人気ジャズ・ピアニスト西山瞳は、名曲のカヴァーアルバムも発表しているヘヴィメタルファン。今回は、イタリア発の「ドゥームメタル」Messaを深掘りします。
世界的に注目を集めるMessa
Messaメッサは、近年非常に注目されている、イタリア発のヘヴィメタル・バンドです。
ヘヴィメタルには、実は細かく細分化されたジャンルがあり、Messaは“ドゥームメタル”と呼ばれるサブジャンルに属するバンド。
ドゥームメタルというジャンルは、テンポが遅く、陰鬱で不機嫌で、重々しくて倦怠感があり、ヘヴィメタルの中でもとびきりダウナーな音楽。
しかし、その中でもイタリアのMessaは、そのアート性と音楽背景の豊かさをもって非常に評価が高く、世界的に注目されているバンドです。
2014年、ボーカルのSara Bianchin(サラ・ビアンキン)と、ベースのMarco Zanin(マルコ・ザニン)によって結成。その後すぐに、ギターAlberto Piccolo(アルベルト・ピッコロ)とドラムスRocco “Mistyr” Toaldo(ロッコ・”ミスティル”・トアルド)が参加しました。
Messaの音楽が非常に魅力的なのは、70年代プログレッシブロックや、ブルース、ジャズなどの影響が色濃く出ていることです。ギターのアルベルトは、イタリアの音楽院でジャズを学んでいたそうで、それも納得のサウンド。アプローチの幅も広く、バンド全体のトーンを牽引します。
そして、ボーカルのサラの神々しい存在感。透き通る歌声、時に力強く、背景として幻想的に存在することもできる、稀有なシンガーです。
狭義のドゥームメタルに収まらない、アート性の高さとスケールの大きさが高く評価されているMessa。音楽背景の豊かさによる色彩感、さまざまな景色を見せてくれる物語性、そして70年代の独特の暗さとざらつきを感じる少し懐古的なサウンドは、往年のハードロック、プログレッシブロック・ファンも、きっと気に入ることでしょう。
私の推しアルバム『Close』
まず紹介したいのが、Messaの作品の中で私が一番好きなアルバム、2022年『Close』。

Messaのディスコグラフィの中でも、最も芸術性が高く、挑戦的なアルバムです。
ギターは要所要所でジャズのサウンドが入り、ウードやダルシマーなども使用したオリエンタルな空気が全体を包みます。それでいて、大事なところでツインギターだったり、70年代風のギターソロや、ルーズに刻むドラムスが、往年のロックのざらざらとした手触りを思い出す。
ストーナーロック、プログレ、ジャズ、地中海音楽などが融合した素晴らしい作品なので、入り口にはぜひこれを聴いて頂きたい。
“Pilgrim”はこのアルバムの中でもとりわけ素晴らしい、Messaの魅力が凝縮した曲です。
アラブのサウンドからメタルまで包摂し、物語を描き出す力は往年のプログレッシブロックそのもの。重く不機嫌なサウンドは、まさしくドゥームメタル。そしてシンガーのサラのカリスマ性が際立ちます。儀式的な荘重な空気は、圧巻。
成熟を物語るディスコグラフィ
デビュー作である、2016年『Belfry』は、ピュアなドゥームメタル・バンドとして、非常にクオリティの高い作品でした。
ドゥームメタルという音楽がよくわからない…というは、オープニング“Alba”から“Babalon”を通して聴いて頂くと、このジャンルの持つ雰囲気が、よくわかると思います。
二作目の2018年『Feast For Water』も、一作目を踏襲したドゥーム・メタルとして優れた作品でした。
この後の三作目が、最初に挙げた2022年『Close』。
一、二作目にもその萌芽はありましたが、三作目で音楽的に大きく飛躍し、越境したオリジナルな表現とサウンドを手に入れ、Messaのドゥームが確立されたと思います。
ポップに進化した最新作『The Spin』
最新作の2025年『The Spin』は、四作目にして、これまでの作品よりポップに振れたアルバム。

“The Dress”は、しっかり歌で引っ張っていく、ボーカル曲として魅力的な曲。しかしこの曲も、深く聴いていくとどんどん景色が変わっていき、トランペットとギターのジャズ的な掛け合いまで出てきて、ブラストビートにまで辿り着いたかと思えば、特濃のギターソロ。
どの曲も、ギターの存在感と牽引力が過去三作に比べ、非常に大きくなっており、バンドのバランスの変化を感じます。
『The Spin』を最初に聴いた時、大幅にポップに振れたアルバムを作ったなと思いましたが、何度もよく聴いていくと、ポップの仮面を被った正真正銘のドゥーム・メタル。どの曲にも必ず、表(ポップ)と裏(ドゥーム)があります。
そして、要素や展開の多さ(しかし、それをひけらかさない)はプログレッシブロックであり、ジャズ的即興要素は非常にアバンギャルド。この多面性こそが、アートなドゥーム・メタルとして広く支持されているのでしょう。
まだ日本盤は出ていないですが、輸入盤CD、サブスクリプション・サービスでも聴くことができますので、ぜひ聴いてみて下さい。

Echo/Hitomi Nishiyama 3,190円
2023年『Dot』、2024年『Echo』は、ジャズ、ヘヴィメタル、クラシックを踏まえた活動集大成の連作として発表され、配信サービスにおいて13カ国でチャートイン。