「イマジン」を披露しました。


ウクライナのグループGo_A

その後、45組ものイタリアのアーティストたちーーまだ売り出し中の新進気鋭アーティストから大物までーーが、入れ代わり立ち代わり出演しました。


新人クラスは1曲程度ですが、格が上がるにつれ、複数曲を披露(中には5曲も演奏するアーティストも!)するのですから、当然7時間半ものボリュームとなる訳です。

ステージは回転式で、次のアーティストは回転舞台の裏側でセッティングをしておく、という進行のため、シンプルな編成 (自分が演奏する楽器での弾き語りとか、演奏者1人同伴とか)にするアーティストが多いですが、バンドともなると機材のセッティングが大変そうです。


メインMCを務めるのは、最近は主に女優として活躍するAmbra Angiolini(アンブラ・アンジョリーニ / 45歳)。彼女は90年代にカルト的人気を誇ったTV番組『Non è la Rai(ノネ・ラ・ライ / 意:RAIではない)』(素人やタレントの卵の10代女子たちが出演するショー番組)から躍り出て、一番の成功者となった人物。同番組は当時衛星放送黎明期だった日本でもBSチャネルで放映され、時代を牽引する尖った層に、かなり人気を博しました。


司会を務めるAmbra

Primo Maggio 2022のハイライトシーンを紹介

コンサート全映像は2部に分けて映像がイタリア公共放送RAIのアーカイヴで公開されており、日本からも視聴可能です。現在のところ、昨年の映像までがアーカイヴに保存されているので、2年間程度はオンデマンドで視聴することができる見通しです。


新進気鋭のアーティストが中心、Part 1(昼の部)

Part1(昼の部)は、新進気鋭のアーティストが中心。とはいえ、イタリア勢の最初の出演(0:18:35~)となるのは、毎年のように出演するベテランバンドBandabardò(バンダバルドー)。コンバットフォークと呼ばれるジャンルを牽引するバンドの代表格のひとつで、そのバンド名はフランスの女優ブリジッド・バルドーにちなんで付けられています。


Bandabardò

0:43:20~は新人コンテスト「1MNEXT(プリモマッジョネクスト)」を勝ち抜いた3人の新人歌手を披露し、優勝者を決めるコーナー。


1MNEXT上位3人は女性歌手ばかり

昼の部はエネルギッシュなラッパーの出演が目立ちます。


Part2(夕方〜夜の部)

Part2は夕方~夜の部で、全国区の知名度を持つアーティストたちが目白押しで出演します。


1:02:56~は、出演者中で最高齢となるOrnella Vanoni(オルネッラ・ヴァノーニ)が出演。御年なんと88歳! まさにイタリア音楽界の生きるレジェンドです。こういった若者向けに見えるイベントに堂々とベテランが出演し、大喝采を浴びるのがイタリアらしいところです。


最高齢はOrnella Vanoni(88歳)

1:14:00~は、1998年にフランス語で初演されて国際的に大ヒットしたミュージカル「Notre Dame de Paris(ノートル・ダム・ドゥ・パリ)」のイタリア語版のキャストたちが出演し、劇中歌を披露します。同ミュージカルに楽曲提供を手掛けた仏伊ハーフのスターRiccardo Cocciante(リッカルド・コッチャンテ/76歳)も2曲目から登場。イタリア語版キャストの中には、男女デュオでサンレモ音楽祭2008に出場して優勝を勝ち取ったGiò Di Tonno(ジョー・ディ・トンノ)Lola Poce(ローラ・ポンス)も。


作曲者Riccardo Cocciante(左)とヒロイン役Lola Ponce(右)

このミュージカルはフランス語版がオリジナルですが、後にイタリア語版、英語版、スペイン語版などが作られ、それぞれの言語に対応するアクターたちが出演して、フランス発ミュージカル・ブームを牽引しました。各国でアンコール公演も活発に行われていますが、日本では英語版が一度公演されたままとなっています。


1:39:00~は、最大の見どころとなるCarmen Consoli(カルメン・コンソリ)がドラム&コーラスにMarina Rei(マリーナ・レイ)を迎えたステージ。原曲ではエレキギターサウンドで演奏されている楽曲もアコースティックギター1本で表現してしまう驚愕のパフォーマンスが、とてつもなくカッコイイ!


Carmen Consoli(手前)とMarina Rei(奥:ドラム)

3:46:20からはトリ出演者となるトラックメイカーMace(メイス)のステージ。トラックメイカーらしくゲスト歌手を何人も呼び寄せてのパフォーマンスですが、シタールやギター、トランペットなどのアナログ楽器をライヴパフォーマンスに取り入れているのが注目するところです。


トリを務めたトラックメイカーMace

まずはサンレモ音楽祭出場で一躍顔と名が広く知られるようになったColapesce(コラペッシェ)を迎えて、女性コーラスと同じ高音キーで歌い通すパフォーマンスが圧巻!

そして女性歌手Joan Thiele(ジョアン・シーレ)と男性ラッパーVenerus(ヴェネルス)を迎えてのパフォーマンスに続き、最後には人気ラッパーGemitaiz(ジェミタイツ)を迎えてのステージ。2022年のプリモマッジョはこの曲で幕を下します。


時間が許すならば、全編をじっくり味わうのもお勧めです。