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イタリア映画祭 2022 挿入歌特集!

イタリアファンにとっては、すっかり21世紀の5月の風物詩となったイタリア映画祭ですが、2022年はようやく例年通りのスケジュールで開催されることになりました。東京はGW期間中(4/29~5/4)で、大阪は5/14&15、そして、コロナ禍から始まったオンライン上映が5月中旬から。最も早い上映となる東京会場の前売り券発売は、4/16(土)正午からとなっています。(※4/6時点)


イタリア映画祭公式サイト:https://www.asahi.com/italia/2022/


イタリア映画祭2022ポスター

上映予定は、新作12本+旧作4本の計16作品。映画業界には、未公開国でフライイング視聴できないような規制がいくつも施されているため、筆者もまだ観ていない作品ばかりですが、公式トレーラー映像の中に流れていたり、イタリアの記事から読み取れた挿入曲情報の中から、イタリア語詞の楽曲を紹介いたします。


映画作品と挿入歌詳細

※映画邦題の前についているアルファベットは、イタリア映画祭2022内での識別記号となります。


1. B.キアラへ
[2021/122分]原題:A Chiara
監督:ジョナス・カルピニャーノ Jonas Carpignano
出演:スワミー・ロートロ、クラウディオ・ロートロ、カルメラ・フーモ


イタリア映画「キアラへ」

公式トレーラー内に流れているのは「Altalene(アルタレーネ / 意:ブランコ)」(2020)です。歌っているのはMara Sattei(マーラ・サッテイ)と人気ラッパーのCoez(コエツ)。チャート1位を獲得したヒット曲になりました。


ラッパーSlait(スレイト)とTha Supreme(タ・スプレーム)が手掛けた大ヒットアルバム『Bloody Vinyl 3』(2020)からのシングル曲で、彼らはプロデュースや楽曲制作をメインに行い、収録曲にはいろいろなゲストアーティストを招いたテイクで作られたアルバムで、年間チャートでも11位に入る大ヒットとなりました。


アルバム『Bloody Vinyl 3』(2020)
アルバム『Bloody Vinyl 3』(2020)

2. D.笑いの王
[2021/133分]原題:Qui rido io
監督:マリオ・マルトーネ Mario Martone
出演:トニ・セルヴィッロ、マリア・ナツィオナーレ


イタリア映画「笑いの王」ポスター

全編に流れるのは古き良きナポレターナ(ナポリ語歌謡)ばかりで、特にSergio Bruni(セルジョ・ブルーニ / 1921-2003)歌唱のものが多くフィーチャーされています。彼の声は“20世紀のシンボル”と称されるほど、イタリア国民から崇拝されていた歌手で、来日歴もあり、筆者も直接お会いする機会がありました。


セルジョ・ブルーニ
セルジョ・ブルーニ

すっかりイタリア映画界を代表する名優となった主演のトニ・セルヴィッロは、サンレモ音楽祭優勝歴を持つペッペ・セルヴィッロ(俳優としての来日歴あり)のひとつ違いの兄でもあり、ヒロインのマリア・ナツィオナーレもナポリ語歌謡の歌手でもあるので、他にも音楽的見どころ・聴きどころが期待できるかも。


3. H.ある日、ローマの別れ
[2021/116分]原題:Lasciarsi un giorno a Roma
監督:エドアルド・レオ Edoardo Leo
出演:エドアルド・レオ、マルタ・ニエト、クラウディア・ジェリーニ


イタリア映画「ある日、ローマの別れ」ポスター

公式トレーラーには大御所シンガーソングライターFrancesco De Gregori(フランチェスコ・デ・グレゴーリ)の「Sempre e sempre(センプレ・エ・ペル・センプレ / 意:いつも、そして永遠に)」(2001)が流れ、歌詞に沿うかのように、主人公夫婦の浮き沈みの映像が当てはめられているのが見事です。


フランチェスコ・デ・グレゴーリ

映画の原題と同じタイトルの1998年発表の楽曲(Niccolò Fabi / ニッコロ・ファビ)が存在しているので、この楽曲にインスパイアされて作られた映画ではないかとも思えるのですが、イタリアでリリースされているサントラ盤にはこの楽曲は収録されていませんでした。作中、どこかに流れる可能性もあるので、プレイリストには同曲も入れておきます。


4. I.ディアボリック
[2021/134分]原題:Diabolik
監督:マネッティ・ブラザーズ Manetti Bros.
出演:ルカ・マリネッリ、ミリアム・レオーネ、ヴァレリオ・マスタンドレア


イタリア映画「ディアボリック」ポスター

ディアボリックとは、60年前に漫画で発表されたイタリアのダークヒーローで、以来、今日までイタリア国民の心のヒーローであり続けています。何度も映像化&実写化もされており、今回イタリア映画祭2022で公開されるのは2021年に実写化された最新エディション。主演のルカ・マリネッリは、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ(Lo chiamavano Jeeg Robot)』(2015)で、主人公を喰うほどの悪役を演じて大注目を集めているほどの、ヒーローものに欠かせない俳優でもありますので、とても楽しみな作品ですね。


Spotifyで「絶対聞きたい日本製アニメのイタリア版」プレイリスト配信開始!
CULTURE

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よしおアントニオ / 2020.07.31

サントラを手掛けているのはPivio(ピヴィオ)とAldo De Scalzi(アルド・デ・スカルツィ)のコンビ。マネッティ・ブラザーズ監督とタッグを組んで多くのサントラを手掛けてきています。アルド・デ・スカルツィという名前でピンと来るのは、日本ではおそらくプログレファンの方ですね。イタリアン・ロックの雄New Trolls(ニュー・トロルス)を率いるヴィットリオ・デ・スカルツィの実弟にして、自身もPicchio dal Pozzo(ピッキオ・ダル・ポッツォ / 意:井戸の中からのノック)というバンド活動をしていた人物です。


公式トレーラーには残念ながら歌入り楽曲は使われていませんが、公式サントラアルバムには「Amore, vieni a Ghenf(アモーレ、ヴィエニ・ア・ゲンフ / 意:愛しい人、ゲンフに来てね)」というイカシタ歌入り楽曲が!ピチカート・ファイヴ風というか、かつての渋谷系をホウフツとするようなご機嫌な曲調です。さらには存在感の強いのオルタナバンドAfterHours(アフテルアワーズ)のフロントマンManuel Agnelli(マヌエリ・アニェッリ)が、この映画の為に2曲の新曲を提供していることも判りました。彼は今をときめくMåneskin(マネスキン)のお師匠さん的存在でもあります。


マネスキンを育んだイタリアのイカシタ夏のRock特集!
CULTURE

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よしおアントニオ / 2021.07.30

師匠マヌエル・アニェッリ(左から2番目)とマネスキン
師匠マヌエル・アニェッリ(左から2番目)とマネスキン

5. J.スーパーヒーローズ
[2021/121分]原題:Supereroi
監督:パオロ・ジェノヴェーゼ Paolo Genovese
出演:アレッサンドロ・ボルギ、ジャズミン・トリンカ、グレタ・スカラーノ


イタリア映画「スーパーヒーローズ」ポスター

まさにイタリア音楽界にとっての“スーパーヒーロー”たるUltimo(ウルティモ)が書き下ろした楽曲が主題歌になっていますが、残念ながら公式トレーラーには使われていません。


ウルティモ
ウルティモ
今、イタリアで一番バズっているUltimo(ウルティモ)!
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今、イタリアで一番バズっているUltimo(ウルティモ)!

よしおアントニオ / 2020.09.30

映画の音楽担当はMaurizio Filardo(マウリツィオ・フィラルド)。かつてサンレモ音楽祭の芸術監督やオーケストラ指揮を担当し、多くの映画音楽やポップス曲を生み出している作曲家でもあります。何よりも2019年に敢行されたサンレモ・ジョーヴァニ・ワールド・ツアーの一環で来日公演が行われた際に、バンドマスター兼ギタリストを務めていたのが特筆することです。


そして公式トレーラー映像の後半に流れているのは、Loredana Bertè(ロレダーナ・ベルテ)の「Sei bellissima(セイ・ベリッシマ / 意:君は最高に美しい)」(1975)です! 現在の若者たちにも一目をおかれ、幅広い世代から崇拝され続けているロレダーナ・ベルテの若き日の大ヒット曲で、後進の女性歌手たちにこぞってカヴァーされ続けている楽曲でもあります。


ロレダーナ・ベルテ
ロレダーナ・ベルテ

6. M.息子の部屋
[2001/99分]原題:La stanza del figlio
監督:ナンニ・モレッティ Nanni Moretti
出演:ナンニ・モレッティ、ラウラ・モランテ、ジャズミン・トリンカ


イタリア映画「息子の部屋」ポスター

イタリア映画祭2022では、ナンニ・モレッティ特集上映という枠が3つ設けられており、過去の作品の中から、世界的に大ヒットした本作が再び鑑賞できることとなりました。音楽担当は名だたる映画音楽家Nicola Piovani(ニコラ・ピオヴァーニ)。


とても印象的なのは、家族4人で乗った車の中で、父親に扮するナンニ・モレッティが歌を口ずさむのを皮切りに、家族全員での合唱に発展するシーン。彼らが歌っていた楽曲は「Insieme a te non ci sto più(インシェーメ・ア・テ・ノン・チ・スト・ピユウ / 意:あなたとはもう一緒に居られない)」(1968)。Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)らのプロデュースで大成したCaterina Caselli(カテリーナ・カゼッリ)の若き歌手時代のヒット曲で、後に偉大なシンガーソングライターとなるPaolo Conte(パオロ・コンテ)がまだ無名時代に書いた楽曲です。


劇中の場面から
劇中の場面から

そして主人公が遊園地のメリーゴーラウンドに乗るシーンで流れていたのが、Paola Turci(パオラ・トゥルチ)が歌う「Siamo gli eroi(シャーモ・リ・エロイ / 意:私たちはヒーローよ)」(1989)です。


7. N.夫婦の危機
[2006/112分]原題:Il caimano
監督:ナンニ・モレッティ Nanni Moretti
出演:シルヴィオ・オルランド、マルゲリータ・ブイ、ジャズミン・トリンカ


イタリア映画「夫婦の危機」ポスター

ナンニ・モレッティ特集上映枠の中のひとつ。音楽担当は、数多くのサントラを手掛けるFranco Piersanti(フランコ・ピエルサンティ)。挿入歌に採用されたのはSalvatore Adamo(サルヴァトーレ・アダモ)が歌う「Lei(レイ / 意:彼女)」(1966)です。“アダモ”と言えば、“シャンソン歌手”というイメージが強いと思います。確かにその通りなのですが、ファーストネームが“サルヴァトーレ”から推察できる通り、実はイタリアはシチリア生まれのイタリア人です。幼少期にベルギーに移り住んでフランス語圏で育ち、主にフランス語で歌うようになったというのが来歴です。実はイタリア語歌唱の曲も結構たくさんありますので、シャンソン歌手のアダモとは異なる側面も楽しむのも一興かと思います。


アダモ
アダモ