2026年2月6日~22日に開催される「ミラノ・コルティナ2026」冬季五輪(以下。ミラノ・コルティナ五輪)にちなんで、本大会ならびにミラノに捧げられた代表的な楽曲をご紹介しましょう。
ミラノ・コルティナ五輪の公式テーマソング
遡ること2022年のサンレモ音楽祭の会期中に候補曲2曲がサドンデス対決をした結果、72%の票を得て選出されたのが、Arisa(アリーザ)が歌う「Fino all’alba(フィーノ・アッラルバ / 意:夜明けまで)」。
まるで雪山を滑走しているような躍動感のあるアレンジが聴きどころで、夢を持つこと、諦めずに夢を追い続けること、そしてタイトルに歌われた“夜明けまで”挑み続ける強い意志を賞賛している歌詞にも注目です。

歌っているアリーザは、サンレモ音楽祭2009新人部門優勝で注目を集め、2014年には同大会で栄誉ある総合優勝を遂げた実力者で、2017年に初来日公演。
2025年は大阪万博に、そして同年末にイタリア商工会議所主催イベントのゲストとして2度の来日を果たしています。
名匠ダルダスト作の公式劇伴曲
ミラノ・コルティナ五輪の公式インスト曲集から「Fantasia italiana – Main Theme(ファンタジア・イタリアーナ~メインテーマ / 意:イタリアの幻想 – メインテーマ)」。開会式や各競技の開始前後など、厳粛なムードの際に使われる可能性が高い楽曲となります。
現代のイタリアPOPS界で数多のヒット曲を量産し続けている売れっ子作曲家Dardust(ダルダスト)が書き降ろしたミラノ・コルティナ五輪の劇伴アルバムには、他にもいろいろな楽曲が収められていますので、会期中必ず耳にすることでしょう。

ミラノ・コルティナ五輪テーマ曲をバックに、ダルダスト自身が音楽制作や大会への想いを語る動画を紹介しておきます。(英語字幕入り)
聖火リレーの公式テーマ曲はあのPoohのメンバーが!
オリンピック開会前、恒例の聖火リレーの公式テーマ曲となったのが「Cuori a tempo(クォーリ・ア・テンポ / 意:拍動する心)」。
作曲&演者の中心人物はRed Canzian(レッド・カンツィアン)。50年以上の活動歴を誇るイタリアの国民的人気バンド「Pooh(プー)」のベーシストで、80年代と2012年に来日公演を果たしています。(注:レッドは盆栽愛好家で、個人としては何度も来日しています)
演者のグループ名がBig Family band(ビッグ・ファミリー・バンド)になっている通り、男性ヴォーカルパート&ベースはレッド自身、女性ヴォーカルパートは実娘のChiara(キァーラ)、ドラムは義息子Fil Mer(フィル・メール)が務めており、その他の楽器パートはレッド馴染みの音楽仲間が多数参加しています。
そしてレッド自身が聖火リレーランナーとして、点火式にも参列しています。

同曲はサンレモ音楽祭2025の会期中に初披露されて注目を集め、タイトルの“拍動する心”は、アスリートの心臓が、競技によって鼓動が高まることはもちろん、観客やスタッフの情熱やエネルギーが躍動するのを表現しています。※そのため、原題の“心(心臓)”は複数形になっています。
ミラノっ子たちが愛して止まない定番曲とは?
イタリア国内最大の経済都市ミラノの住人たちは、実は出稼ぎなどで定着した地方出身者が大部分を占めます。一般的に自分の出身地を愛して止まないイタリア人気質ですが、ミラノだけは別で、ミラノに住んでいてもちょっとアイロニックでネガティブな感情を持っている人々が多いようです。
そんな偏屈気味のミラノっ子にも、古くから愛されて止まない愛唱歌があります。それが「Oh mia bella Madonnina(オー・ミア・ベッラ・マドゥニーナ / 意:あぁ我が美しきマドンナちゃん)。
これはミラノのシンボルたるドゥオモの屋根の上で、ひときわ高くそびえる尖塔に立っている金色の聖母像のこと。つまりミラノの街を高いところから見守っている守護聖人のような、ありがたい存在として崇められている訳です。


1934年に作曲された超レトロ曲ですが、この曲が流れると、老若男女が一体となって嬉々として歌い出すのがミラノっ子の証、となっています。
最新時代のミラノ賛歌
ここ数年メキメキと頭角を現してきているRose Villain(ローズ・ヴィッラン)が歌う「Milano almeno tu(ミラノ・アルメーノ・トゥ / 意:ミラノ、せめてあなただけは)。
青く染めた頭髪がトレードマークの女性歌手ローズ・ヴィッランは、ヒップホップの要素を多く取り入れたPopsという、“歌心あるヒップホップ”という立ち位置で近年注目を集める気鋭のアーティスト。

まさにミラノ出身のローズが歌の中で描き出しているのは、先に述べた通り、諸手を上げて我が街を賞賛できないミラノっ子気質が多くを占めていて、大都会で暮らす息苦しさや喪失感を、ナイトライフを背景にして描き出していますが、“ミラノよ、せめてあなただけは”と救いの手をミラノの街そのものに投げかけている訳です。
その救いを求める具体的な対象として、前の曲で歌われている「ドゥオモの上のマドゥニーナ(聖母像)」が歌詞の中にも登場することも注目点です。
同曲が収められたアルバム『Radio Sakura(意:ラジオ・サクラ)』(2024)は、タイトル通り日本文化からインスピレーションを得ており、1曲目のタイトルが「Hattori Hanzo(ハットリ・ハンゾー)」なので、日本人としてはチェックしておくべき楽曲。
実在した日本の忍者武将・服部半蔵を題材にしつつ、要点は“剣よりも強く深く人を傷つけるのは言葉”と、現代の人間関係やSNSトラブルなどを比喩表現しています。「たとえ戦い方を知っていたとしても、戦いたくはない」と歌い継ぎ、「春の訪れ、桜が咲くのを待つ」と結ばれるのがとても印象的です。MVも全編に渡って、サクラが咲き誇っていますね。
開催地ミラノとコルティナとの関係は?
最後に余談をもうひとつ。今回の冬季五輪は“ミラノ・コルティナダンペッツォ”と名付けられている通り、このふたつの地区を中心に競技が行われるのですが、距離的には遠く離れてはいないものの、実は全く異なる気質を持っています。
ひとつはミラノがメガシティであるのに対し、コルティナは隣接するヴェネト州郊外の街。
そしてミラノが経済やビジネスの中心地であるのに対して、コルティナは別荘の街。
(日本で例えるなら、東京と軽井沢?)
もっと大胆な区別をするならば、ミラノはナイトライフが充実した“新しいスノッブ層”が集う街である一方、コルティナは“前時代的な富裕層”が集う街、というイメージの違いがあり、ネガティブさやアイロニックさを好むミラネーゼたちには、何かにつけては、マウントを取り合いたがる傾向があるようです。一部の楽曲にはそういう感覚が込められた歌詞もあるので、そこを理解するとさらに深く実感できるかと。
Buon ascolto!(ブォン・アスコルト!/ 楽しんで聴いてね!)
よしおアントニオが上記のプレイリストを選曲!その魅力を紹介しました
J- WAVE 周波数81.3FM
「SUNNY VIBES」
毎週金曜日 午前6:00~9:00
ナヴィゲーター:長井優希乃
(※生命大好きニスト、社会科教員、エッセイスト)
「EARTH BEATS JOURNEY」コーナー
2/6(金) 朝8:10~8:25
