2020年イタリア年間ヒットチャート解説
毎年の1月初頭にイタリア音楽業界の年間ヒットチャートが発表されます。 通称FIMIと呼ばれるイタリア音楽産業協会がマーケティングリサーチ会社Gfkの協力を得て集計されたデータです。
このチャートは国内外混合チャートなので、イタリア語POPSだけでなく、外国語曲やクラシック曲がチャートインすることもあり、ここ最近のイタリアに住む人々がどんな音楽を好んで聴いているのかが、実体として判る貴重なデータとなります。
しかし逆説的ながら、こうしたヒットチャートはあくまでも数量ベースの集計結果であり、イタリア音楽界でのアーティストの重要度・名声とはイコールではありません。 ひとつの参考値としてご覧ください。
2020年の年間チャート
2020年の年間チャートは、2019/12/27から2020/12/31までの期間に基づいて集計されています。 アルバムもシングルもベスト100位までが発表されますが、ここでは上位のものをピックアップしてご紹介いたします。
ここ数年、ラップ音楽が席巻しているイタリアですが、ついにアルバムチャートもシングルチャートもトップ5が全てラッパーで占められるようになりました。
かつて、めくるめくような甘いメロディと抜群の歌唱力を持つ歌い手たちの名パフォーマンスで世界中を席巻したイタリア音楽ですので、その黄金時代を知る方には抵抗を感じるかもしれませんが、これも現実として受け止めていかなければなりませんね。
どこの国のラップもそうですが、言葉に重きが置かれているので、イタリア語が判らないと今ひとつ魅力が判らないとは思いますが、イタリア語のラップはメロディアスなものが多いので、言葉が充分に判らなくても聴き易い曲が多い傾向にあります。
まずは聴いてみてください。
Buon ascolto!(ブォン・アスコルト!/ 聴いて楽しんで!)
【アルバムチャート】
1位はMarracash(マッラキャッシェ / 41歳 / シチリア州出身)の『Persona(ペルソナ /意:人物)』で、なんと2019年にもチャート5位にランクインしていたアルバムが、2020年もロングセラーを続けて首位に昇りつめたという驚異的な結果となりました。
2位はSfera Ebbasta(スフェラ・エッバスタ / 28歳 / ミラノ出身)の『Famoso(ファモーゾ / 意:有名な)』。 2020年11月発売なので、集計期間僅か2か月足らずでこの順位も驚異的です。
3位は若き新星Tha Supreme(タ・スプレーム / 19歳 / ローマ出身)の1stアルバム『23 6451』で、2019年チャートでも11位に付けていたのが大躍進して3位に浮上しています。
4位はGhali(ガリ / 27歳 / ミラノ出身)の『DNA』
5位はGuè Pequeno(グェ・ペクェーノ / 40歳 / ミラノ出身)の『Mr.Fini(ミステル・フィーニ)』。 ラッパー集団Club Dogo(クラブ・ドーゴ)としても活動するベテランラッパー。
【シングルチャート】
1位はBoomdabash(ブームダバッシェ) & Alessandra Amoroso(アレッサンドラ・アモローゾ / 34歳)の「Karaoke(カラオケ)」。 2020年夏の最大のヒット曲となり、そのまま年間チャート首位に躍り出た楽曲。 共にプーリア州サレント地方出身の同世代で、前者はラップグループ、後者はタレント発掘番組アミーチ出身者(本サイト内記事参照)。
2位はRocco Hunt(ロッコ・アント / 26歳 / カンパーニャ州サレルノ出身) & Ana Mena(アナ・メナ / 23歳 / スペイン出身)「A un passo dalla luna(ア・ウン・パッソ・ダッラ・ルーナ/意:月から一歩)」。 ロッコ・アントはサンレモ音楽祭2014新人部門優勝歴を持っています。
3位はIrama(イラマ / 25歳 / トスカーナ州カッラーラ出身)
「Mediterranea(メディテッラネア / 意:地中海の)」
4位はErnia(エルニア / 27歳 / ミラノ出身)の「Superclassico(スーペルクラッシコ / 意:超古典的な)」。 ちなみに芸名のエルニアとはヘルニアのこと。
5位はアルバムチャートでも4位に入ったGhali(ガリ)で「Good times」。