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プローチダ“イタリア文化首都2022”記念コンサートにエンツォ・アヴィタービレ登場!

ナポリ湾に浮かぶ小さな島Procida(プローチダ)“イタリア文化首都2022”に指定されました。これを記念して、ナポリ出身のレジェンド音楽家Enzo Avitabile(エンツォ・アヴィタービレ / 67歳)が、日本人に向けての記念Webコンサート『アコースティック・ワールド』を公開!


トレーラー映像はこちら↓

企画・提供:イタリア文化会館-大阪 https://iicosaka.esteri.it/iic_osaka/ja/

配信場所:イタリア文化会館-大阪 イベントオンライン



“イタリア文化首都”とは?

2015年から毎年選定され、1年間、その都市での暮らしや文化の発展にスポットライトが当てられて紹介されている制度です。


“プローチダ”とは?

プローチダは映画『イル・ポスティーノ』(1994)の舞台となった、南イタリアはナポリ湾に浮かぶ漁業の島で、カラフルな家が立ち並ぶ姿から、日本でも日本旅行業協会(JATA)の「ヨーロッパの美しい村30選」に選ばれ、JAXA宇宙飛行士の野口聡一さんのTwitter上で、宇宙から撮影したプローチダ島の写真とともに“ネコの形をした島”、“ナポリ湾の宝石”として紹介されました。



熊野-ソレント姉妹都市20周年記念コンサートにダニーロ・レア登場!
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よしおアントニオ / 2021.11.30


“エンツォ・アヴィタービレ”とは?

エンツォ・アヴィタービレ(※日本では“アビタビーレ”といった表記が目立ちますが、“アヴィタービレ”が正解)は、シンガーソングライター、Sax奏者(音楽院ではフルート専攻)として著名な音楽家で、自身の出自であるナポリ文化圏の伝統音楽に根ざしつつも、ブラックミュージックをはじめワールドミュージックの要素を含むサウンドと、ナポリ方言で歌うスタイルでアイデンティティを確立。その作品群は、プロの音楽家たちの耳にかなったシンガーソングライター作品に贈られる栄誉あるタルガ・テンコ賞を2度(2009年・2012年)も受賞していることからも、ミュージシャンズミュージシャンとして高い評価を得ていることが判るでしょう。


70年代初頭のナポリのアヴァンギャルドなミュージックシーンに参加して(バンドCittà Frontaleチッタ・フロンターレなど)頭角を現し、死後もイタリア人の心に残り続けるシンガーソングライターPino Daniele(ピーノ・ダニエレ / 1955-2015 / ナポリ出身)やイタリアの永遠のロック兄貴Edoardo Bennato(エドアルド・ベンナート / 75歳)を支えたSax奏者としても、その名演が今もイタリア人やイタリア音楽愛好家たちの耳に届け続けられているミュージシャンでもあります。


エンツォ・アヴィタービレ

その活躍はイタリア国内に留まらず、ジェームス・ブラウン、ティナ・ターナー、マーカス・ミラー、リッチー・ヘブンス、ランディ・クロフォードといった日本でもお馴染みのビッグ・ネームたちとも共演しているほか、ユッスー・ンドゥール、モリー・カンテといったワールドミュージックの旗手たちとのコラボでも知られています。2003年に国際ワールドミュージック・フェスティヴァル“地中海の小道”の芸術監督に就任してもいます。


エンツォ・アヴィタービレ

映画『羊たちの沈黙』で有名なジョナサン・デミ監督(米)がアヴィタービレに惚れ込み、彼の密着ドキュメンタリー映画『エンツォ・アヴィタービレ』を製作し、同作が第69回ヴェネツィア国際映画祭で上映されたことでも話題になりました。


自身も映画音楽を度々手掛け、2017年には、ナポリが舞台の映画『Indivisibili(インディヴィジービリ / 意:分離できない)』(エドアルド・デ・アンジェリス監督)のサウンドトラックで、イタリア最高峰の映画賞ダヴィッド・ディ・ドナテッロ最優秀音楽家賞&最優秀楽曲賞を受賞しています。2019年にも同監督の映画『Il vizio della speranza(イル・ヴィーズィオ・デッラ・スペランツァ / 意:希望の悪徳)』でもうひとつの栄誉ある映画賞の銀のリボン最優秀サントラ賞を受賞しています。


映画『インディヴィジービリ』の主人公は“分離できない”シャム双生児姉妹
映画『インディヴィジービリ』の主人公は“分離できない”シャム双生児姉妹

映像構成

この映像は以下のような構成となっており、冒頭にプローチダ村長のあいさつもあり、有名な観光地化された島が多いナポリ湾の中で、プローチダ島の素朴で美しい風景がふんだんに取り入れられた映像も見ものです。


1.ライモンド・アンブロジーノ(プローチダ村長)からのメッセージ(1:49~)

2.エンツォ・アヴィタービレのアコースティック・ライヴ(3:53~)



セットリスト

  1. ドン・サルヴァトーレ(Don Salvatò)3:53~
  2. 子どもたちは皆平等(Tutt’egual song’ ‘e criatur)7:52~
  3. 海 – 心(Thalassa cardia)11:18~
  4. 恵みの聖母(Madonna delle Grazie)17:26~
  5. ナポリ・ノルド(Napoli nord)20:59~
  6. 海を眺める娘(Figliòla ca guarde ‘o mare)27:31~
  7. これがアフリカ(Chest’è l’Africa)30:16~
  8. 手に手をとって(Mane e mane)36:21~
  9. ソウル・エキスプレス(Soul express)40:20~
  10. 世界を救おう(Salvamm ‘o munno / 2004)45:44~

楽曲解説

1. ドン・サルヴァトーレ(Don Salvatò)3:53~
14thアルバム『Napoletana(ナポレターナ)』(2009)収録曲。“ドン”は聖職者の敬称で、サルヴァトーレ(南部なまりではアクセント以下が省略されて“サルヴァト”)とは助け人、すなわち救世主のこと。エンツォは“希望の歌”と紹介しています。冒頭からエンツォはマイクロミニサイズの6弦楽器アルピーナ(意:小さな竪琴)こと、ペンタルパ・ナポレターナを奏でています。


エンツォ・アヴィタービレ

2. 子どもたちは皆平等(Tutt’egual song’ ‘e criatur)7:52~
11thアルバム『Salvamm ‘o munno(サルヴァンム・オ・ムンノ / 意:世界を救おう)』(2004)収録曲。ブカレスト(ルーマニア)、バグダード(イラク)、アルバニア、セルビア、アフガニスタン、クルディスタン(クルド人居住地)、ハイチ(カリブ海)とたくさんの地域名が登場し、ギニアの音楽家Mory Kanté(モリー・カンテ)がエスペラント語で書いた子守歌をナポリ語とスワヒリ語で歌うという、まさにワールドミュージックな作品。《退廃と苦しみの中で生きる世界中の子供たちに捧げる》と紹介しており、“誰もが誰もの子ではない”、“(子供は)皆、愛から生まれた”という歌詞が光ります。


3. 海 – 心(Thalassa cardia)11:18~
2000年前の言葉(今も南イタリアで使われている)で歌われる作品。ここでエンツォは、この楽曲を再解釈するために自身が改造したサックスSaxelloに持ち替えます。見た目はソプラノ・サックスですが、チャルメラっぽい音色を奏でています。


Saxelloを演奏するエンツオ・アヴィタービレ
Saxelloを演奏するエンツオ・アヴィタービレ

4. 恵みの聖母(Madonna delle Grazie)17:26~
12thアルバム『Sacro Sud(サクロ・スッド / 聖なる南部)』収録曲で、正式タイトルは「Rosario della Madonna delle Grazie(ロザリオ・デッラ・マドンナ・デッレ・グラツィエ / 意:恵みの聖母のロザリオ)」。エンツォ自身が奏でるタンブッロ(イタリア南部の伝統的なタンバリン)のみのシンプルなアレンジで披露されています。原曲とはかなり異なるアレンジですので、聞き比べてみるのもお勧め。民間信仰が根強い南イタリアらしく、聖母マリアに最大の賛辞が贈られている歌詞。


5. ナポリ・ノルド(Napoli nord)20:59~
《ナポリ音階に加えてギリシャ起源の長音階と短音階を取り入れ、言葉・音・身振り・踊りの4要素で構成されるのが僕らの音楽》とエンツォは説明し、パーカッションのEmidio Ausiello(エミディオ・アウジェッロ / ※アンドレア・ボチェッリのレコーディングにも参加)が奏でるタンブッロを“話すタンブッロ”と評し、“音は言葉になり。言葉は音になる”と説明しています。エミディオの神がかったタンブッロ独奏に続いて始まる楽曲「ナポリ・ノルド(意:北ナポリ)」は、17thアルバム『Lotto infinito(ロット・インフニート / 終わりなき賭け)』(2016)収録曲。ナポリっ子がナポリを歌う曲あるある、のように、やや自虐的に我が街の悪口を挟みながら郷土愛を歌っています。


6. 海を眺める娘(Figliòla ca guarde ‘o mare)27:31~
栄誉あるタルガ・テンコ賞に輝いた14thアルバム『Napoletana(ナポレターナ)』(2009)収録曲。この楽曲で歌われている“娘”とは、海に臨む大地を意味しており、《プローチダこそ、この海を眺める美しい娘》であり、《世界と海を越えてやってくる人々を抱きしめる母である》とエンツォは語っています。


7. これがアフリカ(Chest’è l’Africa)30:16~
11thアルバム『Salvamm ‘o munno(サルヴァンム・オ・ムンノ / 意:世界を救おう)』(2004)収録曲。ひたすら“これがアフリカ、さあ、召し上がれ!”というモチーフが繰り返される楽曲です。Gianluigi Di Faenza(ジャンルイジ・ディ・ファエンツァ)が奏でるアコースティック・ギターにエフェクトがかけられ、変化に富んだ音色で奏でられるのも聴きどころ。


8. 手に手をとって(Mane e mane)36:21~
10thアルバム『O-issa(オ・イッサ / 意:さぁ、よいしょ)』(1999)収録曲。前出のモリー・カンテとの共作で、ベナン共和国(西アフリカ)の学校教育のためのユニセフ・プロジェクトのためにナポリ言葉とアフリカ言葉のミックスで書かれた楽曲です。


9. ソウル・エキスプレス(Soul express)40:20~
4thアルバム『S.O.S. Brothers』(1986)収録で、エンツォ最初の大ヒット曲であると同時に、エンツォが掲げる“言語の非アメリカ化”の探求の第1歩となった楽曲ゆえ、とても大事な曲だそうです。《世界に向けて発信する際に、自分たちのルーツを自分たちの言葉で届けよう》というコンセプトには共感せずにはいられませんね。といいつつ、本コンサートでは唯一のイタリア語(=イタリア共通語)で歌われた楽曲です。


イタリア人音楽家たちがよく好んで使う“Contaminazione(コンタミナツィオーネ / 意:混成)”という言葉も使っています。それはジェームス・ブラウンらブラックミュージックの偉人たちとの出会いから、ユッスー・ンドゥールらのワールドミュージック人脈に至る交流から生まれた“幸せの混成”とのこと。


10. 世界を救おう(Salvamm ‘o munno)45:44~
同名の11thアルバム(2004)収録曲。“大地があれば山があり、山があれば森がある…”と始まる歌は、“僕らは皆ひとり”と歌い継がれ、サビはひたすらタイトルが連呼されて歌われます。エンツォは《世界の希望の曲。平和と音楽に万歳!》とこのコンサートを締めくくります。


左からエミディオ・アウジェッロ(Perc)、ジャンルイジ・ディ・ファエンツァ(Gt)、エンツォ・アヴィタービレ
左からエミディオ・アウジェッロ(Perc)、ジャンルイジ・ディ・ファエンツァ(Gt)、エンツォ・アヴィタービレ