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イタリアで訪れたい美術館・博物館15選!フィレンツェ、ローマ、バチカン他

数えきれないほどの美術の天才たちを輩出したイタリア。天才たちが作り出した傑作や、古代の遺物を所有する美術館や博物館が、イタリアには数多く存在します。


ローマには教皇たちのコレクションが一堂に会するバチカン美術館、フィレンツェにはルネサンスの傑作が並ぶウフィツィ美術館、北イタリアの芸術家たちの作品を擁するミラノのブレラ美術館、栄華を極めたヴェネツィアの往時を思わせるドゥカーレ宮殿……。


こうしたよく知られた美術館以外にも、世界史の教科書に登場するような作品を展示する美術館が各地に点在します。

今日は、こうした美術館とその代表的な収蔵作の数々をご紹介したいと思います。



ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

14世紀から16世紀にかけて、イタリアのフィレンツェを中心に興り、ヨーロッパ中に派生した文化的な動向、それがルネサンスです。


世界史の教科書にルネサンス時代が紹介されるとき、必ず登場するボッティチェリ《春(プリマヴェーラ)》《ヴィーナスの誕生》

この2点を所有しているのが、フィレンツェの美の殿堂といってもよいウフィツィ美術館です。


この2作品以外にも、ルネサンス黎明期に活躍したジョットシモーネ・マルティーニをはじめ、レオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロラファエロの名作、ティツィアーノドゥーラーの作品がずらりと並びます。


ウフィツィ美術館はルネサンス時代の権力者であり、芸術家たちのパトロンでもあったメディチ家が、代々に渡って収集した作品が大半を占めます。初代トスカーナ大公コジモ・ディ・メディチによって建てられた省庁(オフィス)を統合させた建物が現美術館となっているため、この名がつけられています。元オフィスにふさわしいシンプルな空間で美術鑑賞できるのも、この美術館ならでは。


ルネサンス時代とはなにかを知りたいとき、ウフィツィ美術館に並べられたその時代の傑作を眺めていれば、それが体感できるかもしれません。


アカデミア美術館(フィレンツェ)

フィレンツェの政治の中心であったシニョーリア広場。


その広場の一角には、若きミケランジェロの傑作《ダヴィデ》が鎮座しています。20代半ばからミケランジェロが制作した高さ5m強のダヴィデ像ですが、現在シニョーリア広場で見られるのはレプリカです。


ダヴィデ像の本物を所有しているのは、フィレンツェにあるアカデミア美術館です。

ミケランジェロのダヴィデ像はもちろん、アカデミア美術館の目玉ではありますが、それ以外にも1200~1400年代の絵画の名作、ミケランジェロをはじめとする彫刻家たちの作品を見ることができます。ボッティチェッリフィリッピーノ・リッピの絵画も必見です。


アカデミア美術館は、トスカーナ大公が創設した美術アカデミーからその名がつけられました。

1737年に開館、1873年からミケランジェロのダヴィデ像を所蔵し、現在もフィレンツェではウフィツィ美術館に次ぐ人気を誇ります。


バルジェロ美術館(フィレンツェ)

フィレンツェのシンボルでもあるドゥオモのクーポラ。

あのオレンジ色のクーポラを設計したのは、ルネサンス時代における建築の天才ブルネレスキです。


ブルネレスキや彼のライバルであったギベルティ、ミケランジェロに先駆けて美しい彫刻を残したドナテッロなどの彫刻作品がおさめられているのが、バルジェロ美術館です。


バルジェロ美術館は、13世紀半ばに建設された宮殿の建物に設置されています。かつてはフィレンツェの行政長官や警察署長の庁舎であった宮殿が美しく、その中に端然と並べられた彫刻作品を見ていれば、気分はすっかりルネサンス。

ウフィツィ美術館やアカデミア美術館ほど込み合うこともないバルジェッロ美術館、ルカ・デッラ・ロッビアミケランジェロの作品も目にすることができます。


彫刻が好きな人にはぜひおすすめしたい美術館です。


パラティーナ美術館(フィレンツェ)

フィレンツェの中心には、アルノ川が流れています。


ウフィッツィ美術館からヴェッキオ橋を渡ったアルノ川対岸にあるのが、トスカーナ大公となったメディチ家の私邸ピッティ宮殿です。

ボボリ庭園を擁する広大なこの宮殿には現在、いくつかの美術館が置かれています。そのひとつが、メディチ家の絵画コレクションを展示するパラティーナ美術館になります。

ルネサンス時代からバロック時代にかけての作品が中心で、トスカーナ大公がこよなく愛したラファエロ《大公の聖母》、円形が特徴の《小椅子の聖母》のほか、ボッティチェリフィリッポ・リッピルーベンスの絵画を鑑賞することができます。


天井までびっしりと並べられた作品群を、豪奢な雰囲気の中で楽しんでみてください。


花の街フィレンツェの圧倒的芸術性を誇る宮殿美術館「ピッティ宮殿」〜春の庭園と貴重な展示品
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Manami Palmieri / 2019.03.14


バチカン美術館(バチカン市国)

カトリック教会の総本山、バチカン内にある美術館は、16世紀の教皇ユリウス2世による古代彫刻コレクションが母体になっています。代々の教皇たちが集めた美術品や工芸品の展示のほか、いくつかのセクションに分かれた展示がなされています。


《ラオコーンの群像》《ベルベデーレのアポロン》があるピオ・クレメンティーノ館やキアラモンティ館、エジプトやエトルリア文明の遺物が並ぶセクション、レオナルド・ダ・ヴィンチラファエロの絵画があるピナコテカなど、すべてを見るためにはとても1日では足りません。

また美術館内には、ミケランジェロが《天地創造》を描いた天井、《最後の審判》を製作した祭壇を持つシスティーナ礼拝堂のほか、ラファエロが《アテネの学堂》などをフレスコ画として残したラファエロの間も見学コースに入っています。まさに見どころ満載です。


バチカン美術館の作品群の質と量はまさに、ローマ教皇の威勢を実感できる場所といえるかもしれません。


ミケランジェロの最高傑作に隠されたストーリー〜イタリア・ローマの小国バチカン市国・バチカン美術館を訪ねて
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マリーニ あゆみ / 2018.12.20


ローマ国立近代美術館(ローマ)

ローマの喧騒を離れて、静かな空間で美術を眺めたい人におすすめなのが、ローマ国立近代美術館です。


ローマ市民の憩いの場所、ボルゲーゼ公園からほど近く、日本文化会館も隣接するという立地が魅力的な同美術館は、1800年代から現代にいたるまでの絵画や彫刻2万点以上を所蔵しています。


ポロックピカソの美術展も開かれる知る人ぞ知る近代美術館、常設にはアントニオ・カノーヴァメダルド・ロッソの作品が並びます。ローマでは数少ない近代美術専門の同美術館の起源は、1883年に当時のイタリア王が近代美術館の創設に合意したところから始まりました。当初はテルミニ駅近くにあるエスポズィツィオーニ美術館に作品が所蔵されていました。幸いなことに、作品数が抱えきれないほど多くなったため、現在の近代美術館に移されたという経緯があります。


ローマ郊外の落ち着きの中で、現在進行形の近代美術を鑑賞するのも一興です。


「ローマ近代国立美術館」と「ボルゲーゼ公園」で癒される、ローマの休日の過ごし方
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Manami Palmieri / 2019.09.05


イタリア国立21世紀美術館(MAXXI)(ローマ)

ザハ・ハディッドによる設計で話題になったイタリア国立21世紀美術館。

ローマからリミニに向かう古代のフラミニア街道の始点近くにあり、ローマっ子たちに「マキシィ(MAXXI)」の名で愛されています。


2010年に開館したばかりの新しい美術館には、建築を中心とした美術品や資料が集められています。また、老若男女が楽しめる美術展やイベントが多く、特に美術に興味がないローマっ子も、こうした催しものを楽しみに気軽に足を向ける美術館になっています。


ハディッド設計の外観とマッチしたモダンな内部には、映画館や美術をテーマにした雑貨店もあり、散策の途中に立ち寄れるカジュアルさが魅力です。


カピトリーノ美術館(ローマ)

ローマには7つの丘がありますが、その中で最も高いのがカンピドリオの丘です。


ミケランジェロが設計した頂上付近の広場には現在、ローマ市役所、サンタ・マリア・アラチェリ教会、マルクス・アウレリウス帝の騎馬像、そしてカピトリーノ美術館があります。


カピトリーノ美術館の歴史は古く、1471年に当時の教皇シクトゥス4世が貴重なブロンズの彫刻をローマ市民に贈ったことに端を発しています。それ以降、特にローマという街と縁が深い美術館として、盛名を馳せてきました。

カピトリーノ美術館の所蔵品は、美術品としての価値だけではなく、歴史的な重みを感じる作品が多いのが特徴です。

たとえば、ローマという街の名前の起源をもつロムルスとレムスの双子が狼から乳をもらう銅像や、キリスト教を国教化したコンスタンティヌス大帝の巨大彫刻などは、その代表格です。


ミケランジェロが設計した階段を上ってたどり着くカピトリーノ美術館で、古代とルネサンスの融合を感じてみてください。


ペギー・グッゲンハイム・コレクション(ヴェネツィア)

ヴェネツィアの大運河沿いに建てられたヴェニエール家の宮殿に置かれているのが、ペギー・グッゲンハイム・コレクションです。


ペギー・グッゲンハイムは、美術に造詣の深かったソロモン・グッゲンハイムの姪で、自身もシュルレアリスムの画家マックス・エルンストの妻でした。

彼女がコレクションしたシュルレアリスムやキュビズムの作品を展示しているのが、ペギー・グッゲンハイム・コレクションとなります。

1980年に開館した同美術館には、日本でも人気のルネ・マグリット《光の帝国》や、ペギー・グッゲンハイムの夫であったエルンスト《花嫁の衣装》などの傑作を見ることができます。また、ペギー自身がアメリカ人であったためか、アメリカの抽象表現主義の祖ジャクソン・ポロックの作品群も目を引きます。


ヴェネツィア貴族の瀟洒な宮殿で近代美術の粋を堪能するという、唯一無二の経験がこの美術館では可能なのです。


国立考古学博物館(カリアリ)(サルデーニャ)

photo ©Unukorno

シチリア島に次ぐ2番目の大きさを誇るサルデーニャ島。その州都カリアリには、サルデーニャの歴史を伝える考古学博物館があります。


サルデーニャ島には、ヌラーゲと呼ばれる独自の巨石文化存在したほか、古代ローマ帝国時代の遺跡も少なくありません。こうした考古学関係の遺物4000点を見ることができる考古学博物館は、カリアリの歴史地区に位置しています。


美術館で古代を体感するだけではなく、歴史あるカリアリの街並みも楽しんでみてください。


ドゥカーレ宮殿(ヴェネツィア)

アドリア海の真珠と讃えられたヴェネツィア共和国、その政治の中心がサン・マルコ広場の一角にあるドゥカーレ宮殿です。


ヴェネツィア・ゴシック様式の最高峰ともいわれるドゥカーレ宮殿は、オリエントとの交易で栄えたこの国らしい繊細な美しさがあります。その宮殿内では、大評議会を飾るティントレットの名作《天国》ヒエロニムス・ボス《隠修士たち》、ティントレットの他の作品やヤコポ・バッサーノの作品を鑑賞できます。


ヴェネツィアの往時を伝えるドゥカーレ宮殿で、その豊かさから生み出されたヴェネツィア派と呼ばれる芸術品の数々、心に刻まれる経験となるでしょう。


アンブロジアーナ図書館&絵画館(ミラノ)

ミラノの街の守護聖人アンブロシウスの名を冠した図書館と絵画館は、17世紀に枢機卿であったフェデリーコ・ボッロメーオによって創設されました。文学や化学、宗教に関する貴重な書籍を100万本近く有する図書館には、ラファエロやピサネッロのスケッチも残されています。


図書館内にある絵画館(ピナコテカ)は小規模ながら、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた男性の肖像画、リラ紙幣のデザインにもなったカラヴァッジョの《果物籠》が収められています。


かつてレオナルド・ダ・ヴィンチが滞在したミラノ公国が、政治だけではなく文化的にも充実していた証として、アンブロジアーナ図書館と絵画館は燦然とした輝きを放っています。


ミラノに来たらここに行こう!おすすめ美術館3つ!
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ワダ シノブ / 2021.12.02


ブレラ美術館(ミラノ)

ローマにはバチカン美術館、フィレンツェにはウフィツィ美術館、それらに比肩できるミラノの美術館が、ブレラ美術館となります。


アンドレア・マンテーニャカラヴァッジョなど、北イタリア出身の芸術家や、ヴェネトやロンバルディア地方で活躍したアーティストの作品が数多く収蔵されています。

ブレラ美術館は、オーストリア・ハプスブルク家の支配下にあった1776年、その母体となるコレクションが公開されていました。正式に美術館となったのは19世紀に入ってからです。イタリア半島を侵略したナポレオンが各地から傑作を集めてブレラに収蔵したという伝説もあり、北イタリアのみならずイタリア各地にあった傑作を、ブレラ美術館で見ることができるのです。


ミラノでも閑静な地区に位置するブレラ美術館、鑑賞後のショッピングも楽しみのひとつです。


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ステファニア・ヴィティ / 2018.04.11


エジプト博物館(トリノ)

なぜ北イタリアのトリノにエジプト博物館が? と思われる方も多いと思います。実はトリノのエジプト博物館は、エジプトのカイロにある考古学博物館に次ぐ規模を誇り、まさに知る人ぞ知るエジプト学の中心となっているのです。


エジプト博物館は当初、エジプトの遺物のみならずローマなどの文明の発掘品も収集し、科学アカデミーとして発足した経緯があります。

やがて、大小さまざまなエジプトに関するコレクションを購入しはじめ、1832年の開館時にはすでにかなりの量のエジプトに関する発掘品が揃っていたといいます。

その後もコレクションの数は増え続け、スフィンクス像やパピルス、エジプト王や神々の彫刻など、見ごたえのある博物館として発展してきました。


イタリア人の他国の文明への敬意と憧憬が伺えるこのエジプト博物館、トリノの象徴のひとつにもなっています。


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ワダ シノブ / 2022.09.22


ナポリ国立考古学博物館(ナポリ)

南イタリアで最も高名な博物館といえば、ナポリにある国立考古学博物館です。

世界遺産にも登録されているポンペイから発掘された遺物の大半は、この博物館に収蔵されています。


その中でも目玉は、アレクサンダー大王とペルシア王の戦いを描いたモザイク画です。横幅が6m近くもあるこの大作、決死の表情のアレクサンダー大王の横顔は、世界史や美術史の表紙にもよく用いられています。

当時のポンペイの人々の生活を生き生きと伝えるフレスコ画や彫刻、日々の生活用具が展示されているほか、南イタリアで発掘された貴重な歴史的遺産を鑑賞できます。


また、ナポリ王国に嫁いだファルネーゼ家の女性がナポリへ持ち込んだファルネーゼ・コレクションも、圧倒的な質を誇ります。パウルス3世という傑出した教皇を輩出し、パルマの公爵でもあったファルネーゼ家は、美術コレクターとしても有名でした。

《ファルネーゼのヘラクレス》《ファルネーゼの雄牛》などなど、古代彫刻の名作をお見逃しなく。


まとめ

イタリア半島は、かつては広大なローマ帝国の中心であり、ルネサンスという文化の発信地でもありました。


そうした歴史の中で残された膨大な量の美術品は、イタリア各地の美術館や博物館で鑑賞することができます。美術館のなかには建物そのものが芸術品というケースも多く、独特の空気の中で見る美術品はまた、格別の美しさがあります。

美術に興味がない人でも気軽に足を向けることができる美術館もあり、アートに触れるよい機会になるかもしれません。


イタリアで鑑賞できるさまざまな美術によい刺激を得て、豊かな人生のための糧にしてみてください。


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