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ローマ発の3人組バンド「ElleBorN(エールボーン)」 初来日インタビュー

「ElleBorN」とは、Elle(エール、ヴォーカルとシンセ)、Lucio De Angelis(ルーチョ・デ・アンジェリス、ドラムと電子パッド)、Simone Fedele(シモーネ・フェデーレ、ギターとシンセ)の3名によって永遠の街ローマにて結成されたプロジェクトです。ElleBorNの音楽は、ロックやエレクトロなどの長年聴かれているジャンルからダブステップのような比較的新しいジャンルまで多くのジャンルに及び、メンバーの実生活に於けるシチュエーションや人間として共感できる経験や感情などについて歌っているイタリアバンドです。

彼らの冒険は、パソコン一台とソファだけで、音楽を通して自分たちの情熱的なメッセージを世界中の人々へ届けたい!という気持ちから2014年に始まりました。今回は日本での初ライブがきっかけで、ElleBornのみなさんに会うことができ彼らのプロジェクトやファンの方々へ届けたいメッセージなどを伺ってきました。

※グループのリーダーの役割を果たしているカリスマのエールさんがメンバー全員を代表して答えてくれました。

東京は大都会にしては静かでローマにない落ち着いた雰囲気

――日本は初めてですか? 日本文化のどこが好きですか?

はい、そうです。三人とも初めての日本旅行でとても楽しんでいます。イタリアでは普段経験できないことばかりで良い意味で驚きだらけの毎日です。特に印象に残っているのは日本人の優しさや、困っている私たちを見ていつも助けてくれることなどですね。礼儀正しく、大騒ぎをしたりすることもあまりなく、エレガントで落ち着いた姿を見せてくれるところもかなり素敵だと思いました。東京もそうですが、大都会にしてはとても静かで、ローマにない落ち着いた雰囲気に魅了されています。

――さて、ElleBorNというバンドですが、メンバーそれぞれの自己紹介をお願いできますか?  そして、バンド名の由来について聞かせてください。

もちろんです。3人を代表して紹介させていただきます。私がヴォーカルとシンセを担当しているElle (エール)と申します。ドラムとパッドを担当しているのがLucio(ルーチョ)で、ギターとシンセを担当しているのがSimone(シモーネ)です。私たち三人でElleBorNです。よろしくお願いします!  バンド名の「ElleBorN」ですが、「ELLe」とは昔私が関わっていたプロジェクトに由来していて、今でも使用しているニックネームです。「BorN」に関しては、「生まれる」という意味でメンバー全員に適用するものですが、過去のプロジェクトを一旦クローズして生まれ変わったかのように新たな人生へと向かうという意味合いでつけました。


ボーカルのエール

15年ぶりに偶然再会したことからバンドを結成


――「ElleBorN」の歴史について聞かせていただければと思います。

「ElleBorN」の結成は、2014年に私とルーチョが15年ぶりに偶然に再会したことから始まりました。その当時お互いはそれぞれのプロジェクトに取り組み、音楽関係の仕事に携わりプロの音楽家としてすでに長年活躍していました。お互いの近況報告の後、ゼロからバンドを結成しないかという話になり、この流れでElleBorNを結成することになり、私たちは早速作曲などに取り組みました。最初は5人でしたがメンバーの多少の入れ替わりで編成が変わり、結成して1年半経ったところでシモーネが現れて現在の三人構成のElleBorNになりました。

――ElleBorNのメンバーは3人ともイタリア人なのに曲は全て英語のようです。それはなぜですか?

それは、実は私が決めたことなんです。他のメンバーも賛成しているんですねどね(笑)。理由としては、歌ということになるとイタリア語より英語の音や発音の方がしっくりくると思うからです。イタリア語で歌う時の私の声は、全く違う音色になるし、サウンド的にもだいぶ印象が変わってくるということで英語で歌うことにしました。人生で一番最初に作った曲も英語でした。あと、もちろん英語ならではの普及力のおかげで国際的に活躍できるというのも大きいですね。最終的にはイタリアだけではなく、世界中のなるべくたくさんの人に私たちのメッセージを届けたいと思っています。


ドラムのルーチョ

メッセージは、周りに対しても自分に対しても愛を込めて生きること

――ElleBorNが音楽を通して届けるメッセージとは、どのようなメッセージでしょうか?

ElleBorNの曲は、私たちメンバーや周りの人々の経験から感じたことや得たもの、また実生活におけるシチュエーションなどを表現したものです。曲のメッセージがそれぞれ違うものでありながらも、最終的には「周りに対して、また自分自身に対しても愛を込めて生きること」というメッセージになります。心の奥に秘めた感情を打ち明けることに怯えず心の扉を開けば人生は変わるよ、というメッセージ。要するに、無難に表面だけで生きる人生へのアプローチではなく、より深く掘り下げることによって自分の「個」を解放して自分自身でいられるようなアプローチです。

――今回はライブのために初めて来日されているとのことですが、日本のオーディエンスの反応はどうでしたか?

いくつかライブをしてきたのですが、初めての日本ということでファンクラブがないのにもかかわらず、今までの反応はすごく良く、みなさん興味深く聴いてくださっていると思います。私たちのジャンルはロックやエレクトロなど、日本に馴染みのあるJ-POPのようなメジャーなジャンルからは若干離れたジャンルです。日本の方が受け入れてくれるか少し不安でしたが、新たなトレンドが到来したかのように良い意味で驚かれているようです。例えば、イタリアと比べて日本のオーディエンスの方が理解があるように感じることがあります。

今現在イタリアで流行っているのがギターとヴォーカルのみでの「シンガーソングライター」というジャンルで、たくさんの楽器を活かすうちのスタイルは、通常ラジオで流れるメインストリームな音楽と違い、ちゃんと聞いてくれないとなかなか相手の心に届かないものだと思いますね。そういった意味では、日本のオーディエンスの方が積極的で、真面目といっていいかはわからないのですが、私たちのバンドの独特なジャンルの複雑なニュアンスを理解しようとしてくれている気がしました。あと、今回が初めての海外演奏だったのでかなり緊張していましたが、日本の皆さんのおかげでとてもやりやすくて大満足でした!


ギターのシモーネ

日本ではおもてなしや暖かさ、優しさを学んだ

――初めての海外演奏で東京というのは、ヨーロッパのバンドとしてはなかなか珍しい選択ですね。

そうです。イタリアを出てまずヨーロッパで演奏しようと思っていくつか問い合わせてみたのですが、なかなか返事がなくて。冗談半分で日本のライブハウスに連絡を入れてみたら、「ぜひ、やりましょう!」とすぐ返事が来て正直びっくりしました。なぜ日本に問い合わせてみたかというと、日本にはライブハウスが多く複数の楽器のサウンドチェックの対応もきちんとやってくれると知り合いから聞いたからです。

あと、個人的に日本に興味もあり、どうしてもアジアに行ってみたかったんです。まだそこまで有名でないうちみたいなイタリアバンドにいきなり「日本で演奏しろ」と言われると、だいたいみんな文化の違いや物理的な距離が怖くて拒否します。しかし我々は自らのコンフォートゾーンから離れて挑戦してみないとなかなか良い物は生まれないという考え方を持っているので、迷わず「はい!行きます!」と言って荷物の準備をしてきました。本当に感謝しかないですね。

――あと数日でイタリアに帰国されるとのことですが、日本で出来た経験や日本で学んだことなど、荷物とともに何をイタリアに持って帰りますか?

人間関係の面では、日本人のおもてなしや温かさ、優しさですね。イタリア人と違ってスキンシップなどに慣れてはいないけれど、ハグしたりすることに憧れていて外国人と接した時にはハグをしてくれるような印象でした。皆さんにこんなに快く歓迎されて感謝の言葉しかありません。仕事に関しては、何もかもサポートしていただいて、どこのライブハウスでも技術のスタンダードが非常に高く、細かいことへの注意が素晴らしい。本当に、非の打ち所がない対応でした。イタリアに帰国したら、日本人による音楽への純粋な情熱さや愛情についてイタリアのオーディエンスにも語りたいです。我々は、オリジナリティーがキーワードだと思っています。日本ではElleBorNのようなジャンルを演奏するバンドがまだ少ないので私たちがきっかけを作り、また日本で演奏できることを今からとても楽しみにしています!

■プロフィール
Elle(エール/ヴォーカルとシンセ)、Lucio De Angelis(ルーチョ・デ・アンジェリス/ドラムと電子パッド)、Simone Fedele(シモーネ・フェデーレ/ギターとシンセ)の3名によって結成されたプロジェクト。結成から一年半後、シモーネがバンドに加入。彼らの音楽はポップロックからエレクトロに渡り、人々の生活に影響を与えるような人生や個人的な経験を歌詞にしている。

イタリア各地で多くのライブを行っている彼らは、2016年3月末、セルフプロデュースで制作したライブプロモーションビデオ「Perfection」をリリース。本作には彼らの初めてのレコードも収録されている。また、2016年12月16日には、初のオフィシャルシングル、そして映像となる「Renaissance」(Cramps Music Editions)をリリースし、多くのイタリアのラジオチャートで一位を獲得。続く1stアルバム『Just a Grain Of Sand』と最新シングルと映像「Jasmine」を2017年9月にオンラインショップ限定でリリースした。

2017年7月には、「Nuovo Imaie」「Believe Digital」「All Music Italia」による協賛で開催された「Contatto Diretto」という大会で優勝。優勝賞品として4つのEP、ビデオクリップ、Believe Digitalとの販売権を獲得。2018年5月下旬には東京6か所の会場でツアーを行い、日出ずる国に彼らの音楽を持ち込んだ。

現在は新しいEPと映像を制作中。

ElleBorNの来日公演をプロデュースしたクラウディオ・トデスコ(Claudio Todesco)氏のコメント

ElleBorNはエレクトロ、ポップ、ロックを融合した三人組のバンドです。彼らのジャンルの調和はあまりにも影響力が大きく、語っても語り尽くせないほどです。Expolive Projectとボーカルのエッレの粘り強さによって東京でのライブは実現しました。全く異なるオーディエンスの前で演奏するという挑戦心と日本文化への愛から、東京への想いはあったようです。英語が彼らのコミュニケーションツールですが、そのせいで彼らのイタリアというルーツが弱まるということはありません。彼らは東京で大歓迎され、多くのバンドと共演しました。本番前の衣装室でのヘアスタイリング、どれだけ小さなクラブでも入念に行われるサウンドチェック、幅広い年齢層の観客、日本から学んだ新しいこと全てをイタリアへ持ち帰りました。「もう一度来る価値のある体験だった」と彼らは断言します。彼らを責めることはできません。彼らは“東京病”に感染してしまったのですから。