11月5日に閉幕した東京国際映画祭で、みごとイタリア映画『裏か表か?』のアレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督、マッテオ・ゾッピス監督が最優秀監督賞を受賞しました。イタリア映画の未来を担うふたりの受賞は、イタリア映画界にとってもうれしいニュースです🎊
ローマの空港で受賞を知ったふたりの監督
第38回 東京国際映画祭は、東京グランプリをアンマリー・ジャルシ監督の『パレスチナ36』が受賞して幕を閉じました。最優秀監督賞を、中国映画『春の木』のチャン・リュル監督とともに受賞したのが、イタリア・米国映画『Testa o Croce? 裏か表か?』のアレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督、マッテオ・ゾッピス監督です。審査委員のヴィヴィン・チュウ(監督・プロデュユーサー)は、「新しく国の歴史を塗り替えた、二つの異なる映画に心を動かされました」と語りました。
すでに帰国してローマの空港で受賞の知らせを聞いたふたりは、「とてもうれしい!」「とても興奮している!」とコメント。「東京で素晴らしい時を過ごしました。映画を観てもらったこと、観客からの反応、映画祭が私たちを招き入れてくれたこと、本当にありがとう」と語りました。そして、日本語で「ありがとう!」と告げた後、またすぐに会いましょう!とコメント。日本での劇場公開が決まったら、また来日してくれるかもしれません。
イタリア流のシュールなアンチ・ウェスタン
『裏か表か?』は、ナディア・テレスキウィッツを主演に迎え、米国の人気俳優ジョン・C・ライリーがキーパーソンを演じる、西部劇へのオマージュあふれる作品です。

途中まで正統派の西部劇っぽく進行していた物語が、あるところから転調し、シュールな世界観へ。正直、筆者は前半部分を退屈だと感じていたのですが、後半、俄然面白くなって目が離せない展開に。見終わってみると、窮屈なコルセットに縛られていた女性が解き放たれ、自らの手で自由を掴みとる物語だったのだと納得しました。

『裏か表か?』上映後に齊藤工を直撃!
実は筆者は、『裏か表か?』上映後、俳優・監督の齊藤工さんに映画の感想について直撃していました。審査委員ということで記事にはできないでいましたが、発表後ということで少しだけご紹介します。
イタリア人監督ふたりを知っていたか尋ねると、「今回は審査委員ということで、事前情報をまったく入れずに観ています」と斉藤さん。映画の感想については、「西部劇のスタイルをとっていますが、コルセットの話とか、鏡を光らせてカエルをとるシーンとか、すごくロジカルにできていて面白いと思いました」。

筆者は映画祭のコンペティション部門は、社会問題に正面から向き合った映画が強いと思っていたのですが、世界各国の映画祭を訪れている齊藤さんからみると、「いま映画祭もすごく多様になっていて、コンペティション向きの映画というものも無くなってきている」とのこと。イタリアで開催される映画祭にも行かれているそうですが、「最近のイタリア映画はどうですか?」と、逆に質問されるほど、本当に映画が大好きな人なんだなーと感動しました。
世界各国からコンペティションに選ばれた作品は15本。「鑑賞するのは、この映画が1本目なんです。つまり、このユニークな映画が審査の基本になるというのも、すごく面白いですね」と齊藤さん。どういう映画か簡単には説明できないシュールな作品『裏か表か?』の監督が最優秀監督賞を受賞したことは、東京国際映画祭の懐の広さを表していると思いました。
時代と多様性を映した東京国際映画祭
審査委員長を務めたイタリア人ジャーナリスト、カルロ・シャトリアンは、「生きている映画を映画祭で観ることで、映画というものの幅が、いかに広いものであるかということと向き合いました。この仕事は難しかったですが、多様性を尊重しました。さまざまな経歴、好みは異なりますが、すべての決定は合意の結果です。すべて満場一致で賞を贈呈しました」とコメント。

アンチ・ウェスタンとして、女性の成長と自立を個性的なタッチで描き出した監督たちのこれからの映画制作が、本当に楽しみです。
『裏か表か?』日本での劇場公開をお待ちください!


第38回 東京国際映画祭
最優秀監督賞『裏か表か?』
アレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督、マッテオ・ゾッピス監督
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