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ブルネロ・クチネリ氏が建設する「ユニバーサル図書館」という構想

カシミヤに代表されるラグジュアリーブランド、「ブルネロ クチネリ」の本社はペルージャの中心から少し離れたソロメオ村にあります。氏の故郷にほど近く、奥様の故郷。小さな村ですが14世紀末から続く古城があり、以前はこの城のなかに本社機能を構えていました。ビジネスに便の良いミラノ市内にはショールームがありますが、いまは平地に新たなオフィスを構えながらも、やはりソロメオ村内に本拠があることには変わりありません。


ブルネロ・クチネリ氏が建設する「ユニバーサル図書館」という構想

創業者であるブルネロ・クチネリ氏はソロメオのあるペルージャ近郊の街、カステルリゴーネの出身です。生まれ故郷に愛着を持ち、都市部に出ず地元で事業を立ち上げるのは、地元愛の強いイタリア人ならでは。氏がソロメオ村にカシミヤニットのブランドを立ち上げたのは1978年のことでした。以後、事業は拡大し続けますが、この村の自然と人々を愛し、自社で働き近郊の地域に暮らす職人たちを大切にしてきたため、本拠は変わらずソロメオ村に置いています。


氏の経営哲学は「人間主義的資本主義」と呼ばれています。このメゾンが大切にしてきたのは従業員とその家族、取引を行う地域の職人であり、そして彼らが暮らすソロメオ村をはじめとするウンブリア州のエリアです。そのためブランド経営と同時に村への還元として、建築物の修復や劇場を含むアートフォーラムの建設、公園の造園など様々な事業を手掛けてきたのです。現在、本社として使われていた古城に店舗とともに職人学校を開校したのも、この地を美しい次世代に引き継いでいきたいという想いなのです。


ブルネロ・クチネリ氏が建設する「ユニバーサル図書館」という構想

先ごろローマで開かれたG20サミットで、ブルネロ・クチネリ氏は出席した各国首脳の前に立つ機会を得ました。そこで自身の経営哲学である「人間主義的資本主義」についてこう話しました。


―――森羅万象との調和をどう図るべきか、すべてのものは大地より生まれる、とクセノパネスが言うように、人類が享受する恵みと恩恵をどう返していくのか。そのことをかりそめの守り人たる首脳の皆様に、世界の美を守る皆様に、ともに考えていただきたい。


これまで地元に大きな還元を果たしてきた理由は、まさにこの人間尊重の経営哲学であり、パンデミックを通して新たに森羅万象と人間との調和についての提唱といってもいいでしょう。そしてこの席上、氏は世界へ向けた新たな貢献事業のひとつとして「ソロメオの普遍的図書館」建設を発表しました。


ブルネロ・クチネリ氏が建設する「ユニバーサル図書館」という構想

「普遍的な」という言葉に違和感を覚えるかもしれませんが、英語では「UNIVERSEL LIBRARY」と表記されることから、世界中の言語で著された文学、哲学、芸術、建築など多様なカテゴリーの蔵書を想定されていることがわかります。つまり国際総合図書館の建造を宣言したのです。


建築はソロメオ村内の広大な公園内にある18世紀に建設された貴族の館。これをリノベーションすることで、現在と過去が同居するサステナブルな建造物となることでしょう。図書館建築にあたり氏は、敬愛するハドリアヌス帝の言葉を借りて、こう述べています。


「書物は人生の指標であり、図書館の建設は、国家の穀倉を作るようなものである」。


図書館建築を通して、文化の殿堂を築き上げようという意志は、人間が人間として深淵な存在であることに寄与していきたいという想いの表れ。2024年の落成を目指し、プロジェクトは年内にもスタートします。


https://www.brunellocucinelli.com/ja/