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ポスターの奥に広がるストーリー【イタリアのある人生】VOL.1 ハヤシコウ(デザイナー)| イタリア アート&デザイン

イタリアのことが大好きで、勢いあまってイタリアに関する仕事をしている方々による、リレーコラム連載「イタリアのある人生」。

記念すべき第1回にご登場くださったのは、デザイナーのハヤシコウさん(ミズコルビノデザイン)。イタリアの食に関するデザインを数多く手がけているので、レストランやワインショップでポスターなどを見かけたことがある人もきっと多いはず。
意外な、いや、むしろ「さすがイタリア好き!」ともいえる、ハヤシさんがイタリアにハマったきっかけとは!?

Q1. 現在の仕事について

イタリアの、特に飲食に関わるデザインを多く手掛けています。
レストランやワインショップの内装からロゴマーク、店内に飾るポスターなどの印刷物です。
ポスターのデザインはここ数年多くなっていて、ワインやフード関係のイベントポスターの依頼も多いです。

エミリア・ロマーニャ州モデナのワイナリー
エミリア・ロマーニャ州モデナのワイナリー「Cantina della Volta」(宣材ポスター)

他には、ここ数年何かと巷を賑やかせているキングコングの西野亮廣のデザイン周りを手掛けています。デザイン自体はイタリアに関係ないですが、2017年にボローニャ国際絵本市やミラノトリエンナーレに出品したこともあり、来年あたり彼の個展をイタリアでやろうと企画もしています。

一般社団法人おいしい生ハム普及協会
一般社団法人おいしい生ハム普及協会(ロゴマーク、印刷物全般)

この夏に、一般社団法人おいしい生ハム普及協会 を設立しました。日本への輸入が解禁されて20年以上経ちましたが、まだまだ日本人に認知されることの少ない生ハムを、古代ローマの頃に遡って、歴史を学びつつ、美味しい食べ方を提案する団体です。
先日も沖縄で第1回のワークショップを開催しました。「生ハムって、本当に生なんです」といった基本的なところから、「ローマ帝国を苦しめたカルタゴのハンニバルも食べていた」といったネタ話まで、オリジナルの教科書で講義を受けて頂いた後、生ハムのスライスを実習しつつ食べて頂く、といったワークショップでした。今後も、東京よりも地方でこうしたワークショップを続けて行こうと思っています。

Q2. イタリアとの出会い

(嫁にも話していませんが)大学生になりたての頃、片思いの女性がいて、その子がとてもイタリア好きで、その子と話をするきっかけが欲しくて、授業もそこそこに「来週、イタリア行って来る」ってイタリアに行ったのが始まりです。19歳の時から24年間通っているイタリアですが、きっかけはけっこう単純です。

Q3. イタリアの魅力とは?

たくさんの魅力がありますが、一番は「色が美しい」ところです。イタリアでは、「空の色」「建物の色」「食べ物の色」「ワインの色」を美しく感じます。

色を美しく見せるには、(まわりの)環境がとても大事です。例えば、お皿の上の料理や、グラスに注がれたワインの色…漆喰の微妙な陰影のなか、使い古された木製のテーブルの上、木枠の窓からのぞく青々とした空の色、それらがあることで、料理もワインの色も美しく感じます。

そのものの表面的な美しさではなく、環境が揃った上での、深くて強い美しさ。これが僕にとって、イタリアの一番の魅力です。

Q4. とくに好きなイタリアの街はどこですか?

マルケ州のウルビーノです。2001年から2年間、留学していた町です。今でもルネサンスの頃の街並みがしっかりと残った素敵な町。

ルネサンスの天才芸術家ラファエッロ・サンティが生まれ育った町としても有名で、500年以上経った現在も、ウルビーノの町ではラファエッロが話題にあがるほどルネサンスを身近に感じることができます。

ウルビーノは傭兵隊長出身の大公フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロが支配していましたが、文化人を多く集め、洗練された宮廷文化が栄えました。その優雅な造りが今も残っています。

昔は電車が通っていたのですが、いまはバスでしかたどり着けなくて、観光では行きにくい町ですが、機会があればぜひ訪れてほしい町です。

Q5. その他、イタリア関係の仕事について

「Cicci Fantastico」 大門のイタリアン/ロゴデザインの他に、店内装飾用のポスターを数種デザイン。

Cicci Fantasticoのロゴマーク、ポスター
「Cicci Fantastico」(ロゴマーク、ポスター)

「ラ・カンティネッタ多摩川」 多摩川のイタリア専門ワインショップ/内装、ロゴマークの他、ポスターをデザイン。

ラ・カンティネッタ多摩川の内装、ロゴマーク、ポスター
「ラ・カンティネッタ多摩川」(内装、ロゴマーク、ポスター)

「サルメリア69(ロッキュー)」 成城学園前にある、主にイタリア産の生ハムやサラミを扱うサルメリア(肉加工販売店)/ロゴマークの他、ほぼ毎月のイベントポスターも。

サルメリア69のロゴマーク、オリジナルポスター、イベントポ
「サルメリア69」(ロゴマーク、オリジナルポスター、イベントポスター)

◆「Quanno?」 イタリア・カンパーニャ州アヴェッリーノのワイナリー「Casale del ‘700」のワイン/ワインラベル

「Quanno?」ラベル
「Quanno?」ラベル

◆「アポーワイン」 弘前のイタリアン「ダ・サスィーノ」のオリジナルワイン/ワインラベル

「アポーワイン」ラベル
「アポーワイン」ラベル


ハヤシコウの写真

PROFILE

ハヤシコウ(株式会社ミズコルビノデザイン代表/一般社団法人おいしい生ハム普及協会理事)
多摩美術大学在学中よりイタリアに目覚め、大学卒業後、都内イタリアン勤務の後、イタリアのマルケ州ウルビーノISAに留学。帰国後、都内ワインバー勤務を経て、2005年ミズコルビノ・デザイン LLP. を設立。2014年に株式会社ミズコルビノデザインに。イタリアをはじめヨーロッパのハイブランド広告を手掛ける。東京のイタリアンを中心とした飲食店のロゴ・マーク・内装のデザインや、レストランのメニューやワインリストの監修、及びイタリアに関連した番組や記事の監修も。近年では、絵本『えんとつ町プペル』(幻冬舎)のロゴをはじめ、キングコング西野亮廣が関わる『レターポット』『しるし書店』などのデザインも担当。

●Q&Aのテキスト&写真/ハヤシコウ

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