CULTURE 03 Sep 2020

【連載】大塚ヒロタとイタリアと、コメディア・デラルテ「愛すべきイタリアシリーズ vol.1」


「カルチャーショック!」イタリアでの生活はそれの連続だった。

私は師匠アントニオ・ファーヴァのコメディアデラルテに出会い、28歳の時にイタリアに渡った。それなりに海外生活にも慣れていたつもりだったが、この国には毎日の様に驚かされた。
例えば「高校の科学の論文のテストで全くわからなかったので、自分の好きなスパゲティボロネーゼについて熱く熱く論文を書くと、80点もらえた」とか、「ローマの市バスの運転手さんが、バスを運転している時にどうしてもローマ対ラツィオのサッカーローマダービーの試合が見たくて、お客さんを乗せたまま停留所を全部すっ飛ばしてバスで自宅に帰宅。しかも、バスに乗ってた人の半分がそのまま運転手さんの家で一緒に試合を見た」とか。本当か嘘かわからないような話に沢山出会った。
そんなエピソードはめちゃくちゃだな!!と思う反面とても人間臭く、そして愛らしいと感じるものばかりだった。この「愛すべきイタリアシリーズ」では私が実際に体験したそんなカルチャーショックな話を紹介していきたい。

一見悪口のように聞こえてしまうこのシリーズなので、初めにこの点を強く主張しておきたい。(笑)

ローマでお世話になったジュリア一家ローマでお世話になったジュリア一家

イタリアでは一度仲良くなると本当に人が温かい。日本とは比べ物にならないと私は思っている。私はインターネットの掲示板で知り合った同い年のイタリア人とルームシェアする事になったのだが、日本の漫画が大好きな彼には本当に何から何までお世話になり、今でも親交の続く大親友となった。当時は毎週末彼の実家に車で2時間かけて一緒に帰り、マンマの手料理をご馳走になった。彼の家族たちも「日本の息子」と私を呼び本当に可愛がってもらった。友達になった人は皆異国で生きる私を本当に家族にしてくれた。ただ、社会ですれ違う様にか関わる人はまるで別の印象だ。

親友のファビオ、ステーキフィオレンティーナにご満悦親友のファビオ、ステーキフィオレンティーナにご満悦

ファビオの実家のあるマントヴァファビオの実家のあるマントヴァ

「俺のせいじゃない!」

これは私が演じる召使アルレッキーノの口癖なのだが、イタリアの生活で何度となく聞いていた言葉から使うようになった言葉だ。
例えば、ある時イタリアの大手携帯電話会社の回線が全て機能しなくってしまったことがあった。それを知った私は、状況を確認したくてその携帯電話会社の路面店に入った。そして私が質問し始めた瞬間それを遮る様に若い男の店員は言った。

「俺のせいじゃない!」

そんなことはわかっている。なんでイタリア中の電話が止まってることを「お前のせいだ」と攻めることがあろうか。笑

この「俺のせいじゃない!」エピソードをもう一つ。

私はローマから特急電車に乗って、ナポリとポンペイをめぐる日帰りの一人旅に出かけた。ポンペイの遺跡は本当に素晴らしかったし、ナポリのピッツァはシンプルなトマトソースとフレッシュバジルとチーズのマルゲリータなのに、別次元の美味しさで感動しきりの大満足の旅だった。

ポンペイはまた訪れたい場所

ポンペイはまた訪れたい場所ポンペイはまた訪れたい場所

次の日も早くから稽古があった私は、ナポリ駅から18時前の特急電車に乗った。電車が遅れることで有名なイタリアだが、この日も他聞に漏れず発車予定時刻を過ぎても電車は一向に発車する気配はない。
最初は私も「そのうち出るだろう」と思って座っていたのだが、1時間経っても出発しない。そして、何のアナウンスもないのだ。周りの乗客たちは慣れたもので、新聞を読んだり談笑したりしている。しかし、そんなこんなで2時間経過してしまった・・・未だに何の情報もないし、喉も渇いてきたし、明日の稽古のことも気になるし、だからと言って飲みにものを買いに行っている間に出発してしまったら、たまったものではない。イライラがマックスに達した時、ホームを歩く駅員さんを見つけた!私は飛び降りて状況を彼に尋ねた!!

私  「あの、出発時間を2時間も過ぎてるのですが、何で出発しないのですか?」

駅員 「俺のせいじゃない

私  「。。。それはわかってるんですが、なぜ出ないんですか?」

駅員 「(ため息)よく聞けチノ、あそこに信号があるだろ、あれが赤いから出発しないんだ」

(注 イタリア人はアジア人のことを皆「チノ」(中国人)と呼ぶ。悪意はない。)

私  「・・・ん~、じゃあなぜ赤なんですか?」

駅員 「俺のせいじゃない

私  「・・・うん、じゃあ逆にいつ出るんですか?それがわかればカフェに行ったりできるんですけど」

駅員 「(ため息)チノ、さっきも言っただろ、この電車が出発するのはあの信号が青になった時だ」

私は諦めて元いた座席に静かに戻った。

あ~~~、愛すべきイタリアよ!! Ti Amo.

スタジオオリンピコはいつも熱い!!負けた日は帰りに必ず何か事件が起きている…スタジオオリンピコはいつも熱い!!負けた日は帰りに必ず何か事件が起きている…

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大塚ヒロタ

WRITER PROFILE
大塚ヒロタ

俳優、テアトロ コメディア・デラルテ主宰。NY で演劇を学びコメディア・デラルテと出会いイタリアに渡る。帰国後、映画「64 -ロクヨン-」の宇津木役、「図書館戦争」シリーズの野村役で注目を集める。 映画「キングダム」「唐人街探索」「楽園」、ドラマ「フルーツ宅配便」「ボイス110緊急指令室」、CM「ほっともっと」「中部電力」「よなよなエール」 ■最新の出演作は Twitter@hirotaotsukaでも随時更新中