Musica di'autunno – イタリアの秋コンピレーション
イタリアの秋
イタリアでは9月になると学校は新入学シーズンが始まり、長い夏休みを終えて都会にも人が戻って来て、(例年なら)外国からの観光客で賑わい始めます。 地理的に日本と比べるとイタリアは緯度が高く、北部イタリアのミラノが北海道、中部イタリアに属するローマが東北地方、東京は南部のカラーブリア州あたり。九州はシチリアで、沖縄に至っては北アフリカに位置してしまいます。地中海気候の恩恵を受けて、日本より高緯度なのに温暖な気候なのですね。日本同様に四季もありますが、北部では9月になると急に肌寒くなることもあり、ローマ以南では10月まで暑く、秋が短い傾向があります。 今回はタイトルに9月、10月、11月を入れ込んだ楽曲や、秋そのものを歌ったイタリア語詞の楽曲のうち、いわゆる秋らしい、落ち着いたメランコリックな雰囲気のものを中心にプレイリストを組みました。自宅でひとり読書にふける時、移動中の電車の中で、行楽途中のドライブのお供にもぴったりなプレイリストを作りました。Buon ascolto!(ブオン・アスコルト / 意:聴いてね!)29 Settembre
秋の到来を感じる9月。“9月の曲” といえば、おそらく多くのイタリア人は「29 Settembre(ヴェンティノーヴェ・セッテンブレ)」(1967)を口にすることでしょう。今日のイタリア音楽界の元となったシンガーソングライターLucio Battisti(ルーチョ・バッティスティ)が作曲した楽曲で、最初に歌ったのはバンドEquipe 84(エクィップ・オッタンタクァットロ)で、後に作者バッティスティ自身がセルフカヴァーしました。 同曲はイタリア初のサイケロック曲と考えられており、イギリスでビートルズが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』をリリースする3か月前の事でした。 バッティスティの初期から全盛期にかけて彼とコンビを組み、後世にまで歌い継がれる数々の名曲を送り出した偉大な作詞家Mogol(モゴール)の詞で、この時期のバッティスティ作品に多く登場する “浮気”について歌われています。 当時の社会にはまだ自由恋愛が定着しておらず、イタリアに限っては法的に離婚も認められていない時代なので、浮気を歌にのせて発信するのはかなり過激な行為だったことでしょう。 タイトルの9月29日は、歌詞には一切登場せず、Equipe 84版にのみ挿入されたラジオ・ニュースのナレーションで、《本日は9月30日・・・・昨日9月29日は・・・》が入っているだけです。つまり歌中の浮気の日が9月29日で、翌9月30日に目覚めた主人公の男が慌ててパートナーに電話をかけ、「君を愛している(=僕が愛しているのは君だ)」と何度も伝えるけれど、浮気がバレている訳ではないのでパートナーには訳が判らない、というエンディングです。 では9月29日とは何の日なのでしょうか?イタリアの歴史上重要な日でも、何か大きな事件が起きた日でもありません。作詞家モゴールが後に白状したのは・・・妻の誕生日とのことでした。写真: ルーチョ・バッティスティCDジャケット
9月の情景 (Impressione di Setttembre)
PFM(ピー・エッフェ・エンメ / ピー・エフ・エム)こと、Premiata Forneria Marconi(プレミァータ・フォルネリーア・マルコーニ / 意:プレミアムなマルコーニ・ベーカリー)が発表した「Impressione di Setttembre(インプレッショーネ・ディ・セッテンブレ / 意:9月の情景)」(1971)も9月の代表曲として有名です。 印象的な間奏は、当時最先端の楽器だったMoog(モーグ)シンセサイザーを使用しており、あまりにも高価だったため、イタリアの輸入業者がたった1台だけ所有していたものを借りて録音したという逸話が残っています。 同バンドは前出のバッティスティが育てたロックバンドのひとつで、イタリアで初めて世界的な成功を得たロックバンドとなりました。 この曲も前出の作詞家モゴールが当時のPFMメンバーだったMauro Pagani(マウロ・パガーニ)と共同作詞しています。マウロ・パガーニはPFMが世界進出を成功させた絶頂期に、英語詞で歌うことやアメリカのビジネスの型にはめられることを嫌って脱退し、1970年代後半以降、イタリア音楽界で大きなムーブメントとなる“地中海音楽”を提唱して新たな成功を納め、様々なアーティストのプロデュースや演奏、映画音楽などに活動の幅を広げ、今ではイタリア音楽界で重要なマエストロのひとりとなっています。写真:同曲が収録されたPFMの1stアルバム『Storia di un minuto』(1972)
プレイリストに挿入されたアーティスト
イタリアの音楽界の縮図がある程度頭に描けるようになるとイメージが湧きやすいのですが、まだそれが無い方のために、プレイリストに挿入されたアーティストを大まかにキャリアや立ち位置でグループ分けすると、以下のようになります。- 【大御所シンガーソングライター】※イタリアの国民的人気を持つ最重要アーティスト
- Lucio Dalla(ルーチョ・ダッラ)
- Lucio Battisti(ルーチョ・バッティスティ/ 本文参照)
- Ivano Fossati(イヴァーノ・フォッサーティ)
- Antonello Venditti(アントネッロ・ヴェンディッティ)
- Renato Zero(レナート・ゼロ)
- 【ベテラン・シンガーソングライター】
- Ron(ロン)
- Alberto Fortis(アルベルト・フォルティス)
- Tiromancino(ティロマンチーノ)
- Samuele Bersani(サムエレ・ベルサーニ)
- Eros Ramazzotti(エロス・ラマッツォッティ / 日本語表記:エロス・ラマゾッティ)
- Nino Buonocore(ニーノ・ブォーノコーレ)
- Gatto Panceri(ガット・パンチェーリ)
- Peppe Servillo(ペッペ・セルヴィッロ)
- Carmen Consoli(カルメン・コンソリ)
- Grazia Di Michele(グラツィア・ディ・ミケーレ)
- Bobo Rondelli(ボボ・ロンデッリ)
- 【若手シンガーソングライター】
- Pierdavide Carone(ピエルダヴィデ・カローネ)
- Francesco Gabbani(フランチェスコ・ガッバーニ)
- 【ベテラン女性歌手】
- Mina(ミーナ)
- Gigliola Cinquetti(ジリオラ・チンクェッティ)
- Loretta Goggi(ロレッタ・ゴッジ)
- Carla Boni(カルラ・ボーニ)
- 【若手女性歌手】
- Giusy Ferreri(ジューズィ・フェッレーリ)
- Annalisa(アンナリーザ)
- Bianca Atzei(ビアンカ・アッゼイ)
- Malika Ayane(マリカ・アヤン)
- 【男性歌手】
- Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)
- Benji & Fede(ベンジー・エ・フェーデ)
- 【バンド】
- PFM(ピー・エッフェ・エンメ / 本文参照)
- Equipe 84(エクィップ・オッタンタクアットロ / 本文参照)
- Stadio(スターディオ)
- Giardino Dei Semplici(ジァルディーノ・デイ・センプリチ)
- Santo California(サント・カリフォルニア)
- Negramaro(ネグラマーロ)
Musica di'autunno – イタリアの秋コンピレーション