イタリアのミュージックシーンにおいて最も愛されているアーティストの一人「エンマ(EMMA)/エンマ・マッローネ(Emma Marrone)」をご存じですか?
2012年、「Non è l’inferno」で第62回サンレモ音楽祭で優勝。13のプラチナ・ディスク獲得、フェイスブックでの300万「いいね」、インスタグラムでは60万人のフォロワー、ツイッターでは250万人のフォロワー、Youtubeのチャンネルは2億4千万の視聴回数を記録し、Spotifyからストリーミング上で最も聴かれているイタリア人女性アーティストとして認定されるなど、イタリア、そしてヨーロッパをはじめ、世界的にも支持を集めるアーティストです。
Emma – L’Isola
今回、日本最大級のイタリアンフェスティバル「イタリア・アモーレ・ミオ!(Italia Amore Mio 2018)」でのライブパフォーマンスのために初来日を果たしたエンマに、日本の印象から音楽にかける想いまでお聞きしました。
イタリアのアーティスト エンマが初来日で楽しんだことと
–今回は初来日とのことですが、いつ日本に着きましたか?
3日前です。
–日本の印象はいかがですか?
文化的なモダニズムとしても素晴らしく、ショックを受けました。日本で得たことをイタリアに持ち帰れることをうれしく思います。
–日本では何を楽しみましたか?
渋谷のキャットストリート……あと名前は覚えられてはいないのですが、さまざまな場所を訪れ、しゃぶしゃぶなどいろんな食事を楽しみました。
–それはすばらしい! しゃぶしゃぶはお口に合いましたか?
それはもう(笑)。ヴォーノ!
–エンマさんはすごくファッショナブルな印象ですが、日本では買い物も楽しんだのでしょうか?
日本のスタイルが大好きなのでたくさん買い物したかったのですが、実際には少しだけ。日本のショップはディスプレイもすごくオシャレでした!
–イタリアとはディスプレイも違うんですね。
日本では美しく整理整頓されているということがひとつ。もうひとつはいろいろなスタイルのものがミックスされているということが特徴的だなと思いました。
–日本を楽しんでいただいてうれしいです。逆に、イタリアを訪れる日本人にお勧めしたいことは?
もう、イタリアのことでいえばきりがないです(笑)。建築や美術館、博物館などたくさんの文化的な作品がありますし、そして外せないのが食事。イタリアほどおいしものがいろいろ食べられる国って他にないんじゃないかしら?
–なるほど、すぐにでもイタリアを訪れたくなりました! 明日のライブの後もしばらくは日本に滞在する予定でしょうか?
実はすぐに日本を発ってしまいます。ラスベガスで「ビルボード ラテンミュージックウィーク(Billboard Latin Music Week)」に参加するためです。その後すぐにイタリアに戻って国内ツアーをまわります。
アーティスト・エンマとして音楽と向き合うこと
–今回の来日でエンマさんを知った日本人に、自身をどのようなアーティストだと理解してもらいたいですか?
それは音楽的に? それとも人として?
–両方ですが、どちらかというと人としてのイメージです。
OK。私にとって音楽というのが自分自身です。通常の私が音楽の中にあって、音楽の私が通常の中にある。私はそういう人間です。
つまり私はものすごく他人に優しくしたいという心を持っていて、同時にものすごく好奇心にあふれていて、それが私の音楽でもあります。
–イタリアをはじめ世界的に大きな支持を得ておられますが、人々を惹きつけるユニークな魅力はどこにあると思いますか?
うーん……まず、ある人が私に出会って私の目を見てすぐに分かるのが、私が正直な人間であるということ。そして、音楽的にはステージ上の力強さでしょうか。
–アルバムからも力強さは感じられました。
グラッツィエ(笑)。
–またアルバムを通して聴いて、エンマさんの音楽性の幅広さにも驚かされました。いま、イタリアのミュージックシーンではどのようなジャンルが人気ですか?
残念ながらイタリアでは音楽の幅がどんどん狭くなってきています。いま流行っているのは「トラップ(Trap)」というヒップホップのスタイルです。
–なるほど。エンマさんが、影響を受けたアーティストは?
小さい頃からずっと音楽を聴いていましたが、一般的にはイタリアのシンガーソングライターを聴いて、それを吸収して、いまは何倍にもふくらましてステージ上から表現しています。
–2018年リリースの最新アルバム『Essere qui』について教えてください。インスピレーションやエクスプレッションなど、新たに挑戦した部分はなんですか?
スタジオでの収録に参加してくれた多くのミュージシャンたちがインスピレーションを与えてくれました。たとえばジャミロクワイのベーシスト、ポール・ターナーの参加もそうです。さらにツアーでは同じくジャミロクワイのドラマー、デリック・マッケンジーも参加してくれています。
–楽曲のボルテージもあがりそうですね。
もちろん! 今回は彼らの音楽の雰囲気を自分に取り入れることも目的でした。私は私自身についてポップミュージシャンだとか、何かの肩書きを付けて表現したことはありません。それはいろいろな変化を受け入れられる人になりたいからに他なりません。
–この先のビジョンについて教えてください。
いま私に最もインスピレーションを与えてくれるものはコンサートです。なので、いまコンサートを目前に控えていて次のことを考えるということはできません。
ただ、私が常に念頭においていることは、心を使って、頭を使って、音楽を作っていくということ。音楽はなんとなくで作るものでなく、アーティストとして、また職人としての心を込めて向き合っていきたいと考えています。これを目標と言えるのかは分かりませんが、これからもやり続けていくことです。
–音楽と真摯に向き合い続けること。ミュージシャンとして活躍し続けている理由の一端が垣間見えました。最後に日本のリスナーにメッセージをお願いします。
本当により多くの人に私の音楽を聴いていただきたいです! 日本に来ることもひとつの賭けでしたが、多くの人に知っていただけました。そして今回、私がイタリアに帰るときには間違いなく幸せだと思います。
–明日のコンサート楽しみにしています!
私もです(笑)。
音楽はバリアを打ち壊してくれます。情熱を持ってパフォーマンスをすることで何かが起きてくれると信じています。
翌日、2018年4月21日の夕刻、天王洲アイルにパワフルなボーカルが響きはじめる。イタリアンフェスティバル「イタリア・アモーレ・ミオ!」に訪れた多くのイタリア人、そして日本人も、その声の主に一瞬にして目と心を奪われたよう。エンマのフリーライブがスタートした。
徐々に暮れゆく群青色の空の真ん中には夕月が浮かび、水面に都会のネオンが輝く水上の野外ステージという最高のロケーション。天気もバッチリ 、超爽快! 最新アルバム『Essere qui』のナンバーを中心に、新旧バラエティ豊かな楽曲を織りまぜたセットリストで、フリーライブながらたっぷり約1時間にわたる圧巻のパフォーマンスを披露。その歌声は言葉の壁をこえて誰もの胸を打ち、アンコールあたりには盛り上がりも最高潮に。その感動を物語るかのように、ライブ終了後には会場のCD販売に長い行列が! また日本に来てね、グラッツィエ、エンマ!
取材協力:在日イタリア商工会議所(www.iccj.or.jp)
テキスト:AGARU ITALIA(あがるイタリア)編集部