CULTURE

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日本の春といえばお花見、ではイタリアの春といえば?

イタリア人も花見をする?

日本の春といえばお花見。
そこで日本人からよく聞かれるのが「イタリアでもお花見はあるのでしょうか」という質問。


イタリアでも日本旅行の人気が高まっている近年、特に人気なのはやはり桜のシーズンです。
HANAMISAKURAはイタリア人の間でもそのまま使われているほどで「日本で満開の桜を見たい!」というイタリア人がとても多いです。
そんなイタリア人たちは花見をするかというと、日本のように桜の木の下で宴会といったようなことはしませんが、花が見頃を迎える頃に庭園などへ出かけて花を鑑賞したり、花が咲く庭などでピクニックを楽しんだりします。


イタリア、フィレンツェの春の楽しみ、花が咲き誇る庭園巡り

フィレンツェが「花の都」と呼ばれることをいつも以上に実感するのはやっぱりこの時期。
春になると街中で様々な花が咲き誇り、フィレンツェはとても華やかになります。
特に見ごたえがあるのが藤の花。
日本のように整然と手入れされているのではなく、フィレンツェの藤はワイルドに咲き乱れるので迫力がありますよ。


バルディーニ庭園の藤の花のトンネル
バルディーニ庭園の藤の花のトンネル

藤の花のトンネルで有名なバルディーニ庭園にはトンネルをくぐり抜けた先にカフェがあり、フィレンツェの街を眺めながらコーヒーやワインを楽しむイタリア人や観光客で賑わいます。


フィレンツェの壮大なパノラマを見渡せるミケランジェロ広場の近くにはローズ庭園とアイリス庭園があり、ローズ庭園では350種類ものアンティークローズが、アイリス庭園では150種類以上のアイリスが楽しめます。


アイリス庭園

これら3つの庭園はいずれも近くにあり徒歩で回れます。
ミケランジェロ広場を訪れた際には庭園へも足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。


イタリアの春の祝日といえばパスクア(復活祭)

イタリアでは春に復活祭を盛大に祝います。
英語ではイースターといいますが、イタリア語ではpasqua(パスクア)と言います。
クリスマスと同様に観光地以外ではお店の多くが休業になります。
復活祭は毎年日付が変わる移動祝日で2022年は4月17日(日)、そして翌月曜日はpasquetta(パスクエッタ)と呼ばる祝日になり、学校も会社も休みになります。
パスクエッタには、日本のお花見のように、多くのイタリア人がピクニックへ出かけたり、バーベキューを楽しんだりします。


フィレンツェの老舗カフェGiLLi(ジッリ)のショーウィンドー
フィレンツェの老舗カフェGiLLi(ジッリ)のショーウィンドー

イタリアの街中に溢れる卵型の包みの正体とは?

パスクアの一ヶ月前頃から、街中のバールやスーパーの店頭で目にするようになるのが華やかにラッピングされた卵型の包み。小さいものから、人の背丈ほどの巨大なものまで、大きさも様々。エレガントなラッピングからサッカーセリエAのデザインやハローキティ、ドラゴンボールといった子供向けのアニメの包みまで実に多種多彩です。


イタリアで初めてこの卵状の包みを見た時は、中身が何であるのか見当がつきませんでした。値段もわりと高く、無名ブランドのものでも大きめのサイズで18ユーロ前後(1ユーロ=125円換算で2250円)しますし、有名ブランドのものだと30〜50ユーロします。
みなさん、これが何であるかご存知でしょうか?


答えは・・・チョコレート
卵型のチョコレートは薄く、パカっと割ると中は空洞になっており、ビニールの包みやプレスチックケースが。その中にはキーホルダーなどの雑貨など、日本で言うところのお菓子のおまけが入っています。


ウォーヴォ・ディ・パスクワの卵型チョコレートと、その中に入っていたキーホルダー
ウォーヴォ・ディ・パスクワの卵型チョコレートと、その中に入っていたキーホルダー

このチョコレートはパスクワの贈り物で、uovo di pasqua(ウォーヴォ・ディ・パスクア=復活祭の卵)と呼ばれています。縁起物、季節もの、そしてイタリアの子供たちが毎年楽しみにしているもの。パスクアには家族が昼食会に集まり、食事後にみんなでチョコレートの卵を割り、中身に一喜一憂しながら楽しく団欒するのがイタリアでの一般的なパスクアの過ごし方です。


華やかな包みで見栄えがし、日本には無いものなのでお土産にしたいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、チョコレートが薄く壊れやすいので、残念ながらお勧めはできません。


フィレンツェのパスクアは350年の歴史ある伝統行事が開催

フィレンツェには、パスクアの日に行われる伝統行事があります。
フィレンツェのシンボル、ドゥオモの真正面で爆竹が激しく弾けるイベントで、scoppio del carro(スコッピオ・デル・カッロ=山車の爆発)と呼ばれています。
起源は350年ほど前にさかのぼるほど歴史ある行事で、大観衆の前で山車に仕掛けられた爆竹や花火が次々に弾けます。


山車に仕掛けられた爆竹や花火が次々に発火、約10分に渡り爆発が続きます。
山車に仕掛けられた爆竹や花火が次々に発火、約10分に渡り爆発が続きます。

ドゥオモ大聖堂の祭壇でcolombina(コロンビーナ=鳩)の形をしたロボットに火が灯され、そこからワイヤーをつたってロボットが山車にたどり着いて爆竹に点火されることから爆発が始まります。


私が初めて見に行った時は何も知らず、一緒に見に行ったフィレンツェ市民の友人から「ドゥオモから鳩が出てきて山車に点火するのよ」と説明され、「よく調教された、伝書鳩のようなリアルな鳩が出てきて点火後に逃げ去る」という想像をしたのですが、出てきたのは明らかに鳩のロボット。
「なんだ偽物じゃないの」と言うと、友人から「当たり前でしょーが!」と一蹴され、そりゃそうだと納得。
大観衆の目の前で鳩が丸焼けになるなんて縁起でもないですね・・・。


この行事は、最初のロボットの鳩の点火から最後に山車の上に旗が出てくるまで、全ての工程が滞りなく成功すると、豊作・繁栄・幸運がもたらされるという願掛けのような意味を持っています。
ですからパスクアの日にはフィレンツェでは「今年のスコッピオ・デル・カッロはうまくいったの?」が市民たちの間で交わされる会話になります。


私が最初に見た年は2012年でしたが、最後の方の工程で不発があり「こりゃあ縁起が悪い・・」と友人が呟いていました。この願掛けはあながち侮れず、確かに2012年というその年はイタリアは実質GDP成長率がマイナスに転じるなど不景気まっしぐらの年になりました。なんと恐ろしいっ!今年もスコッピオ・デル・カッロの動向が気になるところです。


イベント終了後の山車。非常時に備えて消防隊や警察官も動員されます。
イベント終了後の山車。非常時に備えて消防隊や警察官も動員されます。

スコッピオ・デル・カッロのスタートは午前11時頃ですが、一時間前には既に多くの人でごったがえしになっています。
もし前方でしっかり見たいのでしたら午前10時よりも前に着くことをお勧めします。
思わず耳を塞いでしまうほど派手な爆竹音と花火の刺激的なスコッピオ・デル・カッロ、実際に体験してみてはいかがでしょうか。